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或る記者の備忘録  作者: 吹っ飛んだ布団
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1 「一つ目」 前編

この春、小学生のころからの夢であった記者として働き始めた僕は、当時夢に描いていたようなきらびやかな雑誌ではなく、オカルト雑誌の部署での勤務を命じられ、ブルーな気持ちで働いていた。

これは僕の、初仕事となったインタビューをした時の話である。


僕は初めての一人での仕事に、緊張するとともに、しかし昔からの夢であったインタビューという仕事に胸を躍らせていた。

待ち合わせに指定されたのは、とある老人ホームだった。

そこで用件を伝えると僕は個室に通された。

長い廊下を通り、ドアを開けるとそこには、真っ黒なサングラスをした六十代ぐらいの老人が車いすに座り、たたずんでいた。

その男はおびえた様子で息を荒げていたが、僕が自己紹介をすると、安心したのか昔のことを語り始めた。

以下はその男が話した内容である。


昼過ぎ、高速道路の建築のために山を整地していた私たちは、直径が子供の身長以上もある大木を切り倒し、それに腰かけて一息入れているところだった。

これだけの大木となると、倒すだけで危険が伴うのでかなり気を張らなければいけなくなり、全員が一仕事終えた後の満身創痍の様相で座り込んでいた。

しばらくして、切り倒したままになっていた木の上の部分を片付けようという話になった。

その時である。

仕事仲間の一人が、「おいちょっと待て!」何か木の下にあるぞ」

そんなことを言い出した。

そこにいた全員でよくよく見てみると、それは社であった。

そこには、倒れた木に寄り添うように、朽ちかけていた小さな社がたっていた。

そしてその扉は開いており、中に小さな瓶が見えた。

その中は液体で満たされており、中にビー玉のようなものが浮かんでいた。

それは、目だった。

大きいわけでもなく、たくさんあるわけでもない。

ただ、古い瓶の中からこちらを見つめていた。

その瓶の口には、コルクの栓とともに【眼、、、寄、、症】

と書かれたラベルが貼ってあり、やけに気泡の多い瓶と風化し読めなくなったラベルの文字がより一層薄気味悪さを醸し出していた。

その場の全員がそれに触れたくはなかったが、若い新入りが一人、それに手を出した。

「なんすかこれぇ、鹿かなんかのですかねぇ」そう言いながらその瓶を開け、中を覗き込んだ。

その瓶の不気味さに、その若者をとめようと声を出すことさえもはばかられた。

その時である。瓶の中の眼の中から、何か触手のようなものが飛び出したように見えた。

そしてそれを覗き込んでいた若者の目玉に向けて、一直線に飛び込んだ。

「ぬぁぁああぁぁああんあっぁああぁぁ」

断末魔とともにその若者がのたうち回る。

三秒ほどたって、若者の動きが止まった。

「お、おい。大丈夫か。」当時一緒に働いていた親方が恐る恐る声をかける。

若者は、目から血を流し白目をむいて倒れていた。

「おい!」親方が肩を揺らし、若者の顔を覗き込む。

するとまた、先ほどと同じような、しかし一回り大きくなったような触手が親方に飛びついた。

そこまで見て「これはまずい。」そう思った私は、もはや血まみれとなり、ビチビチともがいている親方に背を向け 山の下の方へ駆け出した。

しかし、後ろから何かが這いずるような音が聞こえてきた。

言葉では表しがたい恐怖に襲われた私は、そのあまりの恐ろしさに後ろを振り返った。

と、、、その時である。私の眼に何かが飛び込んできた。

視界が真っ赤になり、両目が急激に熱くなる。

うああああああああああああああああああああああああああああああああ

そんな声が山にこだまし、鳥たちが驚き一斉に飛び立った。

しかし、私の断末魔を聞くものは誰もいなかった。










、、、数日後、両眼球を自らくりぬき、うめきながら徘徊していた私は保護され、ここへ入れられた。


、、、というような話だった。

内容もさることながら、その話し方から伝わる恐怖とその男の震え、尋常ではない冷や汗の量に僕は今すぐにでもここから逃げ去りたい気持ちでいっぱいだった。

時計の秒針の音が、今にも僕を追い出そうとしているように感じた。

半分泣き顔で逃げ去るように施設から出た僕は、来た道と同じ高速道路の上から、男がいた施設がある、若い杉に覆われた山を見つめ、震えていた。

だがしかし、好奇心に打ち勝つ事ができず、僕はこの後この件について詳しく調べていくことになるのである。

~後編へ続く~

後編はもう少し深堀して山の中での出来事を詳しく描いていこうと思うので、次回もチェックよろしくお願いします。

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