忙しい再会
「こちらに代わりの輸送機が準備してあります!
急いでそちらに移動してください!!」
海兵隊の誘導により、神酒たちは急いで滑走路の反対側に向かった。
そこにはすでに燃料の補給を終えた小型輸送機C-12Jが準備してあって、彼女たちはすぐにそれに乗り込もうとしたが、しかしその時。ふいに輸送機の陰から1匹のビヤーキーが現れると、神酒に向けて襲いかかってきたのである。
それは、あっという間の出来事だった。
少女たちに襲いかかるビヤーキー。
しかし用意された輸送機から突然1人の男が飛び出してくると、怪物に向けて銃を発砲。
ふいを突かれたビヤーキーは、叫び声を上げながら海面に落下していったのである。
輸送機から現れた男。それは、神酒たちにとっては意外な人物だった。
大きなショットガンを構えた仕草は様になっているとは言え、その服装が少々奇妙だ。
まるで学生服のような黒い服に、胸に下げたロザリオ。
飛び交うビヤーキーを鋭い目つきでにらんだ後に、それとは打って変わった優しい瞳で神酒たちを見つめている。
そこに現れた人物。それは、ロバート神父だったのである。
そして意外な人物の登場に唖然としていた神酒たちだったが、さらにその横から思いもかけない少女が飛び出してきた。
「ミキさん!!」
「・・・キララ!?」
輸送機から飛び出してきた懐かしい1人の少女。
それは、輝蘭だった。
輝蘭はすぐに神酒の姿を確認すると、彼女のもとに抱きついてきた。
2人が離れ離れになって約2年。
短いようで長かった年月を経て、2人は遂に再会を果たしたのだった。
☆
再会の喜びの時間すら充分に与えられず、神酒たち7人はすぐにC-12Jに乗り込もうとした。
しかし再び舞い降りてきたビヤーキーの群れが滑走路の途中に多く這いつくばり、空母から飛び立つことが出来ない。
最初は神酒たちと一緒に輸送機に乗り込んでいたロバートとシーナだったが、最初に業を煮やしたロバートが輸送機から飛び降りると、滑走路上のビヤーキーを追い払うために銃を乱射した。
外の様子を見つめて悔しそうな表情を見せるシーナ。
そして彼女もまた何か意を決すると、神酒の傍に駆け寄り、一枚のカードを渡した。
「ゴメン、ミキ。どうやら私の約束を守ることはできないみたいね。
輸送機のパイロットはウォーカーフィールド基地の場所は知っているから、
そこに付いたら正面格納庫から中に入って!
ティムのいる実験室までは4つの扉があるけど、その3つ目で
このカードキーが必要になるわ。
もしかしたらマスターコードが変更になっているかも知れないけど、
もしそうだったら、そこから先はあなたたちでなんとかして!
C-12Jは必ずここから飛ばしてあげる。
それじゃあ・・・・・頼んだわよ!!」
「シーナさん!!」
シーナは神酒たちにそう言い放つと機体から飛び降り、銃を構えてビヤーキーの群れの中へ飛び込んでいった。
シーナの覚悟を受け取った運命の少女たち。
外から聞こえてくる無数の銃声と、それに歯向かうビヤーキーの群れのうなり声。
やがて輸送機は順調にエンジン音を鳴らすと滑走を始め、そして大空へと飛び上がった。
その後、ロバートとシーナの両名は行方不明という結末を辿ることになる。
その運命をそこはかとなく感じ取っていたのだろうか。
神酒たちは機内で微塵も動こうとせず、そして誰の顔も見ようとはせず、無言のままで無機質で金属的な床をジッと見つめていた・・・。




