表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/22

12話 観光とギルド

「到着!」


 途中、賊と戦った隆介達は、休憩しながらもレストリア王国の門までたどり着いた。

 おー!これが異世界の町門ってやつか!にしても本当に大きい門だな〜。


「次の方〜」


 列に並び、入る順番を数分待っていた隆介達はやっと自分たちの番がやってきた。並んでいる間、話しかけてはこなかったが冒険者らしき人や、行商人の人達がじろじろと見てきていた。


「はい」

「ではここにある水晶に手をかざしてもらっても宜しいですか?」

「分かりました」

「ん」


 2人は目の前に置いてある水晶に手をかざすと青く光、手を離すと何事もなかったかのように光が消えていく。


「大丈夫ですね。では次に証明書を見せてもらってもよろしいですか?」

「あ…」


 証明書なんてないぞ!どうしようかな…そうだ!ここはうまく誤魔化してなんとかするか!


「どうかなされましたか?」

「あ、いえ証明書を途中何処かに落としたみたいでして〜」

「そうでしたか、でしたら再発行できますの2人合わせて大銀貨4枚を用意してもらえれば今すぐに発行しますよ?」


 え、何それ?てかそもそもこの世界のお金持ってないよ。大銀貨っていくらなの?


「えっと〜『はい』おっ?」

「ちょうどですね。では発行しますので少々お待ち下さい。次の方は別の兵士の所に行ってください」


 そう言うと門番の兵士は中に入っていき、隆介達は次の人達の邪魔にならないように少し移動をする。


「ミズナ、いつの間に持ってたの?」

「あのトカゲ倒した後の宝箱から出てきた」

「そ、そっか…因みにどれくらい?」

「ん、黒金貨5枚と白金貨5枚と…全部5枚」


 うん、めんどくさくなったのね。でもこの世界ではどれくらいの価値があるのか分からんな。黒銀貨とかいくらなんだろ?


「ミズナはこの世界のお金について分かる?」

「ん…分かる。情報が今流れてきた。この黒金貨が一番高いお金。白金貨10枚分。白金貨は大金貨10枚。大金貨は小金貨10枚。小金貨は大銀貨10枚。大銀貨は小銀貨10枚。小銀貨は銅貨10枚」


 情報が今流れてきった神様だな。もう驚かないぞ。


「一番高い黒金貨は因みに?」」

「マスターの国で言うと黒金貨1枚1千万」


 まじかよ!?大金じゃないか!え、て事は今5千5百万円ちょとあるって事だよな!凄いな…。なら大銀貨1枚1000円なら、4枚払ったから4千円か。高いのか安いのか分からんが。

 そんな事を考えていると、中からさっきの兵士が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが証明書です。もうご存知だとは思いますが再度説明させていただきますね。こちらはこの国、レストリア王国の証明書です。ですのでこの国でしか使えません。もし、他の国に行かれるようでしたらその国の証明書を発行しなければなりません。ですがそれがもし面倒だと思うのでしたらギルドカードを作っていただければ他の国でも使えるようになります。粉砕等をした方は再発行可能ですが1人大銀貨2枚必要になりますのでご注意を。ではようこそレストリア王国へ」


 銀色の兜を被っていて表情は分からないが、優しい声で迎えてくれていることだけは分かった。そしてここの国の兵士もそうだが背中には杖を装備しており、剣を装備してないと言うことだ。


「すげ〜!まるでファンタジーの世界だ!…ここファンタジーの世界だったな。よし!ついに異世界の町をじっくり見ることができる!」


 隆介は目の前に広がる光景を見て、本当にここは異世界なんだと改めて実感した。

 町並みはドイツやヨーロッパの建物を混ぜたような、歴史を感じさせる町並み。賑わう広い町の脇には屋台をしている人や、魔法を使ったパフォーマンスをしている人が目に入る。そして…。


「耳!頭にケモ耳付いてる!あれは獣人だよな!おっ?あの人は耳が尖ってる!エルフか!他にも色々な人がいるな〜」

「ちょいちょいそこの兄ちゃんと彼女さん!取り立て新鮮!そして焼きたてのコッコ肉食べてかないか!」

「ん?」


 感動しながら町を見て歩いていると、急に男の人に声をかけられ、左を向くと屋台のおじさんが手に串肉を持って、笑顔で串を差し出していた。

 お〜!美味しそうな串肉だな!とてもいい匂いがする!


