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第8話 危機と脱出

投稿がかなり遅くなりました。m(_ _)m

言い訳にしかならないのですが何かと忙しいです(T ^ T)



「おい!あれはなんだよ!「アクマ説明しろよ!」「嫌な予感がひしひしとするぞ」「私の頭に警告が鳴り響いています!これはまずいです!」「グフフ、怖いよ怖いよ怖いよ!」

「もう嫌だ…帰りたいよ…」「私達どうなっちゃうの?」「こんな世界にいたくないよ!お母さんとお父さんに会いたい!」「もう嫌…」

「落ち着いて下さい皆さん!きっと大丈夫です!私がいます!この真の勇者が!」


 揺れはまだ続いており、強気(つよき)だった一部の男子達もどんどん広がっていく亀裂に恐怖を感じており、女子達も抱きしめ合い、涙を浮かべながら亀裂の方を見ていた。そんな生徒達を励ますように豪華は声をかけている。


「隆介…僕も何だか怖いよ…」


 美菜もまた亀裂の方を見ながら怖がっていた。そして美菜は隆介の右手をギュッと握るとその手は震えていた。


「大丈夫、豪華が何とかしてくれるはずだ。それに俺が犠牲になろうとも3人は絶対に守ってやる。こんな俺でも役に立ちたいからな」

「犠牲になるとかそんなこと言わなで!僕は隆介がいない毎日なんて耐えれないよ…。だからそんなこと絶対に言わないで!」

「ご、ごめん…もう言わないよ」


 いきなりギュッと手に力を入れ、怒った顔で隆介の方に顔を向ける。アホ毛も勢いよくぶんぶんしている。

 こんなにも必死な美菜に言われたら何も返せないな…。冗談でも言うもんじゃなかった。兎に角この状況はどうしようか。今は何も出来ないし。本当の意味で。


「美菜、少しは落ち着きなさい。隆介も馬鹿な事言ってないで。あのアクマと言う人が言ってた通り、この安全エリアにいれば安全なんでしょ?なら揺れが収まったら皆んなを一旦ここに集めればいいんじゃないかしら?」

「そうだね!流石鈴菜さん!確かにここは安全エリアだから皆んなをここに集めてアクマさんの持っている転移結晶だっけ?を発動させて帰れるね!」

「そう言うことよ。それと美菜はいつまで隆介の手を握ってるのかしら?いい加減離れなさい。皆んなが見てるわよ?」

「い、いいもん見られても!だから僕はこの手を離さない!」

「そう、なら帰ったら美菜の分のスイーツ無しよ?」

「ぐぬぬぬ…でも僕は隆介の手を…スイーツを我慢すれば…」

「美菜、正直今は恥ずかしいから鈴菜の言う通り離さないか?帰ったらいくらでもしてやるから」

「ほ、本当に?」

「本当だ。だから今は離れよ?」

「うん!約束だよ!」

「本当隆介は美菜に甘甘なんだから…」ボソッ


 そんな会話をしながら隆介達4人は安全エリアにいたが、アクマや豪華達はまだ危険なフィールド内にいた。その後時間が経つにつれ段々と亀裂が大きくなっていき、絶望の時が訪れる。


 ドーン!!


「ア、アクマ様!あの巨大な生物はなんですか!?」

「こ、これは私にも分かりません!なぁ!?階段上の安全エリアが機能してない!勇者の皆様!この魔物は危険です!揺れが収まると同時に急いで私の元に集まって下さい!そちらにいる勇者様も揺れが収まったら私の元に!」

「嫌だ!死にたくない!」「ママー!」「勇者何てなるんじゃなかった!」「あ〜!私の人生もここまでですか…」「嫌だ嫌だ嫌だ!新品のまま僕は死にたくない!」


 そう、大きな亀裂から出てきたのは白く大きな翼を閉じた巨大な白いドラゴンだった。それと同時に揺れも少しずつ収まるが、皆んな足がすくんでしまい、動こうにも動けなかった。

