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「わるかったです。」おじさんが弁当を食べながら言う。
「わるかったです。」おじさんが弁当を食べながら言う。
「ってそう平謝りよ。」俺もおじさんたちに囲まれて、狭い豚小屋みたいな畳部屋で残りの弁当を食べる。
「それで部長、どんな感じやったんよ。」年配の平山さんが聞く。
「そりゃもう涙ためとったで。わしもびっくりしたで。」一番若い清原さんが答える。
「そうか、普段あんな態度やのに、いざとなったらあかんのう。」眼鏡の交野さん。
「ほんまやで、まるでヒヨコみたいに震えとったからな。」みんなでテーブルを囲み、俺は黙って玉子焼きを食べる。
「そりゃよ、虫が入っとったんはわるいけどよ、そない卑屈にならんでもな。」清原さん。
「たかが10食やろ、あそこの会社。やめてもらっても別にええんちゃうの。」交野さん。
「そうもいかんのよ。あそこは先代からの取引でうるさ型やから、ほかの会社にも影響あるみたいやからな。」平山さん。
「それにしても、部長情けないな。」そう言って清原さんは立ち上がる。
「よう兄ちゃん、これ、かたしといてな。」交野さんも弁当を閉じる。
「あ、はい。」
「よっしゃー、行くで。行きまっせ。」やぶれた靴下を直しながら平山さん言う。
「兄ちゃん、大丈夫か。」交野さんがもう一度声をかけてくれる。
「あ、はい大丈夫です。」
「ほんま、大丈夫なんか。ならええけど。」
カラスが弁当箱をつついている。大きなカラスではない。こじんまりとした行儀のいいカラスだ。頭がよくて、弁当のフタを自分で外して、中身をつっつくのだ。それからまた口ばしを使って、ちゃんとフタを閉めていく。礼儀正しいカラス。世の中にはカラスみたいな一見薄汚い野郎だっているし、見た目は白いハトを気取ってるが本当は腹黒い連中もいる。頭を下げるカラスもいれば、残飯を探すハトだっている。そして彼のようなヒヨッコは、さらに小さな卵たちに飯を食わせる。それが当然の流れだ。社会のシステム。卵が先か、親鳥が先か。はたまたヒヨコが生き延びるために。
卵が先か、親鳥が先か。