「では4本下さい!」

「あいよ!4本で小銀貨4枚!」

「はい」

「まいど!それにしても可愛らしい彼女さんがいて羨ましいな〜!ほらよ!これはサービスだ。俺の妻も可愛いが…お〜寒気が」

「あはは…。い、いいんですか?」


 隆介が串を4本頼み、お金はミズナが何処からか取りだしたお金を支払う。更にお金を支払った後、サービスで焼き立てたの串を2本貰った。


「おう!俺の妻みたいに兄ちゃんも尻に敷かれないようにな!頑張れよ!」

「私を呼んだかい?」

「えっ?呼んでない呼んでない!」

「そ、何かあったら呼ぶのよ?いい?」

「は、はい!分かりました!」


 屋台のおじさんが隆介に喋っていると、裏からそのおじさんの奥さんが出てきて、私を呼んだ?とじっとおじさんの事を見て喋ったが、呼んでないと言うとそのまま裏に戻っていった。その時のおじさんは何処か怯えているように見えたが奥さんが戻っていくと、安堵した表情になる。


「た、大変なんですね…。おじさんも頑張ってください。では私はこれにて。サービスありがとうございます」

「おう!兄ちゃんも頑張れよ!」



 屋台のおじさんと別れた後は、2人でぶらぶらと町を見ているが、何故かさっきからこちらを見てくる人が沢山いた。が、2人は串肉を食べており、気付いていなかった。

 あの屋台のおじさんいい人だったな〜。にしてもこの肉何の肉か分からないけどめちゃくちゃ美味い!この食欲がそそる香ばしい香り!噛めば噛むほど旨味が出てきてクセもなく、柔らかいお肉に脂っこくなくてくどくない。うん、また買いに行こう。


「ようようお兄さん。ちょ〜とこっちに来てくれないか?」

「なんですか?」

「いいからいいから〜」


 ミズナと一緒に歩きながら串肉を食べていると、後ろから声をかけられ、振り向くとそこには大剣やオノを持った大柄な男4人がニヤニヤとしながら近くにある少し暗い道に誘導させる。


「んで、俺達になにかようか?それともなんだ?この串肉を食べたいのか?なら一個やるぞ?」

「そんなもんはどうでもいいんだよ!俺達はそこの女とお前の着ているコートとそのアイテムバックが欲しいんだよ!痛い目に会いたくなければ大人しく俺達に寄越せ!」

「はぁ〜…」


 やっぱり目立つか。このコートの事までは知らないみたいだけど流石に誰がどう見ても普通のローブじゃないよな。それにミズナは更に目立つ。格好もそうだが…一番は誰がどう見てもミズナは美少女だからね!そりゃー男も寄ってくるわ。お父さんは許しません!なんて、この状況は面倒だな。


「なんだてめー?舐めてるのか?」

「いや、ただ本当に悲しいよ君達は。強そうで頼りになりそうな君達の性格がこれじゃ〜モテないよ?ほらほらこんな事やめてちゃんとした道を進も?てな訳で、んじゃ俺達はこの辺で」

「て、てめー!言わせておけば!殺してやる!」


 串肉を食べながら後ろを振り向き、ミズナと帰ろうとする2人を見ながら男達は、顔を真っ赤にして、ビギビキと血管を浮かばせながら背中に背負っていた大剣で隆介目掛けて振り下ろす…が。


「マスターに危害を加えるのは許さない」

「なぁ!?」


 なんと男が振り下ろした大剣をミズナが右手で掴み、余裕?な表情をしながら受け止めていた。無表情だから分からないが。大剣を右手で受け止めている間、左手に持っている串肉をハムハムと呑気に食べている。

 な、なんだこの女!?右手だけで俺の大剣を受け止めたって言うのか!?そんな事ありえん!そう!絶対にありえん!しかもこの女呑気に食い物食いやがって!くそう!こんな化物に手を出してたのか!いや、だがこの女が強くてもそこの男は弱いはずだ。


