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「若菜は本屋やっけ。」
「若菜は本屋やっけ。」京都に行って、久しぶりにノブや若菜に会ってきた。木屋町のモグラノ館という名前の喫茶店。
「そうそう。」ノブはほどよく笑って、コーヒーを飲む。
「中野さんは。」若菜が俺に聞いてくる。
「給食でしたっけ。」こいつらは学生時代のツレだった。
「そうそう。」ちょっと前まで休職中でしたけど。
「相変わらず、冴えないでんな中野さん。」苦笑するノブオ。
「で、若旦那、実家の商売どうなんでっか?」俺もコーヒーを飲みながらノブに聞く。奴は実家の仕事を継ごうと修行中なのだ。京都の老舗本屋でございます。
「いやぁ、大変でございますな。大手がのさばって。」京都人らしく、やわらかく答える。そんな奴のことは好きだ。
「そのうち若菜にも手伝ってもらったらええやんか。」俺がそう言うと若菜は照れくさいのか気まずいのか、トイレに立った。
「なんやねん、お前らどうやねん。」俺も人のこととなると気軽なもんだった。
「どうもこうもな。」余計なお世話やろうけど、お前らもう長いやろ。
「そうやけど。たしかススムが中退した頃からやから。」余計なお世話や。
「せっかく大学行っても中退って。もったいない話しでございますな。」やかましい。いやらしい京都人め。
「あん時は色々あったんよ。」ひとしきり昔話しに花が咲く。
「どうしたん。」若菜が帰ってきた。
「いやススムが中退したときの話し。」
「何回も中退って言ってんちゃうぞ、色々バラすぞバラモン・ノブオ。」
「なんなん、なんなん。バラすって何なん。」若菜が食いついてくる。
「余計なこと言うなよ。もうやめてくださいよ中野製紙工場さん。」飄々とした態度。これぞ若大将。
「まぁええわ。じゃあお前らゴールデンウィーク、気が向いたら来ぃや。」
「おお、また連絡するしススム。携帯つながるようにしといてよ。」
「わるいわるい。もうすぐ給料入るから。」そう言って俺は奴らと別れて、河原町で晃一たちと合流した。
今はなき四条河原町の角、阪急百貨店の世界地図前で彼らは待ち合わせた。学生時代、何度ここで待ち合わせをしただろう。アメリカに行く前の京都時代、彼らにはマジ青春、コノ町、あの乳、悪そうな奴はだいたい友達?そんなものがあったとしたらその時だったかもしれない。さわやかな風と新鮮な出来事にあふれていた。ありきたりな花見や夏の海水浴、秋には古都の紅葉めぐり、そしてクリスマスパーティー。誰かの部屋での鍋。ばか者たちの夢の跡。今や、世界地図は消えうせた。そして金色に輝く百貨店。または翼をもがれた天使のフリした彼らの未来。泥臭い打点使のような過去。はたしてどうやったら取り戻すことができるのだろう。
泥臭い打点使のような過去。