 おいおいおい!何だあの巨大なドラゴン!まじで言ってるのか!隆介は唖然とした顔で白いドラゴンを見ていると。


「隆介何ボートしてるの!早く私達も行くわよ!」

「あ、ああ」

「隆介君行くよ!」

「早くしないと皆んなここでゲームオーバーだよ!そんなの僕は絶対に嫌だからね!皆んな助かってこそだよ!」


 4人もアクマの元に急いで行こうとした瞬間…。


「グオァアーーーー!」


 固まっていた白いドラゴンが真っ赤な目を見開くと翼を大きく広げ、相手に恐怖を与える程の威圧と大きな咆哮をあげる。空気が一瞬ビリビリ!となり、その咆哮によって何人もの生徒達が気絶して泡を拭いてしまった。


「ぐぅ!?頭が…って!おい美菜!大丈夫か!」

「美菜!ねぇ美菜起きて!」

「美菜さん!」

「ダメだ…目が覚めない。こうなったら。鈴菜、春香!俺が囮になるから2人のどちらか美菜を背負って先に走ってくれ!」

「ふざけないで!そんなこと私はできるわけないわ!」

「そうだよ隆介君!」


 鈴菜と春香の本気で自分のことを怒った姿に隆介は改めて2人が友達で良かったと思える。


「わ、悪かった。なら早く一緒にアクマさんの元に行こうか!」

「ええ!」

「うん!」


 ドラゴンの咆哮により美菜は気絶をしてしまった。そんな美菜を急いで隆介は背負って再度走り出す。

 クソ!あのドラゴンまじでヤバい!鑑定したいけど今はそんな暇はない!だけど何で俺は気絶しなかったんだ?

 そんな事を思っていると…。


『隆介様私の声が聞こえますか!』


「うぉ!?神様!?」


 いきなり脳内に神様の声が聞こえた隆介は走っていた足を止めてキョロキョロする。


「どうしたの隆介!」

「隆介君!」

「いや何でもないごめん」

「なら行くわよ!」


そしてまた3人は走り出す。

 はい!聞こえます神様!ですが何処から聞こえるのでしょうか?


『隆介様の脳内に直接話しかけております!隆介様も脳内で話しかけるようにしていただけたらと!』

『こうですか?』

『はい!とと、今は緊急事態です!何とか間に合いましたが隆介様には一時的に保護スキルを付与しました。このスキルは近くにいる人達にも効果があるのですが隆介様の彼女である美菜様が気絶されたのは予想外です…。本当にすみません。次に問題であるこの現象ですが現在この初心迷宮では原因不明のバグが発生しております。そのせいで本来初心迷宮に絶対出現するはずのない地獄迷宮100階のボス、【白神龍王(グウィバー)】がここ初心迷宮に出現しました。私ができるのは皆様の応援のみ。悔しいですが私には何もできません。ですので…その…隆介様に討伐をと…』

『……えっ?』


 いやいやいやいや!俺に頼まれても無理じゃね!しかも聞いた?地獄とかついちゃってる名前の迷宮の100階ボスだよ!美菜は彼女じゃないよ!と言ってる暇はないぐらいに!無理無理無理!俺はEランクの雑魚だし!…悲しい…。


『だ、大丈夫です!隆介様だからこそできることです!』

『いや私じゃ無理です!討伐でしたら真の勇者、豪華なら勝てるはずです!」

『すみません豪華様ですと少々難しいかと…。その…言いにくいのですが白神龍王(グウィバー)はランクSS+です。今の勇者の皆様では対応ができません。ですので唯一あの方の血を引いている隆介様なら倒せるかと…。私のバグスキルはあの方の血を引いている者、もしくは次になる新しい神じゃないと扱えない特殊な魔法です。それを上手く使えるのは隆介様しかいません!お願いします!』

『ちょ!なら私には絶対無理ですよ!SS+とか勝てませんよ!って!うおっ!?』


 隆介は神様と脳内で話していると、走っている隆介達に目掛けて白神龍王(グウィバー)が攻撃をする。それも何度も隆介だけ目掛けて。その攻撃は当たるか当たらないかの本当にギリギリだった。

 もの凄い気になる言葉があったけど兎に角全力で走らないとまずい!