「おいお前達!今のうちにそこの男を殺せ!」

「あいよ!」「こっちは3人だ!俺達に恥を欠かせた事を後悔させてやる!」「殺す!」


 ミズナともう1人の男を避け、3人一気に隆介目掛けてオノと大剣を振り下ろす。


「想定済みだ。[対象は俺の後ろにいる男3人]」

「「「!?」」」


 すると隆介を襲った男3人は白目を向き、口から泡を吹きながらバタリと倒れていった。いきなり3人が泡を吹きながら倒れた事に、リーダー?の男は力が緩む。少し手加減して〈黒龍神王の威圧_〉を発動させたけど手加減でこれって事は本気でやったら相手死ぬな…。

 男の力が緩んだ瞬間ミズナは男の持っている大剣と腕を一緒に凍られて、動けないように固定をした。


「な、何をした!ぐあっー!腕が…腕が!お、俺達が悪かった!だ、だから助けてくれ!」

「やれやれ、ミズナ解除してやってくれ」

「ん」


 泣き叫び、男のズボンがどんどん染みになっていく姿を見た隆介はやれやれと呆れて、ミズナに解除するように言った。

 最初からそんな事しなければ良かったのにな。見る限りこの人達冒険者とかだろ。冒険者って俺の勝手なイメージだけど国の為に動く人?みたいな感じだと思ってたけど違うのかな?それか一攫千金を狙って〜とそれはトレジャーハンターだな。そこら辺の知識は皆無なので分かりません。ま、取り敢えずこの人達はこの国の為?に働いている冒険者だと思うから兵士に渡さずにこのまま放置するのもありだな。ギルドの人達にとってもこの強そうな人達を無くす訳にもいかないだろうしな。


「ねぇ、君達は冒険者なんだよね?」

「そ、それがどうした!」

「なら今回だけは見逃してあげるよ。国の為に働いてもらわないといけないし、君達みたいな強そうな人がギルドからいなくなったらギルドの人達も多分困っちゃうからね。だから今回だけは許してあげる」

「…」

「でも2度目はないよ?ミズナ、この3人を起こしてあげて」

「了解」


 ミズナに起こすように言うと、倒れている男3人は真っ白な光に包まれ、目を覚ます。


「お、俺達は一体…」「何が起こったんだ?」「いつの間に…」

「お前達は負けたんだよ。俺もな。こんな化物を相手にしてたら命が幾つあっても足りん。帰るぞ」

「「「……」」」


 リーダー?の男は起き上がった3人に俺達は負けたと言って奥の通路に歩いて行った。その後を追いかけるように男3人は走ってついて行く。

 はぁ〜怖かった。まさか絡まれるとは思わなかったよ。けど化物ってなんだよ化物って!酷い言われようだな。でも今思うと何故あの男達は大剣とオノを持ってたんだ?まさか魔剣士とかだった?でも何で魔法を使わなかったんだろ?疑問に思う事が色々あるな。


「マスター?」

「うん?あ、ごめんごめん。ちょと考え事をしてた。よし!観光の続きをしよっか!」


 心配そうにしているミズナに、何でもないよとミズナの頭を撫でて切り替えをする。


 取り敢えずは考える事よりもこの国の観光だ!風呂付きの宿も見つけたいしギルドにも行ってみたいからね!満喫するぞ!…勿論約束も守るから安心して!…誰に言ってるんだろう。 

 暗く狭い通路から人々が賑わう道に戻り、再度この町の観光を始める。気になる屋台に行って食べたり、お店に行って武器や防具、食品、道具を見たりと色々周って楽しんでいるとふとある事を思い出した。

 にしてもこの国ってランクいくつなんだろ?確かウルド王国がランクAの国とか王様が自慢げに言ってたけど国にランクとかって意味あるのかな?生き生きと皆んなしててランクとか関係ないように思えるけど。おっ?この匂いは!


