表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

初戦闘

 「はぁ…はぁ…はぁ… 大丈夫か? ラカン…」

 

 「オン」

 

 「…さてどうしたもんか。此の侭だとマジでやばいぞ…」

 

 今、俺達は木の上にある太い枝に座っている。

 下を見下ろすと3匹の兎が木を登ろうとガシガシ幹を削っていた。

 俺たちを完全に餌として見ているようだ。


 …こんな所で死ぬわけにはいかない。

 絶対なんとかしてやる! せっかく転生したのにこんな所で死んでたまるか!

 

 「うぉぉぉぉ!」

 

 そう叫びながら、木から飛び降りながら、兎へ斬りかかるのだった。

 

 

 

 ―――2時間前。

 

 水魔法用のゴールドを稼ぐ為、

 草原地帯から少し離れた森の中へ探索にきていた。

 

 お金を得る手段の最適解を叡智の声に演算してもらい、

 でた結果が、魔物を倒してお金を得るというものだったのだ。

 

 魔物と戦うくらいなら、覚悟を決めて水を飲んだほうがいいのではないか

 と考えたが、今後もお金は絶対に必要になる。

 何より、池の側にいても魔物が近くにいるのならば、

 いずれは襲われるだろう。ならば、こちらから出向いて偵察をするほうが

 いいのではないかと考えた。

 実はスキルを早く使ってみたかっただけだったという話は内緒である。

 

 「そういえば、ラカン お前、戦えるのか?」

 

 「オンオン」

 

 「頼もしいな! でも無理しないでくれよ? 命が一番大事なんだから」

 

 ラカンも、スキルを使う時は、主人である俺の所持ゴールドを使って

 発動させるようだった。つまり、今はスキルが使えない状態なのである。

 

 「手軽な動物みたいなのがいればいいんだけどな…」

 

 ブツブツ言いながら、茂みをかき分け進んでいく。

 

 

 ―――ガサガサガサッ

 

 さっそく何かと遭遇したらしい。右手の茂みから音が聞こえた。

 

 「ラカン! 右手に何かいる!警戒しろッ!」

 

 音を立てないように茂みの影に隠れて監視の体制に入る。

 

 ―――ガサガサガサッ

 

 音はするが、一向に顔を見せる気配がない。

 音の大きさから、そこまで大きくない魔物のようだった。

 

 逃げられたくないよな・・・。

 そう考え、茂みから出て来るように、茂みの奥へ石を投げてみた。

 

 「キュィィッ!!!!!」

 

 うん…石が直撃したようだ。

 鈍臭すぎるだろ。魔物なら簡単に避けてくるものだと思っていた。

 

 そして、その魔物が茂みから顔を出した。

 兎型の魔物のようだ。大きさは全長50cmくらい。結構でかい。

 

 「なんとかなるかな?」

 

 そう呟きながら、

 七福神の効果である、【恵比寿天の瞳】を発動させる。

 

 --------------------------------------

 種族:玉兎(★)

 総資産:2000G

 所持金:500G

 スキル資産:2000G

 --------------------------------------

 

 初めて使ったが、対象の資産情報が見れるようだ。

 スキルが2000Gってことは、恐らく、スキルは1つか2つ。

 詳細な情報はわからないが、所持金500Gではそうそうスキルの連発も

 できないだろう。

 

 これはいけると判断し、近く落ちていた木の棒を拾って構えた。

 前世では、剣道で全国大会に出場したこともあった。

 青春時代を全て剣道の稽古に注いだといっても過言ではない。

 

 剣道は、競技である以上、ルールがあったが、今はルールはない。

 ダメージを与えることだけを考えるならば、基礎ができている分、

 応用することは可能だった。

 

 「キュイィィ!」

 

 こちらに気づいた玉兎は、歯を剥き出しにし、威嚇してくる。

 そして、頭を毛皮に隠し、ゴロゴロと転がりながらタックルをしかけてきた。

 

 「うぉッ 意外と早いなこいつ!」

 

 避けることには成功したが、ギリギリ。

 警戒を怠っていたら危なかったかもしれない。

 

 「この転がりはまさかスキルか…?」

 

 透かさず相手の資産を確認する。

 --------------------------------------

 種族:玉兎(★)

 総資産:2000G

 所持金:300G

 スキル資産:2000G

 --------------------------------------

 

 所持金が200G減っていた。

 やっぱりあの転がりは玉兎のスキルだったか。

 避けれたからよかったが、一度でもあの転がりを受けるとやばそうだ…。

 でも、あの程度速度なら―――

 

 「ラカン、こいつを引き付けれるか?