『大丈夫ですか!原因は分かりませんがどうやら白神龍王(グウィバー)は隆介様だけを狙っているようです!』

『何でですか!確かにさっきから私ばかり狙ってきてますけどこれってたまたまじゃないですよね!まさかの自分がこの中で一番弱いと分かっての攻撃ですか!弱い者虐めですか!』

『私にも分かりません!ですが安心してください!倒す方法は一つあります!』

『それは何ですか!お願いします神様!』

『はい、まずは隆介様の力が見られないように鈴菜様と春香様を皆様の所に行くよう言ってください。そして次に隆介様は〈万能〉スキルを生かしつつ攻撃を回避して、自身のランクをBまで上げてください!』

『分かりました!』

「隆介!?」

「隆介君!?」



 美菜を背負った状態で鈴菜と春香の前を走っていた隆介が急に止まった為、2人とも隆介にぶつかりかけた。


「ちょと!いきなりまた止まらないでほしいわ!」

「また止まってどうしたの!」

「やっぱりごめん鈴菜!春香!どうやらあいつ本気で俺を狙ってるようだ!だから美菜をアクマさんの元に連れてってほしい!それに鈴菜達も皆んなの所に先に行ってくれ!」

「何を馬鹿なこと言ってるの!隆介は本気で私達を怒らせたいの!ならもう隆介が行かないなら私もここに残るわ!」

「そうだよ隆介君!僕達はもう家族なんだよね!なら僕も家族としてここに残るよ!」

「ダメだ!3人を巻き込むわけにはいかない!大丈夫!必ず皆んなの所に向かう!これは俺からの一生のお願いだ!」


 隆介は鈴菜達の目をしっかり見て、力強く答える。今は時間がない!気絶してる人や恐怖で動けない人達を巻き込むわけにもいかない!それにこいつ俺だけを狙ってくるなら囮になって時間を稼ぎ、少しでも皆んなを安全に離脱できるようにしないと!

 力強く鈴菜と春香の目を見ていると、2人は、はぁ〜と下にため息を吐いて、再度隆介の目を見る。


「……分かったわ。けど絶対よ…絶対に合流してね?そうじゃなきゃ許さないから。特に美菜は一番隆介のことを思っているから、もしいなくなったりでもしたら美菜がどうなってしまうのか私には全く想像がつかないわ。だからね?」

「気をつけてね隆介君!絶対に来るんだよ?約束だよ!」

「ああ!絶対に戻る!約束だ!鈴菜と春香も皆んなの事を頼む!」


 隆介は美菜を鈴菜に渡して、皆んながいる方向とは逆の方に走っていく。

 さて、ここからだな。本当だったら今頃死んでるけど〈万能〉が発動してくれてるおかげでなんとか生き延びている。1度目は奇跡だったけどその後は攻撃パターンが多分同じ?なのか自動的に体が回避してくれる。本当凄いよなこのスキル。高確率とか書いてあったけど確定じゃん!


「こい!このデカブツが!」

「グオァアーーーー!」


 その言葉が通じたか分からないがドラゴンは咆哮を上げて隆介に攻撃を何度も繰り返す。

 よしよしかかったぞ!取り敢えずは…。


『神様、まずは自分のランクを上げればいいのですね!』

『はい!』

『分かりました!…えっ?はぁ!?』


 走っていた隆介は唖然した。鈴菜達が無事にアクマ達の元にたどり着けたのか危険を承知で一瞬だけ振り返ると、無事にたどり着いた鈴菜と春香がこちらに振り向き頷くのが見えた。が、その隣でアクマが大きな鞄から2つ転移結晶を取り出して1つは豪華に渡していた。