「すいません!その飲み物2つ下さい!」

「いらっしゃいませ。2つで大銀貨1枚になります」


 高!?え、2つで大銀貨1枚って一杯500円じゃん!この世界ではもしかして高価な飲み物だったりして…。


「はい」

「受け取りました。では今からお作りしますので少しお待ち下さい」


 店員が黒い豆をすり潰す道具で粉になるまですり潰し、それを紙のコップに入れて、暖かいお湯に入れる。


「お待たせしました」

「ありがとうございます!」


 飲み物が入った紙コップを受け取った2人は少し離れたところまで移動して早速飲んでみることにした。

 まさかこの世界にもコーヒーがあるとは思わなかった。いい匂いが漂ってきたと思えばコーヒーの匂いでつい興奮してしまったけど俺苦いの無理なんだよね…。甘党だからコーヒーに砂糖3杯かガムシロ3つ入れないと飲めない。べ、別にお子ちゃまと思われてもいいし!…うん、まずはそのままの味を。


「苦!でも飲まないと勿体ない!ここは我慢して〜『はいマスター』ん?!」


 一口飲んで渋い顔をしていると、ミズナが白い粒が入った小さな瓶を渡してきた。

 これってまさか砂糖か?ちょと開けて…次にこれを指に乗せて〜いただきます…甘い!これは砂糖だ!


「ありがとうミズナ!」

「ん、マスターが喜んでくれて良かった」

「よし!これなら何とか飲める!…ミズナは入れなくても平気なのか?」

「私は平気」

「……」


 何か負けたような感じがするけど…ミズナって大人だな。

 少し悔しそうにしながらも横で美味しそう?に飲んでいるミズナを見て癒されていると、何かが遠くから聞こえてきた。


「あいつを逃すな!」

「ちっ!捕まってたまるかよ!」


 聞こえてきたのは数人の兵士が男を追いかけており、男は右腕に金や宝石を革袋に沢山入れて逃げていた。

 あれって泥棒だよな?


「そこの方!その男を捕まえてもらってもよろしいですか!」

「くそ!邪魔だ!」


 必死になったのか左手で背中に背負っていた杖を取り出し、隆介とミズナ目掛けて小さい炎を放つ。だが2人をどかす為だったのかわざと魔法を外し、走り抜けようとする。


「おらどけ!」


 それでもどかなかった2人に次は強引に走り抜けようと突っ込みそして…。

 バシャー!


「熱!?ってミズナ大丈夫か!」

「……」


 男が2人に体当たりをして、バランスを崩した2人は手に持っていたコーヒーが服にかぶってしまった。特にミズナの服は真っ白なのでコーヒーが染みて、色が黒くなってしまう。

 あの野郎!絶対に許さんぞ!


「グェ!」


 男を睨み付けていると、急に男がうつ伏せになった状態で地面に大の字で倒れていた。その時の男は上から何かに押し付けられているような状況になっており、立ち上がろうとしても立てず、顔も動かせない状況だった。


「何がどうなって….『許さない…マスターに害を成した愚か者は骨も残さない』ミズナ?」


 ミズナはゆっくりと男に近づいていき、右手を前に差し出して何かを込めている。それが段々と大きくなっていきその状態が見えてきた。

 おいおいおい!これって火魔法だろ!ミズナそれは流石にまずいって!しかもとんでもない量の魔力が込もっているからここだけじゃ済まないよ!


「ヒィー!や、やめてくれ!俺が悪かった!」

「……」

「嫌だ!まだ死にたくない!だ、だれか!」

「ミズナストップストップ!俺の為なのは嬉しいけど流石に他の所にも被害が出るから!」

「…了解マスター」


 無表情だが物凄い怒っているミズナを何とか隆介が止めに入る。

 ふぅ〜…何とか放つ前に止めることができたけどここまでとは思わなかったよ…。


「もう逃げる事はできません!大人しく捕まりなさい!」

「ヒィー!すいませんすいません!何もしないから殺すのだけはやめて!」


 男は顔を真っ青にさせ、怯えながら兵士に捕まり、大人しく連れて行かれた。


「ご協力感謝します!」


 兵士が隆介とミズナの元に来て敬礼し、感謝をした後仕事に戻ろうとしたので兵士を引き止める。


「あの!少し宜しいですか?」

「ん?どうかされましたか?」 

「お聞きしたいことがありまして冒険者ギルドと風呂付きの宿を探しているのですが何処にありますか?」

「そうですね〜冒険者ギルドでしたらここから真っ直ぐ行っていただき、曲がり角が見えましたらそこを右に曲がっていただいて、そこから少し歩いたらあります。目印は上の表紙に魔法の杖が書いてあるのでそこに行っていただけたらと。風呂付きの宿でしたら、平民の方は貴族地の入り口近くにあります。では僕はまだやる事がありますので失礼します」


