表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

目的2

 それは先程殺したばかりのゾンビである。


 よく見れば女性のゾンビの服はとても乱れている。


 少し大きめの乳房が顕となり、ゾンビということを知らされなければ、彼は前かがみになっていたかもしれない。


 まあ、このような状況でそんな余裕もないが。


 触れてすぐに吸収する。


 ゴブリンと同様に体に消え、彼はどうかと目を細めた。


 遅ければ死ぬ、そう思い、ただその時を待った。


 一瞬、彼の体を激痛が走る。


 その後は鈍い痛みが続き、体内で血液が流れていることを感じていた。


 どこかになにかを運んでいる。


 そんな感覚を得ながら、痛みを我慢しながら彼は待った。


 一分ほど経った時だ。


 彼は体から痛みが消えたことを確認して、ステータスを開いた。




 ____________________

 カナクラヨウヘイ

 レベル3

 HP5/840

 MP120

 攻撃60

 防御60

 速度120

 スキル 貫通、吸収、??、棒術、感染無効、治癒能力向上

 ____________________




 残ったHPは5であった。


 彼はそれを見て冷や汗を流す。


(後、一秒遅かったら、死んでたな)


 確かに彼は体の倦怠さを感じていた。


 風邪のようなものではなく、強烈な死を感じさせる怠さ。


 汗が止まらない。あいにくと回復できる道具もない。というかそんな道具が現実的にないだろう。


(……治癒能力向上がどんな能力か、だな)


 先程彼が得たスキルである。


 それに託してみようと彼はもう一度、入口に向かった。


 壁に手を付き物を落とさないようにゆっくりとだ。だがそれは間違っていなかった。


 不意に消えたゾンビの物音。


 彼の鼓動を早めるには十分な材料であった。


 早鐘、いや定期的に打ち込まれる鍛金の方が理解しやすい。


 刀を作る際の金属を伸ばすために叩くこと。そんな金切り音のような甲高さを彼は感じていた。


 そんな状況下で安心はできない。


(せめてトイレだ。そこに篭れればいくらか休める)


 実際、個室に入ればいくらかは楽だろう。


 そう楽観視していたのだが、入口付近のトイレの戸を開ける。


 いた、ゾンビが二体。


 気付かれないように彼は包丁を取り出して投擲する。見事、脳天を貫きゾンビ二体をぶちのめし、その投擲に見合う速度で首を切り落とした。


 最後の力を振り絞った、そんな言葉が一番適しているだろう。


 そのまま流れる動きで個室の戸を開ける。


 何もない、ただの洋式トイレに入り鍵を閉める。


 少し休む、少しだけ。


 そうして彼は瞳を閉じた。


 音も出すことのないままでトイレに篭ったため、ゾンビが気付くこともなかった。


 二時間ほど寝ていた彼は、ようやく目を覚ます。


(傷は……ないな。HPも四分の三までは回復した。……さて、どうするか)


 冴えきらない頭を回転させながら、この後のことを考えた。


 この後、起こるとすれば誰かを助けることだ。陽真や唯、最悪でも光は助ける。そうなった時、テントのような外で寝れる道具はあった方がいい。


 火をつけることもそうだ。


 実際、火をつけれる魔法を持つものなんて、彼は見ていない。


 いや、いるとすれば口頭で火魔法を持っていると言った木島だけだ。


 まさか人を殺すわけにもいくまい。


 彼はそんなことを考えている時に一つの疑問を持った。


(そういえば、ゾンビを殺すことに抵抗はないな)


 少し青白いだけの奇声をあげる人間である。


 そんなゾンビを殺して、人間を殺したという既視感を彼は抱いていない。


 良くも悪くも殺さなければ生き残れないからだろうか。


(いや……違う。俺の中ではゲームと変わらないんだ)


 親にいいように扱われ自立すらままならない状態へ追い込まれていた元の状況。


 だが今はどうだ。


 彼は今、立派に自立しているじゃないか。


 彼を馬鹿にしてきた親は死んだかもしれない。


 そんな期待すら彼は抱いているのだ。


(……ゾンビならすぐに殺してやるよ)


 そんな深く淀んだ気持ちを、より深海へと沈めながらナイフを手に取る。


 一日でよく馴染んだものであるが、武器としての切れ味は微妙である。


 山菜ナイフはさすがに切れ味はいくらかあるものの、もう欠け始めてきており、逆に投げただけのコンビニ包丁はというと。


 やはりコンビニの包丁とあって、研ぐことを前提にされているものだ。よい攻撃方法への転嫁はできない。


 サバイバルナイフは必須かもしれない。


 そう思って彼はトイレを出る。


 スターターピストルを五個吸収して、一つを火薬をセットしてから手に持つ。


 火薬も置かれてるもの全てを吸収したため、かなりの量をホームセンターで手に入れたということになる。


 唯と陽真と光。この三人がいれば彼はこんな場所をすぐ後にするだろう。


 山の中に入ればいくらかは生きていけるだろう。それとも海に行こうか、船を奪って外海に出る。


 そんなことを考え最後に、

(……好かれるってのは最悪なことだな)

 光を大切だと思い始めてきた自分を嘲笑した。


 その間にサバイバルナイフの置かれた場所に着く。


 ショーケースの中に入った、一本六万八千円の高いものだ。それを二本手に持ち、皮の鞘をベルトに通す。


 これで武器は四つだ。最悪、折れても次がある。


 だが開け方が悪かった。


 仕方ないのでショーケースを破壊して中身をとったのだ。予備として安いナイフも手に入ったので、いい結果に終わるはずだ。

 武器の面では、と付くが。


 兎にも角にも彼の元に集まるゾンビたち。


「まあ……仕方ないよな」


 山菜ナイフを腰に戻し、サバイバルナイフに持ち変える。


 その隙に近くまで来ていたゾンビが走ってくるのだが、

「うるさい」

 山菜ナイフの投擲に沈んだ。


 脳天への直撃は殺しきることはできなかったものの、沈めることには成功した。


 次いで迫ってくるゾンビ十何体。


 でも彼は負ける気なんて、さらさらなかった。


「来いよ!」


 彼はサバイバルナイフを強く握り、ゾンビたちに突き出した。

戦闘シーンは書くかどうか悩んでいます。

文字数稼ぎにはちょうどい……(ゴホン)……いえ、なんでもありませんよ。


唯と陽真の行方は時期に書かれます。光は一章ラストら辺ですかね。


ブックマークや評価よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