表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

 神酒は瞬の予想外の行動に驚き、扉を叩いて瞬へ叫んだ。


「ちょっとシュン!何してるの!?早くこっちに来て!」


 しかし瞬は意外にも落ち着いた声で、神酒たちにこう応えてきた。


「ボクがここで扉を守るよ。ミキちゃんたちは、早く先に行って」


 ・・・・・え?


「何言ってるの!バカなことしないで、一緒に行こうよ!」

「ダメだよ、ミキちゃん。

 この扉が破られたら・・・今度はミキちゃんたちが危なくなる」

「だからってシュン!あなたがそこに残ること無いでしょ!?」

「・・・いいからミキちゃんたちは早く前に進んで。

 早くティムを迎えに行かないと、もっと大変なことになるから・・・」


「シュン!バカなことはやめて!シュン!!」


 神酒は必死に扉を叩いた。しかし瞬は倉庫側から鍵をかけたらしく、扉は開く気配を見せない。

 涙を流しながら瞬を呼ぶ神酒を、あきらめたように見守っていた七海や輝蘭たちだったが、やがて七海が、神酒の手を強く握った。


「ミキ、早く先へ行こう・・・」

「何言ってるのよ!」

 神酒が七海へ叫んだ。

「シュンがまだ残っているのよ!シュンを置いてなんか行けない!」


「・・・バカ!!」


 通路の中に、渇いた叩音が響いた。

 七海が神酒の頬を平手打ちしたのだ。

 神酒ははっとしたように七海を見た。七海は涙を流し、悔しさをにじませるように神酒を見つめている・・・。


「・・・バカ・・・ミキのバカ!」


「・・・ナミ・・・?」


 七海は神酒にしがみつくと、彼女の胸をこぶしで叩いた。そこには七海が今まで言葉に出来なかった想いが強く込められているようで、神酒の心に、七海の悔しい気持ちが痛いほどに伝わっていく。


「・・・シュン君は・・・シュン君は、どんな気持ちであそこに残ったか、ミキにはわかってるの!?」


「・・・・・・・・・」


「ミキはシュン君のことが好きなんでしょ!?

 シュン君はミキのことを・・・・・あなたを守るために残ったのよ!

 どうしてそれがわかってあげられないの!!?」

「・・・ナミ・・・・」


「あたしだって・・・あたしだってシュン君のことが・・・。

 シュン君のことが好き。シュン君のことが大好き!!

 でも・・・でも・・・・」


 七海はそれっきり、言葉に詰まってしまった。


「・・・ナミ・・・・ごめん・・・」


 神酒は七海の手を取ると、その手を強く握った。

 本当は神酒にもわかっていた。今彼女たちが瞬のもとに戻っても、できることは何も無いし、今のままの状況が続けば誰も生き残ることなどできない。

 この通路の奥にいるティムを助け出し、ハスターが現れる巨大な扉を閉じればビヤーキーも消える。

 それこそが瞬を、そして人々を助ける唯一の方法だということを。


 そしてもう1つ。

 七海が瞬のことを、ずっと前から好きだったということも・・・。


「ナミ・・・。あたし、ナミの気持ち、ずっと無視してた」

「・・・ミキ・・・」


 神酒は強く通路の向こうを見つめると、何かを決心してみんなを見回した。

 瞬が訓えてくれた覚悟、絶対に無駄にしてはいけない・・・・・。


 少女たちは無言でうなずくと、通路の奥へと走り出した。

 輝蘭、絵里子、詩織、真夢、七海、そして神酒。

 神酒は一度扉の方を振り向いたが、すぐにまた七海の背中を追った。


 ゴメン。瞬、必ず助けに来るからね・・・・。


 ハスターの降臨まであと少し。彼女たちに残された時間は少ない。

 そして神酒は七海の背中を追いながら、あることを考えていた。


 ナミ、ありがとう。

 でも、ナミは1つだけ間違ってることがあるよ。

 シュンが助けようとしているのは、あたしだけじゃ無い。

 シュンが助けようとしているのは、もしかしたら・・・・・・。


             ★


 ビヤーキーの群れが飛び交う倉庫の中。

 瞬は扉の前に立ちはだかり、強く輝く右足を魔物たちに向けながらも、少し変なことを考えていた。


 あれ?確かこんな時に言うセリフがあったよな。なんだったっけ?


 そしてそのセリフを思い出した瞬はニヤリと笑うと、自分を奮い立たせるように、小さくこうつぶやいていた。


「おまえたち、すでに死んでいる!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