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「ハロー、マイネームイズ、YOKO」かわいこぶってんちゃうぞ。
「ハロー、マイネームイズ、YOKO」かわいこぶってんちゃうぞ。
「いやいや、ゾーイは日本語ペラペラやから。」俺が言うと、ヨウコは片目をつむってみせる。何のマネやねん。
「ペラペラノニンゲン、デスカ、ススムくん。」ゾーイのジョークだ。
「えと、こっちがゾーイで、こっちがヨウコね。オレはススム。」俺はもう一人の女の子を見る。
「メグちゃん。魔女っ子。」ヨウコが言う。なんかしらんけど。かわいい子だ。
「トリアエズ、ヴァモス!」なぜかスペイン語で掛け声をかけるゾーイのテンション。それが梅田の夜にこだまして、はね返って俺の中のアメリカにぶつかる。
「やめてよ、まだ1年と少ししか経っていないし。」飲みながらヨウコが言う。
「いやオレのこと忘れたかと思ったよ。」俺はビールに口をつける。
「あれから、あんたが連絡くれないからさ。」真剣な表情のヨウコ。
「モトカノ?」ゾーイが聞く。
「ああ、まったくちがうけど。色々あって。」たしかにアメリカのビールより味が落ちる。気候のせいか、自分のせいか。
「そうそう、まったく、ちがう。」ヨウコはタバコを吸う。
「チャイまっせ。」ゾーイがおどけて言う。
「そっか、じゃあススムさんは彼女いないの?」それまで静かだったメグが喋る。
「ちょっとメグ、積極的だね。」とヨウコ。
「ススムさん、キカレテマスヨ。」わかってますよ、ゾーイさん。もちろん、いない。今は、彼女は、いない。
「そっか。」メグは何気に短いスカートをはいている。俺はそれに気をとられすぎて、後でゾーイやヨウコに笑われた。
「少しは節操を持ちなさい。」カエルのおっかさんにそう言われた。それで彼はうなづいて、手足がもげた状態で泳いでいく。まるで原初の製紙工場における静止した状態の精子が、制止を制して生死をさまよう、みたいな戯言。「生きてることの意味を考えるより、よりよく生きていきなさい。」おっかさんはそうも言った。でも彼はそれを理解するまでに半生を費やした。それからあとの時間は反省に費やした。オタマジャクシの一生だ。
オタマジャクシの一生だ。




