表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

目的4

前話を書き足ししたのでそちらも読んでもらえると幸いです。

この話も書き足しをするかと。

「……放出か」


 名前からして吸収と対になるスキルだろう。


 となれば何かが放出してゾンビの集合体は死んだ。


 そんな予想を立てた洋平は、手を数度握ったり開いたりした。


 手の感触に変なところはない。


 何かを相手にぶつけたはずなのに反動がないのだ。


 スキルの使用によってHPが減った、なんてこともない。


「……無意識に……ダメージを吸収していたとかか? そして触れた相手にそれを与えた」


 ステータスからゾンビの集合体のHPは980だろう。


(……俺が今まで受けたダメージは、感染状態も含めれば1000は超える。それを放出したとなれば)


 あいにくとステータスを詳しく見るスキルを、洋平は持ち合わせていない。そしてそんな補助的なステータス説明もないのだ。


 彼は考えた結果、運が良かったということにした。スキル自体の使い方はだいたいわかったから。


 彼は黙ったままその場を後にした。


 トイレに向かい、また洋室トイレに座り込む。


 今更になって体が疲れを訴え始めたのだ。


 脂汗をかきHPの回復に努めようとする体の細胞たち。


 それに身を委ねるように、洋平はもう一度個室で瞳を閉じた。


 以前と同じ二時間ほどが経過して、また瞳を開ける洋平。


 既に脂汗はひき顔色も別段良くなった。


 むくりと倒れた体を起こし、変な体勢で寝ていたため体をバキバキと鳴らす。


 先の戦いでゾンビは殲滅済みなのか、トイレの外から音は聞こえない。


「にしても、なんであの場面でエンカウントしたのかな」


 そんな呟きとともに扉を開き外へ出た。


 ゾンビはいない、ましてやエンカウントもない。


「……まずは道具を揃えるか」


 洋平は考えることを止めた。


 考えるための素材が少なかったからである。


 それにまだ得ていない、もしくは回収しなければいけない武器もある。


 最初に包丁を回収し吸収した。初期と同じように山菜ナイフを腰に差し、片手にサバイバルナイフを持つ形式をとっている。


 あらかた投げた武器は回収し終え、必要な武器も得ている。


 次いでサバイバルナイフのあったコーナーに向かい、大きめの斧と小さめのものをあるだけ吸収した。


 重いものを多数吸収したからと言って体への変化はないようで、洋平はスキルに感謝する。


 テントと着火剤、ライター等の生き残るのに必要な物を吸収してから、自転車コーナーへ向かった。


 このホームセンターは変わっている。

 というのも自転車の組み立てが面倒、との理由で自転車のペダルが付いたままなのだ。


「……楽でいいんだけどな」


 一番高いママチャリに跨りサドルを合わせる。


 そのままいくつかのチェーンを手に取り吸収する。


 自転車をそのままにしてホームセンターの奥、作業員専用の場所へと足を運んだ。


(気になってはいたんだよな。お店の裏側って)


 洋平の鼓動は高まった。


 普段入ることのない、お店の裏側。


 物がたまり何段にも重なったダンボール。


(なんだ?)


 何か音が鳴った。


 がさりというダンボールで少し擦れた音。


 不意に暗闇がそこを包んだ。


 洋平は巻き込まれこそしなかったものの、その現象に目を剥く。


 目の前でダンボールが三つ、闇の中へと消えたのだ。厨二病のいう偽のものではなく、本当に現象として。


(敵か!)


 そう思い包丁を無意識に放出し、闇の中へと放った。


 もちろん、貫通がかかっていたため暗闇の中へ入ってもすぐには消えない。


「痛い! えっ、なんでなんで?」


 そんな甘い幼い声が暗闇から響いた。


 洋平は驚いたが確認のために、もう一度同じ行動をとる。


 次はザシュッと音が鳴った。


「ひぎゃあああ。えっなんで二発目? 普通一発撃ったら撃ったら終わりでしょ! この鬼畜!」


 そんな悲鳴混じりの声をあげたのは、小さな黒い光を帯びた少女。一言で表すなら妖精であった。


 お尻に大きな包丁が刺さっている、と付くが。


「……そっか」

「そうよ、って、構えないで! 次は死んでしまうわ」


 情けない声をあげながら洋平に情けをもらおうとする妖精。


 はあっとため息を吐いた後、その妖精を見た洋平は無意識に包丁を投げた。


「なんでっ? 今何もしてないじゃん!」

「なんかウザかった」


 妖精は「腹立つ!」と言いながら黒い円球を洋平に向けて飛ばした。


 洋平は「うわっ」と声をあげながら、それを全て躱した。


 妖精はそれを見て「なんでっ?」と悲鳴じみた声をあげたが、速度自体が遅かったので躱せないこともないだろう。


「なんで! 闇に関連する魔法の持ち主を見つけたと思ったのに!」

「そっか」


 小さく目を細めそう答えた。


「そうなの……って、その手はなんなのかな?」


 洋平は右手を出しており、その小さな妖精に触れようとしていた。


「いや、煩い小蠅がいるから倒しちゃおうかなって」


 それを聞くと妖精は「まあこんなに可愛い女の子を倒すだなんて」と、ハンカチのような正方形の黒いものを口で噛んだ。


 キーっとそれを伸ばしながら目を細める。


「無駄な三文芝居なんて見たくねえんだよな」


 洋平はそう呟いて妖精を掴んだ。


 吸収され消えていく妖精。


 小さく漏らした「えっ? えっ?」という言葉が滑稽である。


(まあ、こんな変なやつもい)

(変なやつって何よ! そりゃ驚いたわよ! でも残念、ニクスちゃんはそう簡単に死なないわよ!)


 何かが聞こえたかな、と洋平は無視してチャリを押して店を出た。

というわけで妖精ニクスの登場ですが、

次回から光サイドを書くので少しお付き合いを。


ブックマークや評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