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危険な選択肢

「ちょ・・・ちょっと待ってよ!」


 籠目小学校から嘉手納基地へ向かうヘリの中、シーナが突然言い出した「運命の少女たち」についての説明を聞いて、瞬がシーナの言葉を遮った。


「『運命の6人の女性』のことは、ボクも知っているよ。

 鳳町に伝わる『籠目伝説』のことだよね?でも、それがミキちゃんたちだって言うの?」


「そう。ロバート神父が発見した予言書『碧星の断章』に、あなたたちの名前がフルネームで記されていたのよ。

 それに、『碧星の断章』だけじゃないわ。

 日本の政財界に古くから影響を与えていた占星術師『寵』(ちょう)の残した書にも、あなたたちのことが書かれていたの。

 もっともこんな不確定な要素だけで構成された情報だもの。

 あなたたちに希望を託そうなんて考えている人間は、私とロバート神父が動かせる数名の人間だけ。


 ミキたち6人がティムを救い出して、ハスターを退けてくれることを信じているのはね」


「だからさ!!!」


 瞬は立ち上がると、シーナに向けて叫んだ。


「そんな訳のわからない本にミキちゃんたちの名前が書かれていたからって、

 ただそれだけの理由で、ミキちゃんたちをそんな危険な場所に連れて行くの?

 そんなのおかしいよ!

 そりゃあボクの右足には、確かに不思議な碑文が書かれている。

 ミキちゃんの左手だってそうさ。でもさ!


 ナナミちゃんだってキララちゃんだってリコちゃんだって、ただの普通の女の子だよ!

 シオリちゃんとマムちゃんなんか、まだ小学3年生だ。

 特別な超能力が使えるわけじゃ無い。すごい武器があるわけじゃ無い。

 ミキちゃんの左手の能力だって、今は使えなくなっているんだよ!

 

 それなのにビヤーキーがウヨウヨいるような場所で使命を果たせ、なんて・・・・

 そんなの絶対におかしい!」



 強く詰め寄る瞬の言葉を聞きながら、シーナは目を瞑り、黙ってその言葉を聞いていた。

 そして彼の言葉が終わり、しばらく考え事をしていたシーナはゆっくりと目を開くと、瞬の言葉に応えた。


「シュン。確かにあなたの言う通りだわ。

 ハスターを退ける方法があまりにも少なすぎるものだから、

 私は予言書の言葉に頼りすぎていたみたいね。


 でもね、今は一刻の猶予もならない状況なの。

 早く事を収拾しないと、アメリカは核の使用すら認めてしまうかも。

 そうなる前に、あなたたちには例のティムが扉を閉じるように働きかけてほしいの。

 ティムの所までは海兵隊が護衛する。

 必ずあなたたちを無事に送り届けると言いたいけど、でも約束はできない。

 無事に帰れる保障は何も無いの・・・。


 選択肢の決定権を持っているのは、あなたたちよ。

 行ってくれる?

 それとも止める?」


 シーナの問いかけを、神酒たちは黙って受け止めていた。

 それぞれの心の中には複雑な想いがあるだろう。

 しかしそんな中で1番最初に言葉を発したのは、意外にも詩織と真夢だった。


「あたしは行くよ!

 ティムが待っているなら、あたしは絶対に行くノダ!」

「もちろんマムも行くよ!ティムは大事な友だちだもん。

 それにシオリちゃんが行くなら、マムも絶対に付いて行く!!」


 すると今度はそれを聞いていた七海が、やれやれといった具合でため息をついた。

「シオリは言い出したら聞かないところがあるからなぁ。

 しょうがない。あたしも行くか・・・」


 絵里子は絵里子で、少し別の理由から行くことを決めていた。

「有名になるチャンス!!」


 瞬は七海たちの顔を見回してから、ハァとため息をついた。

 彼はもちろん男の子で、この女の子たちを危険な場所に行かせたくないという気持ちがあったのだ。

 だが、彼女たちの誰もが決心が固いことが容易に理解でき、最後に神酒がコクンとうなずいたのを見てから、あきらめたようにシーナを見た。


「しょうがないなぁ・・・・・。

 ボクももちろん行くよ。

 みんなを守るのがボクの役目だからね」


 そして瞬たちの様子を見ていた神酒だったが、1度ニッコリ笑うとシーナの方を振り向き、彼女に応えた。


「シーナさん。もちろんあたしも行きます。これがあたしたちが選んだ選択肢です。予言書とかは関係ありません。

 ティムが危険な目に遭っているなら、やっぱりじっとなんかしていられません。

 あたしたちに何ができるかわからないけど、でもきっと何かはできると思います。

 お願いします。

 あたしたちをティムのところへ連れて行ってください!」


 神酒たちの言葉を聞いたシーナは、少し唖然としながらも、喜んでその意思を受け止めた。

 実は彼女は、神酒たちがウォーカーフィールドへ向かうことを渋るのではと心配していたのである。


「・・・ありがとう、みんな・・・。

 あなたたちの覚悟、しっかりと受け止めさせてもらうわ。

 今ウォーカーフィールド基地は、本当に危険な場所になっているの。

 もしかしたら今の装備では、正直言ってあなたたちを守りきることができないかも知れない。

 でも、私も覚悟を決めた。

 私の命と引き換えにしてでも、必ずあなたたちをティムのところへ連れて行く。

 みんなの命、私に預けてちょうだいね!」


 そしてシーナは立ち上がると、少女たち1人1人と固い握手を交わした。



「ウォーカーフィールドには、嘉手納基地から直接C-17輸送機で向かうことになっているわ。

 日本国内のビヤーキーの飛来数はかなり少ないけど、

 日本領土を抜け出した瞬間に多くのビヤーキーに襲撃されると思う。

 数機の戦闘機が護衛に付くことにはなっているけど、

 そこから先はもうどうなるか、全く予想はできないの。

 もしあなたたちが信じている神がいるなら、その神に祈ってちょうだい。

 私は宗教にあまり関心は無いほうなんだけど、

 でも今は神に祈りたい気持ちでいっぱいになっているわ・・・」


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