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預言書の著者

「こ・・これに乗って行くんですか!?」


 ロバート神父によって連れて行かれた場所。

 それは、ヒースロー空港の滑走路の特別区画で、関係者以外は進入禁止となっている軍専用の滑走路だった。

 そこには1機の戦闘機がスタンバイされており、軍関係者らしき人物たちが準備を進める中で、輝蘭にフライトジャケットとヘルメットが手渡される。


「かなり急ぐんでね。1番速い方法を選んだつもりだよ」

「1番速いって・・・」


 輝蘭がロバート神父の方を見ると、彼も神父服からフライトジャケットに着替え、何か説明を関係者から受けている様子だ。


「・・・誰が操縦するんですか?」

「ボクだよ、ボク」

「えええ!!?」

「ラプターを操縦するのはまだ4回目だけど、心配しなくてもいいよ☆」


               ☆


 輝蘭がロバートから受けた説明は、こういうことだった。

 彼は実際カトリックの神父ではあるのだが、その中でも主に紛争地域や戦時中の国家など特異な環境で活動するために、バチカンでも軍事訓練と諜報訓練を受けた、特殊工作を専門とする少数のチームに属している。

 もちろんであるが、彼らの最高責任者はローマ法皇(現在はフランチェスコ1世)

 キリストの持つ歴史や聖書の解釈において、実際バチカンが表沙汰に公表できないような内容のものも多くあり、それらを秘密裏に調査し、現在のバチカンの意に沿うよう工作することが、ロバート個人に与えられている本来の使命である。

 死海写本やヨハネ黙示録などが、聖書か異端であるかの判断にも、ロバートの調査が大きく関わっていた。


 現在彼が調査している物。

 それはロバートが、7年前にヨルダンのペトラ遺跡周辺の教会から発見した物で、彼らが『碧星の断章』と呼んでいる古い写本の一部である。

 これはかつて十字軍の騎士が携えていたものらしく、実際キリストとその使徒とは無関係の内容のもので、聖書の一種と認めることはできないのだが、彼はここで無視できない章節がこの写本に記されていることに気付いていた。


 それは、禁書『ネクロノミコン』と同じ内容の章節。


 バチカンの秘密図書館に秘蔵されている魔道書『ネクロノミコン』

 狂えるアラブ人アル・アジフが記したと言われるこの禁書には、人類の知る有史とはかけ離れた世界から地球を脅威に陥れる邪神『旧支配者』についての記述が多くあるとされ、その内容の恐ろしさに、読んだ者は目が潰れるか、あるいは発狂のうちに絶命すると言われている。


 実際『ネクロノミコン』の解読は進められていたが、その作業の工程で、何人かの枢機卿が災難に遭い、現在その作業は中断されている。

 しかし解読された『ネクロノミコン』の一部と、『碧星の断章』の内容に、共通する部分があることがローマ法皇に報告されていたのだ。


 それが、『旧支配者』ハスターの降臨と、それを防ぐための少ない手段の1つ、『運命の少女たち』についての記述である。


 ネクロノミコンでは、ハスターのことを『黄衣の王』と。

 碧星の断章では、『黒い海』と記されている。


『碧星の断章』の著者は、当時十字軍に同行していた双子の姉妹神官の姉。

 メアリーと呼ばれていたその神官が手に入れた、時間を超越することができる力を持つ石『碧星』によって垣間見た、未来の世界を記した内容の写本が『碧星の断章』だったのだ。


 ちなみに輝蘭がロバートにスカウトされた理由。

 それは、『碧星の断章』の中に、「運命の少女たち」の名として、フルネームで神酒・輝蘭・七海・絵里子・詩織・真夢の名が記されていたためである。


               ☆


「どうですか?ボクの言ってること信じる?

 なんでボクが鳳町で神父をしていたか、なんとなくわかったでしょ?」

「・・・はぁ。信じるも何も、メアリーが絡んでいるのなら、信じないわけにはいきませんね。」


 ステルス戦闘機・Fー22ラプターのコックピットに乗り込むロバートと、その後ろの席に乗り込む輝蘭。

 間違いなくジェットコースターよりも激しい圧力がかかる戦闘機に乗せられた彼女は、ドキドキしながらロバートに話しかけた。


「神父様。どうして戦闘機なんかで行かないといけなんですか?」

「『碧星の断章』の解読は、先日終ったばかりなんだ。それによると、ハスターが降臨する日が目の前だってことがわかったんですよ。」

「それはいつですか?」


 ロバートはチラッと輝蘭のほうを振り向くと、再び正面を向き、コックピットのボタンを押した。

 座席上部の窓が閉じ、エンジンの音が大きくなる。

 一度飛び立てば、激しいGがかるため、輝蘭は冷静に話などしていられなくなるだろう。

 後から確実に来る多くの質問を避けるため、ロバートはわざと発進直前に、彼女の最後の質問に対する答えを合わせた。


「それは・・・・・・明日です。 行きます!!」

「あ・・明日!!?」


 そして激しい爆音と共に、一機の戦闘機がヒースロー空港より飛び立った。


 彼らが向かう先はアメリカ。

 かつて瞬や神酒が連れ去られたエリア51。

 ウォーカーフィールド基地が、1つの終焉を迎える舞台となるのである。


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