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目的3

強敵出現回です


書き足ししました。

「うぁぁぁ」


 悲鳴じみた雄叫びをあげ彼の元へ向かうゾンビたち。


 サバイバルナイフを両手に持ち、片方の一振りをゾンビに与える。


 リーチは十二センチほど。その長さで到底、多数のゾンビを殺すことなど不可能だった。


 だがそれを補うために少し集中し、計八本の包丁を指の間に出現させた。


「……貫通」


 今まで使わなかったスキル、貫通を使用した。


 包丁は青白い光を帯び、それを見た洋平はゾンビに投擲した。


 不意にズドンと音が響く。


 包丁を投げただけではならない音。そしてその方向を見て驚く。


 壁に大きな窪みができ突き刺さっていた。その進行方向にいたゾンビは首に大穴が開き、息絶えている。


 包丁の回収のために数本投げつけた、窪みの方へ向かう。


 包丁に変化はない。投げて数秒後にスキルが切れて刺さったのだ、と洋平は推測した。


 となればそのまま持ったままだったなら、洋平は背筋を凍らせた。


 ステータスが低い分だけ強いスキル。コンクリート式の壁すら豆腐のように砕く。


「まだ、来るよな」


 呻き声をあげてよだれを垂らすゾンビたち。


 洋平は試しに手に貫通をかけてみたが無理であった。


 仕方なくサバイバルナイフに貫通をかけ、斬撃でも貫通力も強化した。


 目の前に迫ったゾンビは、洋平の白い肌に噛み付こうとした。


 一瞬、首が落ちるにはそれで足りた。


 ゾンビ自体に感情はないようで驚くことなどはなかったが、インターバルが少し空く。


 シュンと風切り音が響き山菜ナイフで数体が死に、反対方向のゾンビは包丁で殺された。


 刹那、なにかがガサリと動く。


 ゾンビ以外いない空間だったはずだ。


 そんな空間に敵がエンカウントした。


 初めて見た、敵が何もないところから出現するところであった。


 異形、それ以外の感想が出ない見た目を持つその存在。ゾンビと変わらず細く青白い顔でありながら、二メートルちょいはあるその風格は威圧感のみを発生させる。


 そしてそのアンバランスさが恐怖をもたらしていた。


「……集合体……なのか」


 ゾンビの集合体、そんな見解が一番妥当なのかもしれない。


 そう思いながら洋平はサバイバルナイフを構えた。


 貫通を使えば楽に、

 そんな考えは儚く消え去った。


「ぐるうぁぁぁ」


 雄叫びをあげたそいつは、その体躯に見合わぬ速さで懐に潜り込む。


 ザシュッ、腹が切れた。


 血が噴出しそいつは好物の笑みを浮かべる。噴き出した血液が顔にかかり、それを長い舌で舐めまわした。


 一方で洋平はというと、

(やっば……)

 視線端のステータスのHPは12。もう死にかけであった。


 治癒能力向上によって腹の傷は少し塞がっていたが、それでも消費は大きい。大きな動きはできず、それでいて自身よりも速い速度。


 リーチの短い武器。


(あっこれ詰んだ……)


 そんなことを考えた時だった。


 敵の行動が一時止まる。


 巨体を動かすために、インターバルが必要だったのだろう。


 洋平はその隙を見逃さず、包丁を取り出し突き出した。


 ゾンビの胸に大穴が空く。だが空いた場所が悪かった。


 首を切らなければゾンビを即死させることはできない。そのためそいつは怒り雄叫びをあげる。


 肌に声が突き刺さり毛が逆立つ。


 ゾンビの集合体は駄々をこねる子どものように、じたばたと暴れ手を突き出した。


 洋平が感じた初めてのドス黒い死。


 手をこまねきし背後からの悪寒を感じさせる。首にまとわりつくような恐怖という、首を締め付ける両手。


(死ぬのか……唯の顔も見れないままで)


 そのドス黒いなにかの先にある、ツインテールの少女。


 何があっても「お兄ちゃん」と笑いかけ、自身を省みることのしなかった少女。


 母とは似ても似つかぬ、純粋無垢に育ってくれた大切な妹の顔。


 唯の顔が何パターンも浮かび、洋平は頬を引き締めた。


(お前が守りたいものはなんだ?)


 自分自身に問いた言葉。


(そう簡単に死んでもいい人たちか?)


 笑う彼女たち、見下げてくる大人たち。


(違う、あいつらは死んではいけない)


 そんな自問自答に意味はあるのか。


 でも洋平はそれを止めることはない。


(俺があいつらを守らないと)


 唯も光も、唯一の友だちである陽真でさえ。


(俺は……)


 洋平は力の出ない震える足に最後の力を振り絞った。


(……死ねない! 俺はまだ死ねない!)


 唯を安全な場所へ連れて行っていないから。

 光を迎えに行っていないから。

 陽真ともう一度、馬鹿話をしたいから。


 洋平はサバイバルナイフを強く握った。


 一瞬、洋平の体が発光した。


 それはまだ出現のしていなかったスキル。


 そして洋平に触れたゾンビの集合体は、爆散して数個の欠片となった。


 もぞもぞと動きまだ生きようと踠く。


 洋平は何も言わなかった。


 いや何も言えなかった。驚きのあまり口を開けたまま、惚けていたのだから。


「……はっ? えっ?」


 痛みを忘れてしまうほどの驚き。


 洋平が首を傾げる頃にはゾンビの集合体は息を引き取っていた。


 そのまま触れてみる。


 吸収は成功したようで洋平は笑った。


 意図せずに得たスキルのことも、その喜びの中には含まれていたのだろう。




 ____________________

 カナクラヨウヘイ

 レベル11

 HP12/980

 MP380

 攻撃250

 防御150

 速度220

 スキル 貫通、吸収、放出、棒術、感染無効、治癒能力向上、影魔法、身体強化

 ____________________




 放出。それが洋平の新たに得たスキルであった。

次回、ホームセンターを出ると思うのでよろしくお願いします。

放出のデメリットとかも次回書くので。百%強いスキルではないです。制約ありありです。


ブックマークや評価よろしくお願いします。

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