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逃亡戦

 ぽんぽんとポケットを叩く彼は携帯などがそこにあることを確認する。

 それを担任が見ていたが気にした様子もない。当たり前だ、外に出していじっていたわけではないのだから。

 彼は二年生、つまりは三年生の入場が済んでから舞台となる体育館に入場することになる。

 三年生の入場が済んだことを教える放送が流れ男の担任の声が響く。それを合図に、まるで軍隊のように椅子を持ち行進を始めた。

 先に椅子の位置を確認していた三年生の女性のすぐ近くに椅子を配置して座る。

 そんな簡単な行動を終わらせた彼らは一年生が入場するのを待った。彼の隣の光は少しうるさくしていたがそれでも微々たるものだ。教師には聞こえていない。

「全員の着席を確認しました。これより全校朝会を始めたいと思います」

 長部の言葉がマイク越しに広くもない体育館に響き、少し年をとった老齢の校長が壇上に上がる。年からか上る速度は遅く数度転けそうになる。階段は十段もないためそのようになることは普通はないのだが。

 壇上のマイクの一歩手前で立ち止まり前に出て頭を下げる。それを見た彼らは座りながら頭を下げ二秒ほどで上げる。

「最近、日差しが強くなりーー」

 校長の長い話が始まり彼らは教師に見つからないように欠伸をした。三分程度経ってようやく半分と言ったところか。

 そんな時、数人の生徒がざわざわと騒ぎ始める。「なんか静かになること多くないか」とか「行動がない時がある」などだ。

 それを鎮めるために彼の担任が壇上に上がった。校長の肩を叩き、「大丈夫ですか?」と聞いた瞬間だ。

 担任の肩に置いていた手が食べられた。それも根元から食べられ手首から出血を起こしている。

 校長はその手を口いっぱいに頬張り担任を睨んだ。恐怖で動けない担任を横目に彼は即座に行動に移した。気を保っていられたのは彼だけだったからだろう。そのような状況で正気を保っていられる人自体が稀有なのだから。

「みんな早く逃げろ!」

 彼の言葉を合図にして正気に戻った長部のマイク越しの逃げろの言葉。足が竦むものは教師に担がれ走れるものは走った。

 だが体育館から出た彼らを待っていたものは地獄だった。一階にいるはずの養護教諭の「ああ」と野太く響く声。そして最前列で逃げ出した生徒の悲鳴。

 あるものは担任と同じく片手を失くし、あるものは喉元から食われて動かなくなっていた。そしてそうして死んでしまったものは同じように行動を始める。

「ゾンビ……だ」

 誰かの悲鳴混じりの声を聞いた彼は確かにと頭の中で思う。体育館は三階にあるのだが窓の下は坂となっており高さは余りない。

 彼は近くにいた光の手を取り窓を開け飛び降りる。降りる際に光をお姫様抱っこの形をとって担ぎ地に足を付ける。彼は光を下ろしてから走り出した。といっても彼が学校の近くから逃げることは出来ないのを理解しているからか、生徒玄関の方に向かう。

 なぜ逃げられないか。それは彼らの目の前に校舎の門をズドンズドンと叩く豚顔の何かがいたからだ。身長は2メートルを優に超えておりその豚顔の存在は片手に警備の教師を持ちズシャリとそれを潰した。

 まるで豆腐を潰したようにグシャリと簡単に潰れたそれを豚はそのまま捕食する。ボリボリと響くその音は彼らを動けなくさせるほどの恐怖を与えるにはちょうど良かった。

 そして数十秒でそれを食べきった豚は彼を見るなり新たな獲物を見つけたように舌なめずりをした。ダラダラと流れるヨダレは地に落ち汚くさせていく。

 彼はその時には動けていた。しかし光は動けない。ただ「助けて」とボヤくだけでなにも出来ない。

 彼はまた大きなため息を吐いた。これが知らない人なら捨て置くことは出来たかもしれないが彼女は彼を好きな一人の女の子。

「おら、こっちだボケ」

 彼は足元に落ちていた石を数個拾って豚に投げつける。この時、豚は光を洋平の影にいた事で見つけていなかったことだ。

 彼の逃げた方向は二つある校舎のうちの一つ、中学と高校が合わさった私立高である学校の中学の方である。

 それは彼が中学の方で悲鳴の一つも聞こえなかったというのは理由にならないかもしれない。光を助けるために無我夢中で走った方向が中学の方だった。

 豚は洋平の後を追いかけて中学の扉の前までそれは続く。鍵の空いていた扉を開けて豚を中学の中に引き込んだ彼はそのまま階段を上った。

 階段自体になれていないためか、豚の追いかけてくる速度は遅い。彼は通路を周り反対側の階段を降りようとした時だった。

「ぎゃあああ」

 男の悲鳴がその校舎に響き彼の心臓を早く動かさせる。ドクンドクンとうるさく鳴り続ける胸に手を当てて、そのまま中学を出た。

 心の中では中学での生き残りに謝罪をしながら走り元いた場所に向かう。

 彼の目に飛び込んできたのはズリズリと片足を引きづりながらその場を離れようとする光だった。

 彼が助けてくれたことに嬉しいような悲しいような気持ちを抱えながらなんとか逃げようとする光。

 その姿を見た時に彼は助けたことは間違っていなかったのだと思った。もしこのまま彼女が死んでいたら彼は無駄死にをしていたかもしれない。そう考えれば当然のことだろう。

「光、撒いてきたよ」

 彼はそう言いながら光の片腕を肩にかけた。彼を見た時、光は少し驚いた顔をしたがすぐに抱きつき泣き始める。

 小さく嗚咽を漏らしながら「良かった」と言い続けた。一分程度で心の余裕が出来たのか光は一人で立つことが出来るようになった。それを気に彼は肩にかけていた手を離す。

 「ああ」と悲しげな悲鳴をあげた光を見て見ぬふりをした彼はすぐに逃げる場所を探した。学校から出ることは出来ないだろう。なぜなら豚のいなくなった今でもゾンビのような存在がウロウロとそこを動いている。

 彼は首を捻りながら仕方なく高校の校舎へと戻って行った。

まだまだステータスが出る予定はないです。一応拠点を作って、その舞台の次の日からステータスが導入される予定なので。


これからもよろしくお願いします。出来ればブックマークや評価等もよろしくお願いします。

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