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男女神の世直し鎮魂歌(レクイエム)  作者: T・鈴音
伝説の幕開け
8/27

天真爛漫・水の女神

エルの弟ユーカについて聞き込み途中、五人の変態男達に捕まり、服をボロボロにされたシルヴィア。そんな彼女の為に鈴音は繁華街へと走った。



「あーもう!嫌なことを思い出させないでくれるかな!こっちは忙しいの!」

どこか宙に向かって愚痴をこぼす鈴音。服を買う為に屋根伝いに各地を回るが、探せど探せど見つからない。

「どうなってんのかな… この惑星は。これは諦めて僕のコートを着せて一回帰ろうかな?うん、そうするか。」

半ば諦めモードでシルヴィアの元へ戻る鈴音。その足取りは重かった。そして暗い表情のままシルヴィアの元へたどり着く。

「ごめんよシルヴィアちゃん!探したんだけど服を売ってる所は無かったよ…」

凄く申し訳なさそうに謝る鈴音。そこでシルヴィアがある事を告げる

「あの、鈴音様。ここを出たすぐ右にあったんだけど… もしかして気づいてなかった?」

その言葉を聞いた瞬間、鈴音に稲妻が走る。ただ呆然と立ち尽くし、石像のように固まってしまった。

「さっき人が居なくなった時にこっそり出てみたの。そしたら曲がってすぐ右にあったん… って聞いてる鈴音様?」

立ち尽くす鈴音の顔の前で手を振るシルヴィア。瞬き一つしない鈴音に少し焦りを見せる。だがその瞬間鈴音は猛スピードで地下室から走り去って行った。

「きゃっ!な、なに…?ビックリしたぁ!今の間はなんだったの…?」

するとしばらくして鈴音が紙袋を持って現れる。

「ごめんよ!遅くなっちゃって。さ、着てみてよ!」

いそいそと服を取り出しシルヴィアに押し付ける鈴音。その表情はどこか自信満々な顔だった。

「あーうん… え?じゃ、じゃあ着るからね?鈴音様の選んでくれたお洋服、似合うかなぁ…」


~五分経過~


「着替え終わったよ鈴音様!」

現れたのは黒に赤のフリルの付いたノースリーブにスカート。そして黒に赤の差し色のアームカバー。更に黒と赤の縞々ニーソックス。更に更に黒に赤の差し色の入ったブーツ。とにかく全体的にコッテコテの黒づくめゴシックコーデだった。

「あの、似合ってるかなぁ、鈴音様…?こんな可愛いお洋服… 初めて着るもん…」

もじもじしながら質問するシルヴィア。それに対して鈴音は目を輝かせながら言う。

「全く… 似合わない訳無いじゃないか。元が可愛いんだからそこに可愛い服を追加したらどうなる?…そう!更に可愛くなるのさ!とは言っても僕は服の事はあんまり知らないからアレだけど… あー買ってよかった着せてよかった!」

笑いながら肩を抱き寄せる鈴音。シルヴィアの顔は真っ赤になっていた。

「あ、そうだ忘れてた。今しておこう。よしよしありがとね。」

そう言うと鈴音はシルヴィアの頭を撫でた。シルヴィアはどこか意識が遠くに行っているような感じだった。

「さーて、仕事を再開しようか。パートナーが更に可愛くなったから、やる気が当社比1.5倍だ!」

やる気満々な二人は地下室から出て路地から大通りへ出る。それをある人物が見ていた。

「ふふん、これはラッキー!まさかこっちに来てたなんてね!手間が省けちゃった!よーし、それじゃ早速手を打っちゃうもんね!」

そう言うとその人物は遠くへ飛んでいった。

「ん?今誰か僕達を見てた…? いや、気のせいか。自意識過剰になっちゃったかな?」

視線を感じ後ろを振り返るがどこにも人影はない。ホッと安心し、聞き込みを再開する二人。

「やっぱりなかなか上手くいかないねぇ。よし、今度はあの人に聞こう。もしダメなら今日は終わろうか。」

ダメ元で聞き込んでみる二人。するとどうだろう、その人物はユーカの事を知っているという。

「ユーカ?あぁ知ってるよ。あいつはここの女神護衛隊の一員だったんだよ。結構強くて名の売れた奴だったんだけど、不幸にもこの前神堂の庭で同じ護衛隊の仲間に誤解で殺されちまったよ。確か… ネルヴァ様に言い寄ったとかなんとかで。まぁ、そんな事するような奴じゃなかったけどな…」

