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転生

 顔にじめっとした変な違和感がある。

 またいつものように誰かが悪戯しているのだろう。

 この程度、路上生活をしている以上、慣れたものである。

 気にもせずにまた眠りに就こうとしたその時―

 

 ガブッ。

 

 何かに顔を噛まれたのだ。

 

 「痛ッ!!!!????」

 

 吃驚して目を開けると、

 小さな子犬が自分の頬に噛みついていた。

 勢いで子犬を振り払うと、

 子犬はうるうるとした目で申し訳なさそうに此方を見つめていた。

 

 「ご、ごめん……」

 無性に申し訳ない気持ちになってしまった。

 

 いや、俺が悪いわけじゃないよな!?等と考えていると、

 突然頭の中に声が響いた。

 

 《ショートウルフと[0G]で契約可能です。

  契約を実行しますか? 》

 

 「は、はい!?」

 

 《...ショートウルフの了承を確認。

  これより契約を開始します。

 

  魂の回路の接続を実行。

 

  …契約が完了しました。

  

  契約完了に伴い、資産の統合が行われます。》

 

 「...」

 

 《ステータスの変更を確認。情報を表示します。》

 --------------------------------------

 名前: シン

 総資産: 1000G

 所持金: 1000G

 職業: 異世界人(★)

 

 <スキル>

 伝説級レジェンド

  【叡智の声 Lv--】

 特異級ユニーク

  【七福神の慈悲 Lv--】

 

 <耐性>

  【資産強奪無効】

 

 <契約 >(1/1)

  ショートウルフ (Lv1)

 --------------------------------------

 

 頭の中に突然ゲームのステータスのようなものが浮かんできた。

 

 「...」

 

 あまりの非現実さに思考が停止おり、

 何が起こっているのか理解ができなかった。

 

 暫く唖然としていると思考が戻ってきた。

 「うん… とりあえず現状を確認しないと」

 

 辺りを見渡す。

 森に囲まれた草原地帯。

 その中心に直径10mくらいの池らしきものがあった。

 そして俺は、池の傍にある木の下に座っている。

 

 「ん? どういうことだ?

  さっきまで路上で寝ていたはずなんだが…

  そしたら、突然母親が現れて…… 」

 

 …あぁ、そうか俺は死んだんだった。

 あの借金地獄から抜け出せたんだという幸福感はまだ残っているから間違いないはずだ。

 

 「となるとここは… 」

 

 《解答。地形情報から、アルステイト郊外であると予想されます。 》

 また頭の中に声が響いた。

 

 「アルステイト?」

 

 《解答。アルステイトとは地域の名称です。》

 

 謎の声が頭に響くが特に違和感なく会話してしまった。

 いや、おかしいよな?

 一旦冷静になろう。そうしよう。状況の確認をしよう。

 

 「なるほど。 で、お前はなんなんだ?」

 

 《解答。主様の伝説級スキル【叡智の声】の能力である、

  自立思考型演算回路です。》

 

 「スキル?」

 

 《解答。スキルとは、使用できる能力の総称です。》

 

 情報を整理し、考える。

 そして一つの答えにたどり着いた。

 

 「ん? どうやら異世界に飛ばされてしまったらしい

 いや、死んだ記憶は残っているから転生になるのかな……」

 

 一応シンにも、異世界転生などの知識はあった。

 路上生活は暇の極み。捨てられていたライトノベルをかき集め、

 時間をつぶしていたのである。

 そして今の状況は今まで読んだライトノベルで見たことがある展開だった。

 

 「そうか俺は転生したのか」

 

 またバラバラになりかけた思考を纏めなおした。

 

 そして、前世の自分の人生を思い出してみる。

 「あぁ…今振り返っても、ひどい人生だったよ、ほんと。」

 ただただ、お金に嫌われ、お金に不幸にされ、お金に振り回される、

 貧乏神のような人生だった。

 

 「……よし 辞めよう。過去のことを考えてもしかたないよね」

 

 ブツブツいいながら、シンは傍にある池に向かって歩き出す。

 そして、水面に映る自分の顔を確認した。

 

 「おぉ!?」

 そこに移っていたのは、若い時の自分。

 自分の顔なので間違えようもない、若返っていた。

 それも、運命の歯車の狂う18歳の頃に。

 

 自分の顔をまじまじと見つめる。

 「この頃はまだ希望に満ち溢れていたよな……

  あぁ…… 神様は俺を見捨ててなかったんだな」

 素直にそう思った。

 神様を信じているわけではないが、夢にしてはリアリティーがありすぎる。

 もしそうならば、今度こそ、お金に苦労しない人生を歩んでいこうと心に誓った。

 

 「よし!此処がどんな世界であろうと、俺は幸せになって見せる!!」

 若い頃の明るさ、ポジティブさが戻っているのだろう、

 パチッと頬を叩き、気合いを入れるのだった。

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