表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憂鬱やんボサノヴァ  作者: ふしみ士郎
14/53

14

「若菜は本屋やっけ。」

「若菜は本屋やっけ。」京都に行って、久しぶりにノブや若菜に会ってきた。木屋町のモグラノ館という名前の喫茶店。

「そうそう。」ノブはほどよく笑って、コーヒーを飲む。

「中野さんは。」若菜が俺に聞いてくる。

「給食でしたっけ。」こいつらは学生時代のツレだった。

「そうそう。」ちょっと前まで休職中でしたけど。

「相変わらず、冴えないでんな中野さん。」苦笑するノブオ。

「で、若旦那、実家の商売どうなんでっか?」俺もコーヒーを飲みながらノブに聞く。奴は実家の仕事を継ごうと修行中なのだ。京都の老舗本屋でございます。

「いやぁ、大変でございますな。大手がのさばって。」京都人らしく、やわらかく答える。そんな奴のことは好きだ。

「そのうち若菜にも手伝ってもらったらええやんか。」俺がそう言うと若菜は照れくさいのか気まずいのか、トイレに立った。

「なんやねん、お前らどうやねん。」俺も人のこととなると気軽なもんだった。

「どうもこうもな。」余計なお世話やろうけど、お前らもう長いやろ。

「そうやけど。たしかススムが中退した頃からやから。」余計なお世話や。

「せっかく大学行っても中退って。もったいない話しでございますな。」やかましい。いやらしい京都人め。

「あん時は色々あったんよ。」ひとしきり昔話しに花が咲く。

「どうしたん。」若菜が帰ってきた。

「いやススムが中退したときの話し。」

「何回も中退って言ってんちゃうぞ、色々バラすぞバラモン・ノブオ。」

「なんなん、なんなん。バラすって何なん。」若菜が食いついてくる。

「余計なこと言うなよ。もうやめてくださいよ中野製紙工場さん。」飄々とした態度。これぞ若大将。

「まぁええわ。じゃあお前らゴールデンウィーク、気が向いたら来ぃや。」

「おお、また連絡するしススム。携帯つながるようにしといてよ。」

「わるいわるい。もうすぐ給料入るから。」そう言って俺は奴らと別れて、河原町で晃一たちと合流した。



今はなき四条河原町の角、阪急百貨店の世界地図前で彼らは待ち合わせた。学生時代、何度ここで待ち合わせをしただろう。アメリカに行く前の京都時代、彼らにはマジ青春、コノ町、あの乳、悪そうな奴はだいたい友達?そんなものがあったとしたらその時だったかもしれない。さわやかな風と新鮮な出来事にあふれていた。ありきたりな花見や夏の海水浴、秋には古都の紅葉めぐり、そしてクリスマスパーティー。誰かの部屋での鍋。ばか者たちの夢の跡。今や、世界地図は消えうせた。そして金色に輝く百貨店。または翼をもがれた天使のフリした彼らの未来。泥臭い打点使のような過去。はたしてどうやったら取り戻すことができるのだろう。




泥臭い打点使のような過去。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