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悪夢から始まるハザード〜夜明けを待つ〜

少し変なところで終わってます。ご注意ください。

「葛城さん、本当にそう思ってます? 今、みんなを守りながらここを出ることは不可能に近いです」


 賢治の言葉によって葛城は「わかってる」と答えた。沈黙が数秒間流れ葛城は再度口を開く。


「ただそれも視野に入れておけってことだ。取捨選択をミスすれば全員が命を落とすことになる」


「それならなんであんなやつを連れてきたんだよ!」

「遼くんの言う通りよ! 食料も少ないのに」


 葛城の言葉によってその場にいたカップルのような存在が大声を出す。


「……そうやって場の理解も出来ない奴らよりはこの二人の方がいいと思うんだけどな」


 フッとそのカップルを嘲笑うかのように賢治は笑った。「てめえ」と襟首を掴もうとする男を見て、葛城は即座に制止の手を入れる。


「そんなことも言ってられない。……なにか今、すべきことなんてあるかな?」


「自己紹介なんてどうでしょう」


 葛城の言葉に一人の戯けた生徒がそう答えた。ニコニコと笑顔を絶やさず、それはその場にあっていないことは明白だ。


「それなら、私の名前は葛城だ。現在は警備隊に属されているが、いくらかの戦闘訓練は受けていたため足は引っ張らん」


 葛城は胸を張りそう言った。


「私の名前は空木だ。一応、この二人よりは序列は上になるかな」


 カッカッカッと笑う空木は軽く葛城に叩かれた。


「俺の名前は賢治。一番の若輩者です」


 賢治は頭を掻きながら先輩二人の言葉に合わせるように言った。


「俺は束原長部だ。一応教師をしてる」


 長部は洋平と光の側を離れずカップルの二名を睨んでいた。


「俺は金倉洋平です。この学校の生徒です」


 彼はそう簡単に答えた。


「僕は綾女光。洋平のお嫁さんです」


 そんな変なことを言う光、そしてそれで何かを吹き出した洋平。主に魂の片割れがその時噴出したのだろう。


 気恥ずかしさから顔を覆い始めたため、洋平の目にはクネクネと動く光の顔など目に映っていなかった。


「……俺は木島遼。隣のこいつは蓮井遥だ」


 カップルの男はそう言って無愛想に俯いた。


「次は僕ですね、僕は此瀬宏太。呼び名はどうでもいいですよ」


 おどけた少年はそう言ってニコリと微笑む。どこか狂気じみたその笑顔に、洋平は一瞬だけ背中を凍らせた。


 その笑顔はまるで本能で何かを殺す、ゾンビと変わらぬ本質が秘められていたから。


 そして逆に宏太は洋平を見てニヤリと笑った。一瞬の事だったので気付けたのは洋平のみだろう。


「んで、ここの説明だが。まあ見てもらってわかる通り、生存者がこれだけってことはない。俺ら警備隊は何グループかに分かれている。別グループにも生存者はいるらしいからあまり気にするな」


