フルコースはいかがですか
今を足掻くあなたへ
気づけば真白なクロスが敷かれ
ナイフにフォーク
ナフキンは膝へ
次々と運ばれるディナー
紙屑のアミューズ
塩と砂を固めたテリーヌに
泥を煮詰めたポタージュ
溢れそうな目と
ざらついた口を押さえ
いっそのこと
全部洗い流してしまおうか
いや、そうしたら
大切なものまで零してしまう
だからって
食事とも言えないフルコース
続けるには些か苦痛だ
カートが引かれた
次の品をどうぞ
また前菜か
もう順番がちぐはぐだ
声がする。
“起死回生の一手を”
傷つけることは叶わない
深く呼吸し
胃の奥から引き摺り出せ
近づく
“起死回生の一手を”
ありもしない希望に縋るな
信じるのは自分自身のみ
内から響く
“起死回生の一手を”
速まる鼓動が血を焦がし
加速した思考はやがて脳を焼くだろう
選択の時は来た
さぁ、仕切り直しだ
血潮に塗れた手で
最後の悪足掻きをしよう
ただし、あくまでスマートに
ポーカーフェイスは得意だったじゃないか
優雅に乾杯しよう
音楽はまだだろうか
こちらの準備はもうできてる
食いしばった歯が軋んでも
エトセトラは決して見せない
ブリュレの表面を削るみたいな
無作法なことはもうしないよ
流れ始めたラヴェル
BGMにしちゃ戯れが過ぎる
まぁいいさ
軽快なグラスの音
カートが引かれた
茶番のはじまりだ
さあ、次の品を
上達のため出来る限り1日1本書きたいと思っております。
ジャンルはバラバラかもしれませんが、よかったらまた覗きに来て貰えると嬉しいです。
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ご覧頂きありがとうございました。