「嘘だろおい!まさかとは思うけどこれ仕組みか!1つしかないとか言ってなかったか!」


 一瞬だけ振り返った隆介と、転移結晶を持っているアクマ、豪華と目が合い、2人はニヤリとして、転移結晶を使い隆介以外の皆んながその場から消えていった。


「クソ!これまさかあの2人の仕業か!」

『すみません!どうやらそのようです!アクマ様達がこの迷宮からいなくなった瞬間迷宮内の魔物が通常通りになりました!ですが…白神龍王(グウィバー)だけはそのままのようです』

『これも全てあいつらの計画だったってことか!俺をここで殺す為の…』

『隆介様…』


 俺はただ目立たず平和に暮らしたかっただけなのに…。はは…もういいよ…。もう何もかも面倒くさい。復讐だの言ってた俺が馬鹿らしくなってきた。相手する価値のない奴らなんかに時間を使うぐらいならこの世界を4人で冒険をする。どうせ戻っても理不尽な虐めしか起きないし…。元の世界に帰れる日が来るまで冒険をする、そのためにもこのデカブツを倒して生きて戻らないとな。


「[ランク操作!ランク6UP!〈ランク〉を指定!]」


〈承知しました。〈ランクE〉を6UPさせます〉6/12


〈ランクE〉→〈ランクB〉


〈〈ランクD〉になった為〈特殊変身_〉を追加します〉


〈〈ランクC〉になった為〈魔法転送_〉を追加します〉


〈〈ランクB〉になった為〈アバター創造_〉を追加します〉


〈特殊変身_〉 

魔力消費なしで変身可能。自由に相手の姿や自分の好みの姿に変身できる。触れられても変身は解けない。


〈魔法転送_〉

自分の魔法、ユニーク魔法を味方に転送すことが可能。ただし渡した魔法は自分の手元から消える。転送した魔法はランクEからとなる。


〈アバター創造_〉

自分が想像したアバターを生み出すことができる。想像したアバターに、人格を宿すことで自我を持つ。残り5/5


『ランクをBまで上げました。次はどうすればいいですか!』

『はい!次に〈アバター創造_〉を使い自分の分身となるアバターを作ってください!その間は何とか回避しつつ持ち堪えてください!』

『持ち堪えるって…いや、今はそんなこと言ってる暇はないな。分かりました!』


 体力も限界になってきていたが神様の指示どうりアバターを作ることにする。その時!


『隆介様!しゃがんで避けてください!』

『えっ?がはぁ!?』

『隆介様!』


 隆介の背中にとてつもない衝撃が走り、壁に思いっきり叩きつけられる。


 本当に油断した…。〈万能〉に頼りすぎた…。初見で見ないと回避できない攻撃に対しては自分で避けなきゃいかんのがデメリットだな…。これはマジでヤバい…。骨が絶対に折れたやつだ…。


『隆介様!隆介様!』

『……』

『隆介様をここで死なせるわけにはいきません!神のルールだの言ってる暇はないみたいです!今私が全力でサポートいたします!ですので頑張ってください!生きてください!まずは全身の回復!次に身体強化MAX!これで身体共に頑丈になったはずです!最後に召喚の加護を!これで必ず大丈夫です!」


〈〈召喚の加護〉を獲得しました〉


 隆介の体が光ったと思えば全身の痛みがなくなり、逆に力がとてつもなく湧いてきた


「痛みが消えて逆に力が湧いてくる…。これなら何とかいける!ありがとうございます神様!さて!走りながらまずはアバターを作るか![〈アバター創造〉を発動!]」


 神様のお陰で痛みは一切なくなり、力が湧いてきた隆介は立ち上がって再び走り出して、白神龍王(グウィバー)の攻撃を走りながら回避し、スキルを発動せる。


〈承知しました。〈アバター創造_〉を発動します。アバターの特徴を想像してください〉


(例)

〈性別〉

〈種族〉

〈性格〉

〈髪型〉

〈髪色〉

〈顔〉

〈目〉

〈瞳の色〉

〈体型〉 

〈身長〉

〈名前〉

〈など〉


「多いな!とか言ってる暇はないな。選択!性別女性!種族人間!性格ランダム!髪型アホ毛ありの触覚ヘアーのロング!髪色は黒!顔はスラッと!目はまったり?眠たそう?瞳の色は…水色!体型スレンダー!身長ランダム!名前はミズナ!よし、こんな感じか?」


