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で、今はこうしてバイクに乗り、風を切って走っている。
で、今はこうしてバイクに乗り、風を切って走っている。
「よう、なにしてんねん。ちょっとあそぼうや。」晃一だ。もうだれも知り合いなんていないと思いはじめているころにあらわれる。
「ああ、なんとなくユウツなキブンでな。そうやんな、ひさしぶりにそとに出るか。ちょっと上がって待っててくれ、シャワーだけ浴びさして。」ふたりしてバイクを走らせる。風だけが味方のような気分になる。舗道を女の子が歩いている。ああ世の中にはまだかわいい女の子が残ってたんだ。
「オイ」晃一に声をかける。
「きこえない!」
「ちょっとト・マ・レ!」
「なんやねん。」
「女の子に声かけようや。」
「そうか。別にええど。少しうざったくない。」
「やる気ないんかよ。」
「オーケー。そしたらお前からヤレよ。」
「よし。」二人して4人の女の子にシカトされる。
「バイクの時代は終わったのかね。」
「ちょっと怖がられてないか。おれたち。」
「オンナってのはすぐ怖がるからな。」しばらく風を切る。天気はよくないが風だけが気持ちいい。サテンに入る。ウェイトレスがあまりに不細工で、コーラとアイスコーヒーをかわりばんこに飲みながら二人でそのことをダラダラ喋る。晃一はパフェも注文する。
彼は走っていく。暗闇と疾風の国道を、無け無しの金と小さな愛だけをポケットにつめこんで。それはどこにもつながっていない下水道のように思えた。少なくとも彼にとってはそうだった。彼のじいさんが言っていた。「道は必ずどこかにつながっている。」しばらくは彼もそれを信じていたし、そのおかげで道に迷ったときもパニックになることがなかった。なのに、いつしか迷う道さえ失くなってしまった。じじいの時代には残っていた開拓するだけの土地も精神も、今や消え果ようとしていた。残っているのは残飯みたいな娯楽と退屈だけ。かと言って、腐ってしまうほど衰えてはいない。それが問題でもあった。彼らは何かを求めていたのに、そこには何もなかった。すべては大きな巨人が平らげた後だったのだ。大砂煙が舞い上がり、ようやく収まったと思ったら別世界だった。そこでオーバー・ザ・レインボーが鳴り響き、愛犬のトトを探して黄金色のレンガの道を進み、ライオンやカカシに遭えたらよかったのかもしれない。魔女をやっつけて、平和を手にすることだって冒険を楽しむことだってできたに違いない。でもそんなのは御伽噺か夢でしかない。今や事態はもっと複雑で込み入っているのだ。そのときの彼は、もう何も信用する気にはなれなかった。
もう何も信用する気にはなれなかった。




