第一話 目覚め
初投稿です。
「丁度、千年を眠っていたようだな」
男が目を覚ましたのは地底奥深くの部屋。
静かに眠るために用意した隠れ家である。
男の名はヴァイス・シュークリア。
背丈180cmはあり、筋肉質で引き締まった体躯。
精悍な顔つきでありながら、その眼は冷徹な程に冷たい。
「さぁドレアム・トルーとの約束を果たさねばならぬ。そうでなければ千年も眠った甲斐がないというものだ。フフフ」
ドレアム・トルー。
ヴァイスはかつての宿敵を思い出す。
それは幾度となく最強を争い続けた男の名である。
「貴様は私に値する唯一の男だった」
最強を求め、その頂に立った二人の戦士。
互いの実力を認め合い、それが誇らしくもあった。
「千年前の戦いは引き分けだ。1000戦1000分け。丁度1000回引き分けたあの日、貴様は千年後に再戦しようと提案した」
ヴァイスは目を細め、千年前の戦いに思いを馳せた。
◇
ある山頂で二人の戦士が横たわっていた。
「ヴァイスよ、丁度千回にわたるこの戦い、今回こそは我の勝ちだな?」
「何を言っている、ドレアム。貴様も動けないように見えるが」
二人の戦士は精魂尽き果てていた。出せる力・技・信念。
すべてを出し切って、最早動く力すらもなかった。
引き分けである。
「なぁ、ヴァイスよ。我はずっとお前を認めていたんだ。我こそが最強だと信じていたが、お前もまた最強だった」
「ドレアムよ、私の相手が務まるのは貴様ぐらいなものだ。私も認めている」
「あぁ、千度も拳を交わしたんだ。しかし、このままでは決着もつかぬ。それはやはり望まぬところだ。そこで千年後にもう一度再戦しようじゃないか。我々も時代と共に変わっているだろう。そして決着をつけるのだ。我が友よ」
「ドレアムよ。極上の料理も食べ続けると飽きるというもの。戦に乾き、千年後に満たすというのも一興かもしれぬ」
「ならば千年後。またこの場所。ゾーイ山の山頂にて戦おうではないか」
「いいだろう」
二人の戦士は笑いながら約束を交わす。
強き戦士は多くを語る必要はない。意思疎通に言葉など最低限で良い。
二人はいつしかと離れ、千年を待ち続ける事とした。
◇
「クックック。貴様との戦い、血が滾るわ。私を満足させてくれたまえよ、ドレアム」
くつくつと笑いながら、ヴァイスは宿敵との戦いに思いを馳せた。
千年を眠ったのは、幾度となく繰り返され蓄積された戦いの傷を癒すため。
もはやヴァイスの体からダメージは抜けきり、絶好の体調である。
「さて、まずは気だるい体を動かすとしよう」
ヴァイスはその剛腕を地底の壁に叩き付ける。
壁は崩れ、外への出口が現れた。
ヴァイスは静かに眠っていた寝床を離れ、崩れた出口から旅立った。