侯爵令嬢の腹痛
簡単にいえば、
アンジェリカはさっぱりした性格で、
ランジットはおとなしくて生真面目な性格だった。
完全な政略的な婚約であり、
二人の間に情熱的な恋愛感情などはなかったが、
貴族の結婚なんてそんなものであったし、
二人は婚約してからそこそこ仲良くやっていた。
二人の関係に問題が生じたのは二人が14歳の時であった。
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「ランジット様がリリアナ姫様と楽しげに話してらっしゃいましたよ。」
「ランジット様がリリアナ姫様とご一緒に乗馬をされていましたよ。」
「ランジット様がリリアナ姫様に首飾りを贈られたと出入りの商人から聞きましたよ。」
さっぱりした性格で、中性的なアンジェリカは令嬢に人気があり、アンジェリカの交遊関係は広かった。
噂好きの令嬢達は最近アンジェリカの婚約者であるランジットが、
側妃の3番目の娘であるリリアナ姫と親しくしている情報をこぞってアンジェリカに伝えに来た。
令嬢達はアンジェリカを心配し、
アンジェリカという婚約者がいるくせにリリアナ姫様と親しげにするランジットに非難的だった。
そんな令嬢達からランジットとリリアナ姫様の話を聞いてもアンジェリカは冷静だった。
というかアンジェリカは昔から相手が加熱し始めると逆に冷めてくる質だった。
「まぁまぁ、ランジット様は正妃様の甥にあたりますし、
正妃様と側妃様の関係を案じて、
リリアナ姫様と交遊を図られているのかもしれないですし。
私は気にしていませんから。
でも皆さんに心配していただいていると思うと嬉しいですね。」
へらへらっと笑うアンジェリカを相手にしていると、
ランジットのことを告げ口しに来た令嬢達も毒気も抜けて、
最終的にはアンジェリカと楽しくお茶を楽しんで帰っていった。
「はぁ~~~~~~~~~~~
疲れた~~~~~~~~~」
アンジェリカはこの頃も周りの令嬢に比べて背が高く、
父親と三人の兄の剣の稽古に混じっているような男勝りで、
人は自分にないものを求めるのか、
アンジェリカは花のように可愛らしい令嬢達を見ているだけで
『癒されるわ~~~~』
と思っていたし、令嬢達の相手をするのは楽しかった。
可愛らしい令嬢の相手をするのは楽しいが、
話の内容はいただけない。
「はぁ~~~~~~~~~
しかしランジット様もよりによってリリアナ姫様とね~~~~~~~~~
はぁ~~~~~~~~~~~
なんだかお腹痛くなってきちゃった。。」
アンジェリカはランジットとリリアナ姫のことを考えると、
嫉妬に身を焦がすというより、
それぞれの人間関係を考えるだけでお腹が痛くなった。