 再び敬礼をして、兵士の人は走って行った。

 あの兵士の人優しい人だったな〜。俺の勝手なイメージでは兵士とかって俺達みたいな一般人に乱暴するイメージがあったのだけど違ったな。あ、ウルド王国の兵士はダメだった。結局は人それぞれって事か。さて、冒険者ギルドまでの行き方は聞けたとして、風呂付きの宿の場所までの行き方は聞けなかったな。あの兵士の人も忙しそうだったしまた止めるのも悪い。


「ミズナ、さっきも言ったけど俺の為に怒ってくれるのは嬉しい。だけどミズナの力は強大でもしあの魔法を放っていたらあの男だけじゃ被害がすまなかったよ?だから次からは気をつけてね?」

「ごめんなさいマスター…」


 アホ毛をしゅんとさせて、ジーと隆介の瞳を見つめる。

 悲しそうな顔しながら見られたら許さないなんて言えないじゃないか!言う気はないけど!


「ま、まー分かってくれたらいいよ。ほら、服もコーヒーで黒ずんでシミになっちゃうから綺麗にしないとね。折角ミズナに似合ってる服がダメになるのは俺としても悲しい」

「ん、綺麗にする。マスターのお気に入りは大事」


 2人は人気が無いところに移動して、ミズナと隆介は服を綺麗にする。勿論ミズナは自分の魔法で綺麗にして、隆介もミズナに頼んで綺麗にしてもらった。


「ありがとうな」

「ん」

「よし、綺麗にしたしギルドに行こっか」

「了解」


 人気のない所から再度人が賑わう道に戻った2人は兵士に言われた通りに歩いていくと、上には魔法の杖が絵書かれている看板を見つけた。

 お、あったあった。ここが冒険者ギルドとか〜。石造の大きな建物だからかなり目立つな。兵士の人に聞かなくても直ぐに見つけれたな。それなら風呂付きの宿の場所だけでも良かったな。ま、いいや。取り敢えず森でミズナが狩った魔物を売ってお金にしないと。ミズナもいいって言ってくれたし。中には入るとしてギルドに登録するのはどうしようかな。もし登録してこのステータスがバレたら嫌だしな〜。う〜ん…いや、考えても仕方ない。中に入ってから決めればいいか。

 少し大きめの扉を押して開くと中は少しお酒臭かったが、色んな冒険者達で賑わっていた。中には大柄の男が大きな盾を背負っていたり、弓を装備している人などがいた。だが圧倒的に多いのはやはり杖を持っている人が多い。

 お〜!賑やかだな〜!おっ?あそこで買取できるのかな?


「すいません」

「はい!何でしょうか?」


 受付カウンターらしき場所に2人は歩いて行き、そこにいる女性に話しかける。その女性は緑色の髪と瞳、髪をポニーテールにしており、胸も大きくスタイルがいい美人な人だった。そしてなんと言っても耳が尖っている事からエルフだとすぐに分かった。エルフの女性は元気よく隆介に答える。

 近くで見ると美人だな〜。


「魔物を買い取って欲しいのですができますか?」

「できますよ!

