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「やめてや、兄ちゃん。」
「兄ちゃん。」ぼくは水辺に立つ。
「はやくこい」兄ちゃんがぼくを呼ぶ。
「なみだ。なみだ。」兄ちゃんが笑う。
「涙って聞こえるで。」水をバシャバシャとぼくにかける。
「やめてや、兄ちゃん。」向こうではパパとママがしゃべってる。
「わーまたなみだ。」なみだ、なみだ。
「ほら、みゆ、こっちおいで。」ぼくはちっちゃな妹を抱っこする。
「ほら、ほら、ほら。」また海水をかける兄ちゃん。
「わー。」ぼくはフラットになって、みゆを落としちゃう。
「おい、すすむ。みゆ。」兄ちゃんが言うが早いか、波がさらう。みゆが泣き出す。
「あんたら、ちゃんとみゆ見てる?」見てるよ!叫ぶ兄ちゃん。
「ほら、ママが怒りだした。な、みゆ大丈夫。」命令する兄ちゃんが、妹を抱っこする。
「あ、泣き止んだ。な、すすむ、こうするねん。」兄ちゃんは波をゆらゆらとフラつく。
「こう?」ぼくもマネっこをして、ふらふらする。
「フラフラ星人だー。」兄ちゃんが言う。
「ふらふら星人!」ぼくはまたマネっこする。
「ふらふら。」みゆもマネをする。
彼らはいつだって兄ちゃんの真似をしてきた。いつしか、でも兄ちゃんを越えて進むことになった。泣いていたミユは大人になり、子供を生んだ。なのに、彼はいつまでも子供のまま。ピーターパン?ただ彼にはステキなティンカーベルも強敵フック船長もいなかった。ピータンでもつまんでビールを飲んで寝るような、そんな腐ったオヤジになっていくだけの話し。それを認めないことには、お話しにもならない。そんなつまらないお話し。
それを認めないことには、お話しにもならない。




