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第二話 千年の寝起き

 ヴァイスは、千年ぶりに外の世界を見た。

 長く眠り住居としていた山、そこの地中深くで静かに眠っていた。

 外に出ると、新鮮な空気と頬を優しく撫でる風を感じる。


「千年ぶりだな。これは懐かしい」


 山の中腹から出たヴァイスは、周囲を見渡す。木々や地形等は変わっておらず、山林のままであった。

 千年の時を感じさせない、まるで昨日の様な風景である。


 チチチチ、とセミの鳴き声が山林に響き渡り、日光が強く差し込んでいる。

 一般的にはヴァンパイア族は日光に弱く、夜に活動するもの。

 しかしヴァイスは最強のヴァンパイア、種族としての弱点は全て克服していた。


「ははは、なるほど。千年も眠れば何気ないものも懐かしく感じるものよ。これは貴様との戦いもより楽しめそうなものだ」


 ヴァイスはゆっくりと歩をすすめ、山林を避けながら道を下っていく。

 ゾーイ山はヴァイスが寝ていた山の隣にあり、平地を少し歩くだけで到着できる場所である。

 しかし山林の様子がおかしい。どうやら魔物が道をふさいでいるようだ。


「ふむ、影狼(かげろう)か。雑魚に用はない。そこをどきたまえ」


「グルルルル」


 道を塞ぐように陣取っている影狼の群れ。

 影狼は体調2m程の大型の獣型の魔物である。

 それは獰猛であり、人類等簡単に食って殺せてしまうだろう。


 10匹程が群れて、愚かにもヴァイスを威嚇している。


「まぁ寝起きの運動には丁度よかろう。余興となればよいのだが」


「ぎゃおおおおおおおおお」


 影狼達は群れて、その獰猛な眼光を光らせながらヴァイスに襲いかかる。

 あるものはその牙で、あるものはその爪で、あるものはその体自身で。


「くっくっく。無駄というものよ。ふんっ!」


 影狼達の攻撃は全て、ヴァイスに直撃したようにみえた。

 影狼達の牙と爪は、ヴァイスの体に食い込み、その命を絶命させるはずだった。

 しかし、その牙と爪は全てヴァイスの体に届くことなく、弾かれてしまっていた。

 ヴァイスの体は、まるで強固な鎧を纏った騎士のようだ。



「ヴァンパイアオーラ。私の体を守る鎧だ。雑魚の牙等通らんよ」


「グ!? グルルルル!?」


 ヴァイスの体を透明なオーラが覆っており、影狼達の牙は全てそのオーラに阻まれていた。

 影狼達は彼らの攻撃がまったく効果がない事を理解し、驚き喚いているようだ。

 またヴァイスの強者のオーラに身がすくみ、戦意を失い、逃げ始める影狼までいる。


「ふん、雑魚が。戦を挑むもすぐに戦意を喪失し、逃げようとするとは。私は戦士には敬意を払うが雑魚に興味はない。死に失せろ」


 ヴァイスは、一番離れた場所にいる影狼に対して、10mはあるであろう間合いを一瞬で詰める。

 虚を突かれた影狼は威嚇の行動をとろうとするがもう遅い。

 ヴァイスの手刀が、影狼の首を落とした。

 影狼の群れは悟った事だろう。もはや逃げられない。この群れの命運はここまでなのだと。


 ヴァイスは全ての影狼達へ距離を詰めては、影狼の命を狩りとる。

 一分にも満たない間の出来事であり、影狼達の亡骸が乱雑に捨てられていた。


「ふん、他愛もない。所詮は雑魚か。肩慣らしにもならぬな。強さとは意思の力。ただの野良犬に意思は存在せぬか」


 宿敵との戦いに比べれば、愚劣極まりない戦いだ。

 ヴァイスは少しの寂しさを覚え、歩を進めていく。

 比べものにならぬであろうドレアムとの戦いが楽しみである。


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