「あ、ではお願いします」

「分かりました。ではギルドカードをお持ちの場合見せてもらっても宜しいですか?」

「その〜ギルドカードを持ってなくて…」

「そうでしたか!ですが大丈夫ですよ!ギルドカードをお持ちじゃなくても買取は出来ます!あ、ですがもし宜しければお作りしますか?」

「そうですね〜お願いします」

「分かりました!そちらにいる方もお作りしますか?」

「…ん?」

「ミズナの分もお願いしても宜しいですか?」

「かしこまりました!ではお作りする前に少し説明をさせていただきます!」


 受付の人がそこから数分間説明を始める。


 まず受付の人が言うにはギルドカードを作って登録したら最初はEランクからとなる。そこからいくつかのクエストをこなす事でEからDになる。ランクはSまであるみたいだがそれを上回るSSとSSSという物もあるらしい。だがそのSSとSSSランクは世界で6人しか持ってないと言う。因みにSSが5人でSSSが1人と言っていた。どういう人物か少し気になったので詳しい情報を聞こうと思ったがやはり個人情報という事で教えてはくれなかった。まー当然だよな。E〜Dは下級冒険者、C〜Bが中級冒険者、A〜Sが上級冒険、SSが人外級冒険者、SSSが伝説級冒険者となっている。そして冒険者ランクCからは迷宮に入れるのだとか。


 いや、SSSの伝説級とか凄すぎだろ。しかも1人しかいないって。でもなんだろう…あの王様達が初めて個人ランクA+見たっていってるのに個人ランクAでもSSとSSSまで辿り着けるものなのか?う〜ん何だろこのモヤモヤ感は。本当は個人ランクS以上の人?とかがいるのに会えてそれを伏せて俺達に嘘をついて、世界初とか言って騙している様にしか思えない。でも確か豪華の称号には〈最高ランク者(人)〉と言うのがあった分けだし〜…人の中ではA+が初としてもそれ以外の種族にはA+以上がいるとか?それなら納得がいくけど。鈴菜が説明してくれた時獣人やエルフにA+以上は存在しないって言っていたけど…まさかね。真の勇者[豪華]を持ち上げる為に嘘をついて、世界初とか言った可能性もありそうだな。でもだからといってこの〈鑑定SSS〉を悪用して人のステータスを好き勝手に見るわけにもいかないしな〜。個人情報は何処でも大事!だからね。


 さて、次はこのランクと同じく色も関係してくる様でランクEが灰色、ランクDが茶色、ランクCが緑色、ランクBが青色、ランクAが赤色、ランクSが金色、ランクSSが白銀色、ランクSSSが虹色と分けられている。んで次にこれまた面倒なのがランクB以上になった場合。


 まずはメリットから話そう。メリットは受付できるクエストが増えたり個人ランクBの人達がいる町、貴族達がいる町に入って買い物ができるという事。少し聞いてみたのだがこの世界では個人ランクBしか入れない[ランクBの領域]と言うものがあるらしいのだが、そこに行くには自身のランクがB以上、あるいは冒険者ランクB以上の人か招待状、推薦状を獲得してないと入らないらしい。そこで少し気になった事を話してみた。そしたら驚いた事に貴族と言っても貴族位は無いらしい。普通なら公爵や伯爵と言った物があるのだがこの世界ではやはりと言うべきかランクで決まるみたいだ。簡単に言うと貴族ランクと言うものがあるらしくこの国で例えるなら〈レストリア王国の貴族ランクA〉の称号とか。それによって全て決まるらしい。このランクは全て遺伝で受け継いでおり、それ以上それ以下には慣れないとか。そして何より意味深かったのはわざわざ受付の人が耳元で「その貴族の屋敷にある水晶に触れれば貴族になれますよ」と、冗談めいて言っていた事である。そこで俺は理解した。これは冗談ではなくその水晶こそが貴族のランクに関わってくる重要な物だと。まーそれ以上は何も言わなかったけど。それにこの話を深掘りして聞いたら聞いたで怖いし。


 次にデメリットを話そう。デメリットは貴族による強制依頼と言うもの。えっ?それだけ?と思うかもしれないけどこれがまた面倒なのよ。俺の勝手なイメージだけどもしかしたら依頼を貴族に無理やり押し切られ、無茶な要求を強制される可能性もある。 

 あ、勿論普通にいい貴族の人もいるかもしれないけどやっぱりランクの世界となるとな。一応その辺も聞いてみたけどやっぱりたまにあるみたいで、ギルドの人も困ってるみたい。嫌だな〜。


「これで最後になりますがギルド内での暴力行為は禁止されています。ですが決闘等などは各自自己責任なので気をつけてください。ギルドでは貴族の格差は禁止されており、冒険者ランクによる実力で決められます。では作ってきますので少々お待ち下さい」


