侯爵令嬢の憂鬱
ランジットと噂になっているリリアナ姫は側妃の3番目の娘であり、
アンジェリカやランジットと同じ年であった。
リリアナ姫は小柄で天使のように可愛らしく、
儚げでまさに『守ってあげたいお姫様』を絵にかいたような姫様だった。
令息達からは大層人気があったが、
令嬢達からは大層人気がなかった。
リリアナ姫にはめんどくさい癖があったためだ。
『人のものほどよく見える』
リリアナ姫は婚約者のいる令息にばかり声をかけ、次々にメロメロにしていた。
しかし、リリアナ姫は国王の末娘であったため、
国王を始め、皆リリアナに甘かったし、
リリアナ姫が悪いというか、
婚約者がいるのにリリアナ姫にうつつを抜かす男の方が非難されていた。
リリアナ姫は相手が自分に夢中になると冷めるようで、
令息達を虜にしては次の令息に目をつけてを繰り返していた。
『リリアナ姫の次の標的はランジットらしい』
いつ自分の婚約者に目をつけられるか戦々恐々としていた令嬢達はこの噂で沸き立った。
リリアナ姫の標的がアンジェリカの婚約者であることも理由だが、
何よりランジットは正妃の甥にあたり、
正妃はランジットを大変可愛がっており
自分の息子の王太子とランジットの年が近いこともあり、
『いずれはランジットを王太子の右腕に』と考えて、
王太子とランジットを親しくさせていることは周知の事実だった。
そのランジットと側妃の娘のリリアナが親しくしているというのが問題だった。
正妃と側妃の仲は最悪だったのだ。