侯爵令嬢はお人好し
「君みたいに可愛いげのない女性とは結婚できない。
僕は真実の愛を見つけてしまったんだ!!
僕は君と違って可愛らしくて儚げで、
僕より背が小さいリリアナ姫様と結婚したいんだ!!
僕より背が高くて僕より強い君とは結婚したくないんだ!!
だから婚約を破棄してくれ!!」
15歳のアンジェリカの誕生パーティーで、
アンジェリカをバルコニーに呼び出したランジットはまぁまぁ大きい声でそう叫ぶとがばっと頭を下げた。
リリアナ姫とランジットの噂を聞いていたアンジェリカは
『二人で話がしたい』とランジットにバルコニーに連れてこられた時点で嫌な予感がしていたので、
ランジットに婚約破棄を言い渡されてもあまり驚きはしなかった。
『ひ、否定できない!!
確かにリリアナ姫様の方が私より百万倍可愛いらしいし儚げだ!!
てかまだこいつ背のことを気にしてたんかい!!!』
婚約破棄を言い渡されたアンジェリカの感想は正直大変可愛らしくなかった。
婚約当初はそのうち追い抜くだろうと思われていた身長差の問題はこの時点で解決していなかった。
ランジットも人並みに成長し、決して身長が低いわけではなかったが、
残念ながらアンジェリカも成長してしまった。
二人の身長差はあまり埋まらず、
アンジェリカはランジットより背が高いままだった。
アンジェリカからすれば、
『私の身長が縮む可能性より、
ランジットの身長が伸びる可能性の方が高いだろう!!』
といいたかったが、
毎日牛乳を飲んで頑張っていたランジットにそんなことは言えなかった。
「えーっと。
ランジット様、ランジット様の言い分はわかりました。
確かにおっしゃるとおりで、
なんとも否定できないというのが正直なところです。
しかし、私との婚約破棄は置いておいて、
リリアナ姫様と結婚したいというのは、
その~。
ちょっと難しいんでは?
ご両親とか、正妃様とかマリエッタ様の説得とか大丈夫です?
あとリリアナ姫様の方も??」
誕生日パーティーの日に婚約破棄を言い渡されたお人好しな侯爵令嬢はとりあえず自分のことは置いておいて、
相手の心配をしはじめた。