 そう言うと受付の人は奥の扉に入っていった。

 うん、さっきから突き刺さるこの視線はヤバい予感しかしないのだが…。

 その予想は的中し、6人組の男がニヤニヤと2人に近寄ってきた。


「おう、兄ちゃん。ちょと顔貸せよ」

「はぁ〜何で今日はこんなにも濃いんだが…。しかもまた大柄な人だし…。俺達が何したんよ」

「あん?何言ってんだ?」

「デュクさん!その女早くいただきましょうよ!」

「そうだったな。そこの嬢ちゃん!そんなもやし男より俺達見たいな力強い男の方がいいぜ?それに何たって」


 後ろにいたヒョロ体型のローブを着た男が大柄な男にメインの事を話すと、そうだったと言い胸元に付けている青色のバッチを見せつける。


「俺達はランクBだ!魔法も使えて素手で戦える俺達の方がよっぽどいいぜ?」


 と自慢しているがミズナはそんな男共に興味ないのかアホ毛をゆらゆらとさせながら隆介の顔をじ〜と見て楽しんで?いた。

 その一方で隆介は心の中で突っ込んでいた。

 いやいや、この6人が魔法使いなのは分かるよ!背負ってるのも魔法の杖だし魔法職なのは分かるよ!そう言う世界だから!けど!何故素手!筋肉凄いのは見ての通り分かるけど!あのヒョロイ奴以外は。それを活かしてあの路上で出会った男達見たいな大剣とかオノ使おうよ!1人は前衛いようよ!てかヤバい、吹きそうになった。ギャップという物だろうか。こんな筋肉しときながら魔法の杖を背中に背負ってるって、しかもサイズがあのヒョロイ男以外はデカすぎて杖が小さく…。


「プッ」

「あっ?テメー何笑ってんだ?」

「これはすみません。それで?俺達に何か御用ですか?もしかして好かれる女性が居ないからって他の人から女性を奪う趣味でもあるのですか?」

「テメー舐めた事を言いやがって!」

「お待たせしました。こちらがお二人のギルドカードになります。それとこちらはランクEのバッチとなります」


 男がキレた瞬間、ちょうどギルドカードが出来たのか奥の扉から受付の人が戻ってきて2人にギルドカードと灰色のバッチを渡す。


「ありがとうございます」

「はい!それと此処では暴力行為は禁止ですよ?」

「分かってる!おいお前!決闘だ!」

「何で?」


 ザワザワ


 すると周りで見ていた冒険者達が隆介に向けて可哀想な目で見ていた。


「あの男終わったな」「可哀想に…」「まだあんなにも若いのにの」「ランクBのパーティーに挑むのは流石にまずいぞ」「あの子カッコいいのに奴隷になったらどうしよう…」「その時は買ってあげようよ」


 男性からはあいつ終わったなという顔をして、女性からは奴隷になったら買ってあげよという声が聞こえてきた。


「あっ?んなもん俺達をコケにした罰だ!何?それともそれだけ俺達に言っておいて逃げるつもりか?別にそれはいいんだぜ?だが…」


 と、大柄な男は隆介の耳元まで近づいていき小声で話す。


「後々後悔しても知らないぞ?お前の大事な女が急にいなくなってたりなんてな」ボソッ


 隆介の耳元で喋った男は話した後、ニヤニヤとしながら隆介の様子を伺っている。

 そしてそんな隆介はと言うと…。


「へぇ〜何処の誰だか知らないけど俺の大事な仲間に手を出そうってんなら此処でその芽を積んどいた方がいいな。いいよ、その決闘受けて立つ。どうせお前1人の力だとB以下だろうしまとめてかかってきな。PTメンバー全員でランクBなんだよね?」

「こいつさっきから俺達の事を馬鹿にしやがって!後悔しても知らねーからな!俺達ランクBの力見せつけてやるよ!そして俺の名前はデュク様だ!このパーティーのリーダーだぞ!分かったか!」


 男達は顔を真っ赤にしながらも受付の方に移動する。

 やれやれ、煽るのは余り好きじゃないけどこれで考える力は失われたはず。怒りに任せて魔法とかを発動してもらって魔力切れにさせれば誰も怪我をせずに済むだろ。あいつらも一応中級冒険者だ。傷をつけてクエスト行けなくなったら罰が悪い。


