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第三話 千年の変遷

「千年の時とは長いものだ。こんな場所に街はなかったはずだな。どれ折角の目覚めなのだ。少し寄り道していくとしようか」


 ヴァイスは宿敵との約束の地、ゾーイ山へ向かう道の途中で大きな街とぶつかった。

 街は大きな壁に囲われており、門を通り抜けなければゾーイ山に向かえない。

 門から街へ入ろうとすると、何やら声をかけられてしまった。


「ようこそ、王都ヴィンセールへ。ヴィンセールは初めてですか? 入場するには書類の記入と持ち物検査が必要になります」


 どうやら声をかけてきたのは人間の門番のようだ。

 人間たちが新たに作った街。

 ヴァイスは多少面倒に思いながらも穏便に話を進めていく。


 ヴァイスは紳士であり、不要な争いは好まない。

 ひたすら虐殺するもの、それは戦士ではなく狂信者であるのだから。

 礼儀には敬意を、無礼には暴力で。

 美学のない戦いなど粗悪な酒そのものであった。


「ふむ。いや私はこの辺りを知らなくてね。良ければ色々と教えてほしいのだが」


「そうでしたか。でしたらご説明しましょう。入場の書類とは言え簡単なものです」


 その門番が幸運だったのは、日頃の勤務態度が良かったからであろう。

 少しでも横暴な態度をとれば、ヴァイスの逆鱗に触れて街は焼き尽くされていたに違いない。

 人当たりの良い門番はヴァイスに親切に説明していく。


「この書類に滞在目的と滞在期間、そしてお名前を記入いただければ結構です。

 そして武器等の所持がないか身を改めさせて頂き、問題なければ入場できます。

 街の中でトラブルを起こせば、身の保証はできませんから、注意してくださいね」


「なるほど。ではこれで良いかな?」


 ヴァイスは滞在目的に観光、滞在期間を一週間程とした。

 手ぶらのヴァイスには持ち物検査も意味がない。


「えぇ、大丈夫です。それでは王都ヴィンセールを楽しんでください。貴方の良い日となりますように」


「あぁ、助かる。ところで聞きたいのだが、この辺りに歴史を学べる場所はあるかね?」


 ヴァイスは宿敵との約束の場所、ゾーイ山へ向かうまでに少し寄り道をしようと思っていた。

 千年も眠っていたのだ。その千年の間の変遷を学んでおくことは大変楽しい事に違いないと考えていた。


「でしたら、王都都立図書館が良いでしょう。図書館は無料で利用できます。観光地図も差し上げますね。どうぞごゆっくり」


 門番は腰に下げた袋の中から地図を取り出し渡してくれる。

 なるほど、観光地図のようであり色々な場所が書いてある。

 眠りから覚めた今、ヴァイスの強い興味の一つとして、千年の変化に一番興味を引かれたのである。

 ヴァイスは地図の通りに王都図書館へ向かう。


「こうしてみると人間族も発展したものよな。建物が良くなっている」


 ヴァイスは不死の怪物、ヴァンパイア。

 過去に見た人間族は脆弱で小さな集落を作り細々と生活していた。

 千年の歴史を経て、人間族も強く成長したという事であろう。


「くっくっく。千年前は見どころのある人間族の戦士もいたものだが、はてこの時代にもかのような勇者はいるのであろうか」


 ヴァイスは千年の変化を楽しみながら、図書館へ向かう。

 しばらくすると石造りの立派な建物を見つけた。そこには王都都立図書館と書いてある。

 ヴァイスは満足そうな顔をして、建物の中に入っていくのであった。


 都立図書館の中は非常に立派な建物であった。

 中は非常に広く、書棚と読書用スペースで埋まっている。


「知識を習得する、それも戦いの要素。知を得る事は、力を得ると道義だ。この膨大な書物! 人間たちはとても強くなっているのだな」


 ヴァイスは綺麗に整頓されている書物を見てニヤリと笑う。

 書棚には、カテゴリ分けされて資料が整理されているようだ。


 ヴァイスはカテゴリ「一般・歴史」の書棚へ向かい、歴史関連の本を手に取る。

 人間族の知恵の結晶、千年の知識を吸収していく。


「なるほど。人間族は千年間でとても栄えたのだな。もはや世界を支配しているようだ」


 ヴァイスが知る千年前の人間は一部を除いて非常にひ弱だった。

 魔物という知性を持たぬ怪物がおり、人間族を良く襲っていた。

 人間族と魔物の戦いは世界の歴史でもある。


「人間族は、高き城壁を築き武力を高めて、都の外へ魔物を駆逐したという訳か。確かに多くの人間たちは脆弱であったな」


 人間族は魔物にほとほと手を焼いていた。

 勇者や英雄と呼ばれる強力な戦士もいたが、少数であった。

 種族の命を守るため、武器の生産を高め高い壁を築き、文明を発達させていった。

 文明が発達すればするほど、良い武器、強い壁が出来上がったため、ドンドンと勢力を広げていったらしい。

 スラスラと本を読み解いていくヴァイス。

 次の本に手をかけようとしたところ、おもろしい題名を見つけた。


「ほう、これは‥‥。<<魔人「ドレアム・トルー」>>。まさか我が宿敵の名が記された本とは」


 ヴァイスは興味深くその本を開く。


 曰く魔人ドレアム・トルーは、世界を守った英雄である。

 500年前、この世界を災厄が襲った。

 それは異界からの訪問者であり、世界を滅ぼそうとしていた。

 しかし魔人ドレアムが現れ、その訪問者と想像を絶する戦いの末、相打ちとなった。

 我々の祖先は魔人ドレアムに感謝の意を捧げ、墓標とすべくこの街ヴィンセールを建国した。

 魔人ドレアムは彼の遺言によりゾーイ山の山頂に葬られ、今でも我が都を見守ってくださっている。


「ドレアムが…死んだだと!?」


 ヴァイスは目の前が真っ暗になった。

 わなわなと震えながら、呼吸を落ち着けるヴァイス。


「急いでゾーイ山へ向かわなければ」


 ヴァイスは、本の内容を信じたくなかった。

 宿敵が自分以外に命をくれてやるとも思わない。


 図書館を出発し、足早とゾーイ山へ向かう。

 王都ヴィンセールのすぐ傍であり、山頂には本日中に到着できるだろう。


 山道を登り、山頂へと到着したヴァイス。

 そこには、墓が立っており、「魔人ドレアム・トルー。ここに眠る」と記されていた。


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