  隙きを突いて攻撃をしかける!!」

 

 「オンオン! グルルゥゥゥ…」

 

 ラカンが走り出し、相手の側面から

 玉兎を威嚇する。

 

 そして、玉兎に噛み付こうと攻撃を始めた。

 

 「キュィッ キュィッ!」

 

 ラカンの攻撃はギリギリの所で躱される。

 しかし、玉兎も余裕もなく、

 此方に構う余裕はなくなっているようだった。

 

 「うりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

 透かさずラカンが作った隙きをついて攻撃を仕掛ける。

 持っていた木の棒の長さから玉兎との間合いを見極め、

 綺麗な剣筋と、それに合わせた踏み込みで玉兎に斬りかかった。

 

 「キュアッ!?」

 

 ラカンに気を取られていた玉兎は反応できず、

 木の棒が直撃し、一瞬怯みを見せる。

 

 その隙きに何度も何度も木の棒で殴り、

 ダメージを与えていく。

 

 「キュイィィィィィーーーーーー!!!!」

 玉兎は顔を毛皮に隠し、丸くなりながら耐える。

 

 丸まっていた玉兎はダメージに耐え切れず、顔を出した。

 いけるか!? そう思ったその瞬間、

 玉兎は急に逆向きに体制を変え全力で転がりだした。

 

 「しまった!!」

 

 一定距離を開けられ、転がるを解除した玉兎は――

 

 「キュキュキュキュキュイーーーーーン」

 遠吠えを始めた。

 

 「なんかやばいぞ! ラカン!!」

 

 「オン!」

 

 透かさず、ラカンが走り出し、遠吠えをしている玉兎に突進する。

 

 ラカンの突進をモロに食らった玉兎は、吹き飛び、

 近くにあった木に直撃し、そのまま動かなくなった。

 

 《資産転換が行われました。1100Gを獲得しました。》

 

 どうやら玉兎を倒すことができたらしい。

 頭の中に叡智の声と同種の声が響いた。

 どうやらこの声は、[資産転換]が行われた際に聞こえる、

 [世界の声]というものらしい。誰にでも聞こえるものだそうだ。

 

 「やったぞ!!! ラカンおいで!」

 

 「オンオン!!」

 

 嬉しそうに尻尾を振り飛び込んでくる。

 

 これでやっと水魔法が使えるな!

 とりあえず一旦帰ろう。そう思っていると、

 何処からか、ドドドドドドという音が聞こえてきた。

 

 「ん? なんだこれ!」

 

 瞬時に警戒態勢に切り替える。

 すると草むらから3匹の玉兎が転がりながら飛び出してきた。

 

 そのまますごい速さで、突進してくる。

 

 ―――やばい、避けきれない…。

 

 そう思った瞬間、咄嗟にラカンを抱え、右側に全力で飛び、

 回避を試みる。

 

 ――ドコッォ

 

 「痛えぇぇぇ!」

 

 1匹の突進が背中に直撃してしまった。

 大きな木槌のハンマーで殴られたかのような

 感覚が背中を襲い、そのまま吹き飛ばされる。

 

 やばいやばいやばい!!!

 此の侭だと殺される!!

 

 なんとかしないと、逃げないと!

 思考より先に体が動いていた。

 

 必死に、飛ばされた先にあった木をよじ登る。

 背中は痛むがなんとか登りきれそうだった。

 

 座れそうな大きめの枝に辿りついた瞬間――

 

 ドーン!

 木が揺れた。

 

 3匹の玉兎が同時に転がりながら木にぶつかったのである。

 なんとか振り落とされないように持ちこたえ、枝に座って、

 下を見下ろした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