「おい!早く決闘書を出せ!」

「か、かしこまりました」

「これでお前は逃げれなくなった!んでだ、賭ける物を決めようではないか」

「賭ける物?」

「あっ?決闘に何かを賭ける事も知らねーのか?みんな知ってる事だぜ?こんな頭悪い男より俺達といた方が楽しいぜ嬢ちゃん?」


 そんな事も知らねーのかと上から目線で隆介の事を馬鹿にした男達は急に寒気を感じる。


「な、何だこの寒気!?」

「お、おいこれはヤバいぞ!」「デ、デュクさんこの寒気は一体!?」「何で周りは平気なんだ!」「クソ!寒いぞ!」「寒気というよりガチで寒いぞ!」


 男達が何故か困惑している中、原因は直ぐに分かった。


「マスターを馬鹿にするのは許さない」


 何とミズナは最初こそは我慢して無視をしていたが、自分のマスターがまた馬鹿にされ、少し抑えてはいるが氷魔法を男達に発動させていた。無表情だが怒りが伝わってくるのが分かる。


「この纏わりついた冷気が原因ですよデュクさん!」

「クソ!早く消せ!」

「ミズナ、俺は大丈夫だから解除してあげて。流石に此処で魔法を発動させるのはダメだよ」


 と、隆介は優しくミズナの頭を撫でて解除させる。するとアホ毛がゆっくりとゆらゆらとし始めて男達に纏っていた冷気を解除する。


「何かすみませんね仲間のミズナが失礼な事をしてしまって」

「ちっ!どうせその女は俺の物になるんだ!その分たっぷりと可愛がってやるよ」


 舌を舐めミズナの事を下心で下から上まで見てニヤニヤとしていた。そんな男達に隆介はある事を思いついた。


「あ、じゃー俺が賭けるのはミズナとこの装備全部とアイテムバック全部でいいですよ。言えば全財産賭けという事。でもその代わり貴方達の全財産を貰うよ。それでいいですか?」 


 と、アイテムバックや自分が装備している物をわざと男達に見せびらかす。


「へぇ!いいだろう。俺達が負けたら全財産やるよ!それと追加だ!負けたらお前は奴隷行きだ!俺達をコケにした報いを受けてもらうぞ?」

「いいよそれで。んで?明日でもいいか?今日は色々と疲れてるのよ。何?それとも弱っていて万全じゃない人を痛ぶるのが好きな人?」

「こいつ散々俺達に生意気言いやがって!だがいいだろう!明日の12時の鐘が鳴るまでに此処に来い!これは契約書だ!ここにサインしろ!」


 男は一枚の紙を受付の人から受け取り、隆介に見せる。


「なになに」


 そこに書かれているのは、この契約書を書いた者は必ず約束を守らなければならない。注意1・片方が約束を守られなかった場合はもう片方の勝利となる。注意2・もし逃亡などをした場合でも強制的に契約者の元まで自動転移する。注意3・この契約書は絶対であり約束が守られるまで破る事や捨てる事が出来ない。


「なるほどね。じゃー名前の所にゼロっと。はい、書いたよ」

「ふん!」


 男は奪う様に隆介から契約書を取って自分の名前を書き始める。すると突然契約書が光ったと思えばすぐに消える。


「これで完了だ!明日が楽しみだな兄ちゃんよ〜ハハハ!」


 男は笑いながらそのままギルドの扉から出て行った。

 はぁ〜マジで今日は濃いよ。


「さて、じゃー受付のお姉さん、俺達の持っている魔物を買い取ってほしいのですが量が少し多いので此処では出せません。ですので大きめな場所はありませんか?」

「は、はい!ではこちら!」


 切り替えが早い隆介を見てビックリしていた受付の人はハァ!となり、慌てて2人を先導するように先頭を歩いて、隆介とミズナはその後ろを着いて行き、奥に入って行った。


読んでくださりありがとうございます!


何話か誤字等など見つけて直していますがまだあるかもしれません。気づかないところもあるかも知れませんが読み返し見つけ次第直ぐに直します!


今後とも楽しく妄想して投稿しますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