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運命の少女たち

 生徒たちの悲鳴が上がった。


 窓ガラスの破片を激しく巻き上げ、奇怪な生物が子どもたちを威嚇する。

 それは緑色のよだれを汚らしく垂れ流し、不快な咆哮を響かせる歪んだ魔物で、トカゲの頭とコウモリの羽根を持つ、正視できないようなおぞましい姿。

挿絵(By みてみん)

 それは、あの忌むべき魔獣・ビヤーキーだったのである。

 ビヤーキーは教室に窓ガラスを破り飛び込んでくると、すぐに辺りを見回し、そこにいる子どもたちの顔をギロリと見回した。

 そしてすぐに詩織と真夢の顔を確認すると、彼女たちに向かって襲いかかってきたのだ。


 突然の怪物の襲撃に、一瞬凍りつく詩織たち。

 しかしその直後、さらに場面は急展開した。


 誰かが教室の入り口に飛び込んでくると、手に持っていた銃を発砲。

 ビヤーキーを蜂の巣にすると、そのまま魔獣にとどめを射したのである。


「椎名詩織さん!朝霧真夢さん!いますか!?」


 それは、20代〜30代程度の1人の女性で、深い緑色の軍服を身に付け、きりりと締まった表情で2人を見つめている。

 女性が2人の姿を確認すると、彼女の後ろから、見覚えのある中学生たちが飛び出してきた。

「シオリ!マムちゃん!!」

 もちろんそれは、神酒、七海、絵里子、瞬の面々だった。


 あまりに場面が急展開するため、すぐにそれらを理解できずに詩織たちは唖然としていたが、そんな彼女たちに落ち着いて考えるヒマすら与えず、七海は詩織たちの手を引っぱると、軍服の女性と一緒に学校の屋上に走り出した。


「屋上にヘリが待ってる!シオリたちも早く乗って!!」


       ☆


「ここだけじゃないわ。ビヤーキーは世界中に現れて人間を襲っているの。」


 詩織たちが乗せられた軍用輸送ヘリコプターの中、神酒や詩織たちは、急に彼女たちの前に現れた軍服の女性から、事の詳細の説明を受けていた。

 この女性の名前は、ロイド・シーナ・バークナー(通称シーナ)。

 以前に神酒や瞬がB・Dにより拉致された時、2人の手助けをしてくれたあの人物で、もちろん神酒と瞬は、彼女のことをよく覚えている。


「シーナさん。いったい何が起きているの?」


 神酒がシーナに聞くと、彼女はヘリの側面のケースから一枚の写真を取り出し、それを彼女たちに見せた。

 そこに映っていたのは銀色のネコ。

 いなくなったティムの写真を、シーナがなぜか持っていたのである。


「前にミキには話したことがあると思うけど、私がかつて属していた組織『B・D』(ブルー・ディスク)は、イーバ(地球外生命体)との取り引きで、旧支配者とのコンタクトの方法を探していたの。


 やがてアメリカ政府はそれが危険な取り引きであることに気が付いて、その後B・Dを解体。

 でもね、長官だったジェームズを含む数人のメンバーが、秘密裏にその計画を進めていたのよ。


 ジェームズ・フォレスタルは私の父。

 私は彼を何度も説得して、旧支配者の召喚をやめさせようとした。

 でも父さんは聞いてはくれなかった・・・・。


 彼が旧支配者を召喚するために使った検体は、『マトゥの木箱』の中に納められた鍵。

 あなたたちが『ティム』と呼んでいる、あの銀色のネコのような生き物だったの。」


 シーナは話を続けた。


「ジェームズはそのティムという検体を使って、ウォーカーフィールド基地の上空に、全長3kmにも及ぶ巨大な扉を呼び出したわ。

 旧支配者ハスターを呼び出すための扉を。


 扉はまだ開ききってはいないけど、そのすき間から何万何億というビヤーキーが飛び出してきて、世界中に飛び散っている。

 アメリカだけでなく、アジアにも、ヨーロッパにも、ロシアにも。

 各国は盛んに反撃を繰り返しているけど、数が違いすぎて太刀打ちができない。合衆国でも国家保安委員会の会合が行われていて、扉の破壊のための審議会が始まっているの」


「破壊って・・・映画でよくある【核使用】とか?」

 話を聞いていた絵里子が口を挟んだ。


「ええ。不本意だけど、そうなってもおかしくない状況よ。

 でもね、その審議会の最中にある連絡が入ったの。

 バチカンのロバート・フォースという人物から、旧支配者の降臨を食い止める方法があるという連絡が。」


「ロバート・フォースって・・・もしかしてロバート神父のこと!?」

 意外な人物の名前が出てきたことに、神酒たちは一様に驚きの表情を見せた。


「ええ。あなたちが良く知っている人物のはず。

 彼はバチカンの諜報活動を行っている人で、私も何度か会ったことがある人なんだけど、その彼が言うの。


 『ハスターの降臨を阻止できるのは、

 運命の少女たちと呼ばれる6人の女の子たち。

 その正体こそ、瀬那輝蘭を含むあなたたちのことだ』ってね・・・」


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