序章
2056年 ガイア - ブロックJ - とある高層ビル居住区
けたたましいアラームの音が鳴り響く。
ベッドの中から青年がムクリと起き上がる。
「アビー…… み ず……」
スゥーと音もなく青年に向かい金属の光沢を身に纏った楕円形の物体が近寄り青年の目の前で静止する。
と、同時に中腹部よりグラスに注がれた水が、差し出される。
「お目覚めですか?」
何とも機械的な口調とトーンで青年に向かい話しかける。
「あぁ-……」気のない返答を返し青年は続ける-
「今日の予定を……」
「2056年1月31日 本日の天候は晴れ午後14時より35分間の雨の後、本日中晴れが続きます。
本日の予定は現在9時ジャストより1時間後から本社システム課においてミーティング……」
遮るように青年は声を荒げた-
「9時だとぉー……」続けて「なぜもっと早くに起こさないアビー!!」
「今朝は8時より15分おきにアラームを鳴らし続け3度で起きられなかったので緊急アラームに切り替え-」
また遮るように青年は声を荒げる―
「あぁー もういい!!」 「お前と争ってる時間がない!! 直ぐに遅刻回避の誘導プログラムを起動しろ!!」
アビーは、冷たい口調で「かしこまりました……」と答えた。
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「ただいまの時刻8時55分-遅刻は回避されました。」
僕の肩を蜂のように飛び回るのは、部屋にいた アビー から小さく分裂した小型追尾補助コンピューター。これ1機で通話・ネット・ナビ etc……生活に関わる全てのサポートを一手に引受ける優れものだ。といってもこの時代1人に一台、世界政府となったガイア国民ならば13歳の成人を迎えると同時に支給されるバイオチップが核になり、みんな外郭を思い思いにカスタマイズして使っている 僕にとっては年中付きまとう口煩い付き人の様な存在だ。
「今日も遅刻はしなかった……っと」