〈承知しました。数分後、隆介様の想像したアバターを元に制作して召喚します〉


『できましたか隆介様』

『はい何とか!』

『召喚まで時間があります。走りながらですみませんが少し宜しいでしょうか?』

『大丈夫ですよ。何でしょうか?』

『隆介様が想像したアバターの特徴をお聞きしても宜しいですか?』

『えっと…私達がやってたオンラインゲームのアバターです。と言っても3人で1つのゲームをやってただけですが。一番の特徴は鈴菜の髪型と美菜のアホ毛を合わせた髪型ですね。性別は鈴菜と美菜が。種族は3人で。性格はありませんでした。髪型も3人です。髪色は鈴菜。顔は鈴菜と美菜が。目元は美菜が。瞳の色は私が。体型は鈴菜と美菜。身長は〜ランダムでした。名前も3人で決めました。美菜の[ミ]と鈴菜の[ズ]、そして2人の[ナ]です。私の名前はあえて入れてません。そんな感じです。殆ど2人が作ったって感じですがね』

『そうでしたか。そのお二方とは仲がよろしいのですね。正直羨ましいです』

『はは…幼稚園からの付き合いですからね』

『そうですか…隆介様!すみません!またもや緊急です!白神龍王(グウィバー)が炎を吐こうとしています!』

『えっ!』


 隆介が神様と脳内で会話をしていると、いきなり神様が大声をだして警告をする。

 隆介は足を止めて後ろを振り向くと、白神龍王(グウィバー)の口からはオレンジ色の炎が見えており、隆介向けて口から炎を吐こうとしている体制だった。


『このままじゃ隆介様が危ないです!ど、どうましょう!』

『落ち着いてください神様!助かる方法がきっとあるはずです!』

『で、ですが白神龍王(グウィバー)のブレスは通常のドラゴンとは違い、広範囲で全ての部屋が炎に包まれる可能性があるかと!』

『まじですが…』

『まじです!本気でヤバいです!』


 神様の焦りが隆介に伝わり、更に緊張感が増していく。そんな中白神龍王(グウィバー)は溜まり切ったのか上に向けていた顔を下に下げて今にも炎を吐こうとしていた。


『ど、どうしましょう!…あっ!そうでした!まだ助かる方法が一つありました!大丈夫です隆介様!絶対に助かります!』

『ほ、本当ですか!』

『はい!そのままそこに立っていてください!必ず助かります!私を信じてください!』

『分かりました!神様を信じます!』


 隆介は神様の言われた通りその場で止まり白神龍王(グウィバー)の方を見る。

 大丈夫、俺はまだここで死なない。死ぬわけにはいかない。まだやりたい事がたくさんあるんだから。

 そして…


「グガァー!!」


 溜めていた炎を一気に隆介目掛けて口からブレスする。そのブレスが隆介に直撃した瞬間…。


〈製作完了。隆介様の想像したアバターを召喚します〉4/5


〈称号〈生み出す者〉を獲得しました〉


 頭にその言葉だけが響き隆介は炎に包まれる。


「グオオオオオオッ!」


 咆哮が部屋中に響き、天井の一部が崩れ、煙が巻き上がる。そして隆介を倒したと思っていた白神龍王(グウィバー)は再び休眠状態に入ろうと翼を折りたたんだ…が…。


「グガッ!?グァーーー!」

「いきなり攻撃は酷い…」


 ズドーン!