 葛城は先程とは異なり笑顔を浮かべながらそう言った。


 物騒なことを言ったり、生かそうとしたり大変だな、と洋平は思う。


「次いで食糧のことだが、賢治が持ってきたのを含めると一週間は持つだろう。ただし一番の問題は水だ」

「……そうですね。外ではないので水の確保となれば下へ行かなければ行けませんし。それに外へ出たら久我さんを殺した敵がいるかもしれませんし」


 小さく賢治は震えた。

 恐怖からか怒りからなのか、詳しいことは洋平にはわからなかった。だが賢治が外へ出ることに反対なのは、見ただけでわかるだろう。


「わからなくはないが、さっきも言ったがジリ貧だぞ」

「……はい、知ってます。でも明日明後日になれば救援が来るかも知れません。それを待つのも手かと」


 小さく空木と葛城はため息をついた。

 対して賢治は俯きその顔を見ようとはしない。


 一つの地面に置かれたペットボトルを持ち上げ、周囲に見せつけるように回った。


「人が水無しで生きるとすれば、約三日だ。これが生きれる日にちとされている。ましてや食料もほとんどが乾パン、よくて缶詰はあるが到底、それはできないだろう」

「……賢治、久我の気持ちを組みたいのはわかるが時と場所を考えろ」


 空木の言葉に賢治ははっと頭をあげる。


「なんでわかったか、なんて言いたいのかもしれない。お前の顔を見ればわかるさ」


「……すいません」


 賢治はただ頭を下げ謝罪した。

 葛城は鋭い目をしながら口を開く。


「命の重さは確かに重い。だが一人で背負おうとしていたら、誰も守れねえぞ。少しは考えろ、言いたくねえが必要な犠牲ってもんもあるんだ」


 ぶっきらぼうにそう言いながら葛城は俯いた。

 誰もその時の葛城の表情など見れなかっただろう。苦々しげに上唇を噛む表情など。


「はい、重い空気は終いだ。ここら辺は私たちが頑張るしかないだろう。それに賢治の言う通り明日救援が来るかもしれないからな」


 三人だけの空気を制したのは空木だった。

 周囲の五人はポカーンとしているだけで中に入れるわけもない。


「まず今日起きたことだ。ここにいた者たちは疲れているだろう。毛布などがなくて申し訳ないがここで寝てもらって構わない。私たちがここを守護すると誓おう」


 空木はそう言って洋平たちを宥めた。


 一番に行動したのは長部だった。


「なら、遠慮なく寝かせてもらおう。疲れていたんだ」


 厳ついスキンヘッドの笑顔は周りを凍りつかせた。

 だが警備隊の三人の気持ちを慮ってのことだろう。三人は口には出さずとも心の中で感謝した。


 そしてそれを聞いて行動を起こしたのは洋平であった。


 長部の近くに横になり寝ころがる。それを見てから腕に抱きつき「おやすみ」と言う光。


 そのまま洋平は二人に「おやすみなさい」と言ってから光を抱きしめた。


 光の香りが洋平の心を安心させ、寝付くまでにそう時間はかからなかった。


 洋平が寝付いてすぐカップルも横になる。


 距離を取り抱き合いながら寝よう寝ようと瞳を閉じた。


 だが寝付くことはできない。警備隊が守っているとはいえ、いつ襲われるかわからなかったから。


 ましてや木島が抱いていた不安は此瀬のことである。


 自身の愛しい遥が襲われないか、それをやりそうなものは限られていた。


 いつまでも本心が見えない此瀬。

 洋平以上にいけ好かない相手であった。


 それでもその器の大きさを感じ、殺すことはできない。

 そんな疑念によって遥を寝かせた後も木島は眠ることはなかった。


◇◇◇


 夜明け。


 それは新しい地獄である。


 昨夜の疲れもあまり取れないままに木島は体を起こした。


 目の下に隈を作り体はギシギシと軋む。


 陽が目にあたり眼球を焼くが、木島にとってはどうでもよかった。


 一つ大きな欠伸をする。

 それに呼応したかのように入口付近の一人が声をかけた。


「起きたのか、それとも眠れなかったのか?」


 誰であろう葛城である。


 葛城は木島と自分を重ねていた。若き頃の自分に。


 それは彼が守れなかった大切な人にあるだろう。


 彼は元軍人であり氷の将軍という意味で氷軍と呼ばれていた。


 戦争で失くした大切な人、そんな気持ちを味合わせないために木島を助けたかった。


 もちろん、大切な人のいる洋平のことも助けたいのだが、自分に一番似ていたのは木島である。


 優先順位を付け行動を起こす氷軍は、木島と蓮井を助けようと考えていた。


 そしてそんな木島は寝ていなかった。

 戦場ではそんな行動は死を招く。だからこそ小声で木島に言葉をかけた。


「すいません、此瀬が」

「……わからなくはないが、寝ないと判断を鈍らせる」


 それは実体験だったのだろうか、とても信憑性があった。

次回、悪夢から始まるハザード〜力無き者〜です。ステータスも出ます。

いつ更新になるかは未定ですが……。


因みに葛城さんはとてもいい人なんですよ。テンプレでいうところの悪いこと言って他人から嫌われる、根はいい人枠です(笑)


これからもよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。

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