SKユニバース
からっ風が舞い踊り、空き缶がカンコロコンと転がっていく。灰色の野良犬が尾っぽをたたんで下を向いて歩いていく。彼はそんな町に住んでいて、ナホはそんな彼のことを愛していた。愛の泉のように二人で生活を営み、小汚い部屋だったが幸せの礎を築いた。風がたなびき、楽園から追放された武者たちが立ち往生している。アダムもイブも蛇のせいで罪悪感をうえつけられた。彼らははたしてそこから逃げ出し、再び楽園にたどり着くことができるんだろうか。
しかしなにごとも最初からうまくいっていたわけではないんだ。聞いてほしい。俺がまだナホと会う前に、クソッタレの晃一とバイクに乗っていたときのことを。いや、その前から話しを始めよう。もう何もすることがなかったんだ。ヒマとクマンゼミを飼いならすことだけが俺の仕事のようだった。しかもだぜ、親の家にもどってきてソファで寝てたときに気づいたんだ。これじゃ駄目だな、と。で、俺は女に電話しようとした。知っている限りの女子全員にだ。でもそういうときに限って電話番号を全部消去してしまってるんだな。そう酒に酔っていたんだ。俺が馬鹿だった。
晃一も「おめーほんとアホやなぁ。」とかぬかしやがるし。俺だってそんなこたーわかってるんだ。でもそのときはある女に腹が立っていたので、そいつの電話番号を消そうとしたら間違って全て消去したんだ。その瞬間氷の海を渡ったような気がして、後悔のセメントに押し固められそうになった。でも先に立たないのが、後悔と俺のアソコってわけだ。いや紳士織女のみなさん、けして勘違いしてはいけません。俺がこれだけ饒舌なのにも訳があるんだ。それはこの静かなる郊外の住宅がそうさせるのである。俺が育ち、俺の両親が立てたこの立派で小ざかしい家のおかげで、今まで25年間俺は死ぬような思いをしてきた。それで気が狂いそうになって、家を飛び出した。なのにたった1年と少し、夢を失い住みかを失い仕事を失い。俺に残されたのは、TWのバイクだけだった。いや、それは言い過ぎかもしれない、俺には妹も友人もそして両親だって健在なんだから。とにかく!それで、俺は電話番号を唯一知っていた女に電話しようとした。携帯が止められていたので、家の固定電話ってやつを手にとる。しかしそこで俺は心の扉を叩くのをやめてしまった。電話番号は知ってるというのに。その扉から向こうが、つながっているような気がしてならなかったからだ。「それ」に。