 ゆったりとした少女の声が光と共に煙の中から聞こえ、その煙から出てきた光の刃によって白神龍王(グウィバー)の両翼が切断され、大きな音と共に地面に落ち、切断された先からは瘴気が溢れ出ていた。両翼を切断された白神龍王(グウィバー)はもがくように暴れている。


「ん、挨拶してなかった。初めましてマスター。大丈夫?」

「……」

「マスター?」

「何で全裸なんだよ!」

「ん?」


 隆介が想像したアバターを召喚する事には成功したが何故か召喚された少女は、全裸のまま隆介の前に立っていた。その少女は隆介の想像した通り、黒髪ロングのストレートにちょこんとアホ毛が付いている。スラッとした顔付き、ゆったりとした眉、眠たそうな目、綺麗な水色の瞳、シミひとつもない真っ白な肌、スレンダーな体付きに控えめなプクッと少し膨らんだ可愛い胸。身長は約162cm、無駄な毛が一切ないツルッとした少女が叫んだ隆介の事を不思議そうに見ていた。

 おかしい…何かがおかしい!確かに3人で作ったゲームのアバターをそのまま召喚する事には成功したよ。でも!何で服も着ずに全裸なんだよ!まさかこれって残りの4人も全裸で召喚されるとか?…って!



「ミズナ後ろだ!危ない!」

「本当だ。危ない」

「グガァアーグガァーー!」


 怒り狂ったかのように2人目掛けて攻撃をした白神龍王(グウィバー)は次々と連続で攻撃を繰り出す。更には光魔法と思われる光のレーザーが一箇所目掛けて集中的に何発も放たれるいるが…。


「このくらい余裕」


 ミズナはのんびりとした声でゆっくりと後ろを振り向き、目の前に大きな銀色と金色の線が入っている盾を出現させる。その盾を片手で持ちながら全ての攻撃を防いでいた。

 す、すげー…一つの盾だけであのドラゴンの攻撃を全て防いでいるってチートすぎだろ。特にあの大きい盾を片手で持つ所とか。


「ん、もうあの大きいトカゲ倒してもいいマスター?いきなり攻撃してきた報いを受けさせるべき」

「あ、ああ、倒してもいいけど大丈夫?」

「余裕。せい…。終わった」

「……」


 ミズナが隆介に白神龍王(グウィバー)を倒してもいいかを聞いて、隆介がそれに答えた瞬間、持っていた盾がかけらとなって消えていき、ミズナの手から光の輪が出現した。その光の輪は、白神龍王(グウィバー)の首目掛けて二つ飛んでいく。一つ目の光は首を半分まで切断して消えていき、二つ目の光で完全に首を切断した。首を切断された白神龍王(グウィバー)はゆっくりと地面に倒れていき、段々と体が薄くなって最後には消えていく。すると倒れたところに虹色に輝く中ぐらいの箱が出現した。

 その一瞬の出来事に隆介は唖然とするばかりだった。


〈称号〈地獄迷宮突破者〉を獲得しました〉


〈称号〈白神龍王討伐者〉を獲得しました〉


「い、一体何がどうなったんだ?」


(私を解放してくれてありがとう)


 すると隆介の頭の中に優しい声で助けを求めていた女性の声が聞こえ、お礼を言ってきた。

 この声は確かあの時の…。まさかあのドラゴンが苦しんでいたのか…。あのアクマとか言うやつのせいで。もう大丈夫だよ。ミズナのお陰であなたは自由です。


(本当に感謝します。私は迷宮と呼ばれる所を住処としていますが、本来争い事が嫌いです。ですがいきなり頭に激痛が走りました。何とか意識を保ちましたが体が何かに操られている感じがして必死に助けを求めました。その声が届いたのがあなた様で本当に良かったです。お礼に私の加護などを授けます。どうか今の世界を平和に導いてください。もし、もう一度あなた様と会える日が来ましたら全力でサポートいたします。私はいつでもお待ちしております。では勇敢なる者に祝福を)


 その言葉を最後に聞こえなくなった。


〈〈白神龍王の加護〉を獲得しました〉


「マスターどうしたの?ん?あそこの箱開けていい?」

「何でもないよ。あそこ?ああ、あの虹色の箱だね。いいよミズナが倒したんだし。一応警戒はしてね。それとマスターじゃなくて隆介と呼んで欲しいかな」

「分かった。マスターはマスター。ダメ?」

「う〜んまぁいっか。助けてくれてありがとなミズナ。でも何で裸なんだ?」

「マスターを助けるのは当たり前。それに関して私は分からない」

「あはは…」


 そう言うとミズナは虹色の宝箱の方に全裸のままゆっくりと歩いていき、普通に箱を開ける。

 ミズナ普通にあの箱開けたけど大丈夫か?トラップとかないよな?にしても『何とか間に合いましたね。本当によかったです』未だに全裸なのか…恥じらいとかないのか?そうだ今神様に聞こう。


『あの〜ちょと質問宜しいでしょうか?』

『はい、何でしょう』

『何で召喚されたミズナが全裸のままなのでしょうか?』

『それは私にも分かりません。ですが唯一言えることでしたら目立たない所で召喚されるのが一番(よろ)しいかと思われます』

『そうですよね…。分かりましたありがとうございます』

『いえいえ、では私はここで。本当に隆介様が助かって良かったです』


 その言葉を最後に神様の声が聞こえることがなかった。ふと、神様が言っていた気になる言葉を思い出したが声が一切聞こえなくなったのでまた今度聞くことにした。


「まー次にでも聞くか。さて、ミズナは大丈夫かな?」


 ミズナの方に顔を向けると、虹色の箱の中から取り出したであろう制服っぽい白の服がミズナの手に見えていた。

 なにしてるんだ?取り敢えず余りミズナの体をなるべく見ないように俺も向かうか。


「ん〜…」

「どうしたミズナ?」

「マスターごめんなさい。私のせいでマスターが着るはずだった服が全部私専用に変化しちゃった…」

「どう言うことだ?」

「中に入っていた服とかをマスターに届けようと触れたらいきなり光って見た目が変わった…」

「あ〜…なるほどね」


 箱の中の装備品とかを最初に触れた人の性別や体型とかに合わせて変化するシステムになってるのか。だからミズナが俺の為と思って触れたらミズナ専用になってしまったと。まー別にそれに関しては全然良いかな。


「別に良いよミズナ。謝ることはない。ミズナが倒した敵なんだからミズナが貰うのは普通だろ?それにちょうどミズナの服ができたし良いじゃないか。可愛いミズナにはきっとこの服似合うよ。いや絶対に似合う」

「マスター私可愛い?」

「ああ、可愛いぞ」

「ん…」


 隆介はミズナの頭を優しく無意識にナデナデしていた。されていたミズナは頬を少し赤くして嬉しそうにしており、アホ毛もぴょこぴょこしている。


「マスター子供何人欲しい?」

「ん?何か言ったか?」

「何でもない」

「そっか、よし!俺は後ろを向いているからミズナはそれに着替えといてくれ。焦る必要はないからゆっくりでもいいよ」

「ん、了解」


 隆介は後ろを向いて、ミズナの着替えを待つ。後ろではミズナが服を着る音がゴソゴソ聞こえた。その間に自分の新しく追加されたスキルを確認する。

 聞こえてたけどあえて聞こえてないフリをしておこう。それがいいと俺の中で言っている。さて、追加された残りの2つのスキルどんなやつなんだろ?必死だったから見てないや。それに加護も見たいけどそれは帰ったらでいいかな。兎に角スキルだけでも見てみるか。


〈特殊変身_〉

魔力消費なしで変身可能。自由に相手の姿や自分の好みの姿に変身できる。触れられても変身は解けない。


〈魔法転送_〉

自分の魔法、ユニーク魔法を味方に転送すことが可能。ただし渡した魔法は自分の手元から消える。転送した魔法はランクEからとなる。


 〈特殊変身〉は使えそうだな。ウルド王国の奴らに俺は死んだと多分思われてるはずだから姿を変えて鈴菜達を城から誘拐して…誘って旅に出るか。だが言っておこう。決して逃げるわけではない。それにこれは犯罪でもない!うん。だから逃げるわけではなく出ていくのだ。一応ルルカには挨拶していくか。んで〜〈魔法転送〉もかなりいいな。これからこの世界の仲間を増やしていくなら使えるはずだ。でもこの世界の人達どうやって魔法のスキルとかを習得してるんだ?ランクの上がり方も不明だし。と、そんな事はまだいいか。色々情報不足だけどこれから集めていけばいいし、このバグ現象を起こしているラスボスみたいなやつもその内誰かが倒して平和になるだろう。特にあの豪華ならルルカと結婚するために務めを果たすはず。俺は目立たずに過ごすのが一番だ。


「マスター着終わった」

「お?」


 そんなことを考えていると、後ろからミズナの声が聞こえ、終わったと言ったので振り返ると、可愛いワンピースぽい白いミニスカの制服に黒いリボンが胸の真ん中に付いており、お腹には可愛いデザインの黒いベルトが付けられていた。そしてその上に羽織るように金の刺繍が入っているとても神々しい白いローブを着ている。靴は白色と金が入ったロングブーツで、そこから見える白のハイソックスが綺麗な太腿とマッチしている。頭には白神龍王(グウィバー)の角を模様した白いサークレットを付けており、右手にはミズナの頭から足のつま先まである白い杖を持っていた。その白い杖は、てっぺんに白神龍王(グウィバー)の形を模様したデザインが付けられており、両翼が左右に付いている。真ん中には輝く紫色の水晶がはめ込まれている。その姿はまるで女神とでも言っていいほどのレベルだ。


「どうマスター?」

「すげー似合ってるよ!」

「ん、照れる」


 アホ毛がまたぴょこぴょことしており、頬を染めて照れていた。嬉しそうているミズナを見て、褒めて良かったと隆介は思った。

 俺達3人が作ったアバターだけど、改めて思うことがある。作って良かったと。可愛い妹が出来たみたいだ。まだ他にも何人かアバターを3人で作ったけど今はミズナを召喚できて満足してるからまた今度でいいかな。戻ったら3人にミズナを紹介するか。血は繋がってないけど可愛い妹が出来たといったらきっとビックリするだろうな。逆に…これは言わないでおこう。寒気が!


「さてミズナ。ここから出よう…と言いたいところだけど出口が見当たらないな…」

「マスターあの瓦礫全部壊す?」

「できるの?」

「余裕」


 そう言うとミズナは瓦礫の方に歩いて行き、岩を軽く殴る。すると秒差で岩が粉々になり、そこにあった岩が跡形もなく消える。


「……」

「ない。マスター大体の場所分かる?」

「……」

「マスター?」

「ハァ!ご、ごめん!確か向こうだと思うけど間違ってたらごめんね」

「ん、了解」


 隆介が指で指した方にミズナは歩いて行き、再度拳で岩を軽く殴りつけると粉々になり、跡形もなく消えていった。

 自分で召喚しときながら思うけどミズナのあれヤバくない?軽く岩を殴っただけで粉砕するとか…。召喚の加護を付けてくれたとか言ってたけどまさかね…。けどこれだけは言える。ミズナを絶対に怒らせてはならないと。


「あった。これ?」

「お、おおう…それだよ…」

「良かった。マスターの役に立てた」


 ふふ、と微笑んで隆介の元まで戻って来る。

 自分達で作ったキャラだけどミズナが微笑むと物凄い可愛いな。他の男共が見たら一瞬で恋に落ちる。絶対。俺か?俺は〜内緒だ。


「本当に助かるよミズナ。ありがとな」

「ん」

「よし、そろそろスキル〈特殊変身〉!」


〈承知しました。隆介様の想像した特徴を反映させます〉


すると隆介の見た目が一瞬にして変わる。変わったところは黒い髪の毛の毛先に赤色のメッシュが入り、長さも前より少し伸びている。特に瞳の色を赤色にして、この世界に馴染むよう?にした。


「うん、これで多分俺だとわからんだろう。自身ないけど」

「マスター似合ってる」

「お、ありがとうな。行こっか」

「了解マスター」


2人は目の前に光っているワープポイントに入っていった。



次の次で第二章を始めようと思っております!ここまで読んで下さった方々ありがとうございます!

誤字等の報告も待ってます^^


次回も見てくださると嬉しいです!


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