聞き出せたのは意外な事実だった。女神護衛隊といえばアルディアと話をしていた時に隣にいたガチムチ軍団が記憶に新しい。

「そうだったんだ… うん、ありがと!とりあえず神堂に行ってみるよ!」

有力な情報を得て急ぎ向かおうとする二人。だが二人を男が呼び止める。

「おぉっとちょっと待ちな!神堂に行くのか?だとしたら気をつけな。最近少しネルヴァ様の様子がおかしいんだ。目をつけられたら逃げる事は不可能だぜ。対抗策としてはお菓子をやれば大抵落ち着くから、持って行くが吉だぜ。せいぜい気を付けろよ。」

内容は忠告と対策。こういうのによくある薄い内容ではなかった。

「そうか!ありが…ん?なんか君、やけに詳しくない?一般の人じゃあ知らないような情報だよね?」

そう聞かれた瞬間少し男は焦りだし、目を背けながら答える。

「い、いや、あれだ!俺は他の誰よりもネルヴァ様を信仰してるつもりだからこれくらいは知ってて当然なんだよ!も、もう分かったろ?ならさっさと行きな!」

あからさまに誤魔化している様な態度だったが鈴音は口にはせず笑顔で手を振り、神堂へと向かった。

「ふぅ… これで俺の仕事は終わりだな。奴がどれ程の人間なのかは知らないが、ネルヴァ様は何かお考えがあるのだろう… 俺が詮索する事ではないな。」


確かな情報、あわよくば形見を手にするために飴と美味すぎ棒を持って急ぎ神堂へ向かう二人。何故か住人達が同じ神堂へと向かっているが、二人にそれを気にする余裕は無かった。

「おお、これがドルテンの神堂の片割れかぁ… デベロンとはやっぱりデザイン違うんだね。何と言うか、こう…水っぽい?」

やっとの事で辿りついた神堂の外見に少し興味を示す鈴音。そこでシルヴィアが

「鈴音様!あれ見て!何かいっぱいこっちに来るよ!」

目の前に現れたのは女神護衛隊のガチムチ軍団。ガチムチなだけあって、威圧感は半端ではない。

「お二方、よくぞ来られました。鈴音さんですね?我がドルテン星の女神の1柱、ネルヴァ=アンドロ様からあなた宛てに決闘申込書を授かっております。さぁ、お入りください。あぁ、あなたは観客席にどうぞ。」

訳もわからず鈴音は控え室に、シルヴィアは観客席に連れていかれた。いきなりの出来事がイマイチ飲み込めない二人。

「えぇ?あ、あの!あ、いやちょっと?な、何?決闘?僕気に入られちゃったの!?ちょっと聞いてよ~!」

聞いても総無視される事に焦りを感じる鈴音。一方でシルヴィアは指定席へと座っていた。

「いきなり決闘だなんて… ステージが湖と陸地で真っ二つじゃない。そう言えば差出人はネルヴァって言ったっけ。…ネルヴァ?まさかあの時アルディアさんの神堂を襲撃したあの女…?」

苛立ちを抑えながら携帯電話で情報を探るシルヴィア。その時アナウンスが流れ始める。

[さぁ、いよいよ始まりますこの戦い!この戦いは女神が気に入った人間に決闘を申込み、その人間をチャレンジャーとして呼ぶ!そして女神とチャレンジャーで1VS1で戦い、制限時間チャレンジャーが生き残ることが出来れば女神護衛隊に採用されます!この方式は5惑星共通!由緒ある伝統のしきたり!この説明は毎回しますよ~!]

その説明を聞いたシルヴィアは驚く。

「え、そうだったの?知らなかったわ… こんな伝統があるなんて聞いた事も見た事も無かったわ。」

その情報について携帯電話で調べるシルヴィア。その最中にもアナウンスは流れていく。

[さぁ、両者の準備が整いました!それでは入場して頂きましょう!女神サイド!水も滴るいい少女!?天真爛漫のロリ女神!ドルテン星の女神の1柱!《ネルヴァ=アンドロ》!!!]

やけにテンポのいい紹介の直後、湖の中からネルヴァが現れる。

「みんな~!ありがとー!ネルヴァ、頑張るからね!」

観客達に手を振るネルヴァ。その光景よりも紹介内容にシルヴィアは気を取られていた。

「そりゃ確かに女神としては小さいし幼いかもしれないけど公式でロリ女神は… ダメな気がするわ。公式がそれなら進んでこっちを信仰してる人間全員ロリコンになるじゃない…」

そこで次の紹介アナウンスが流れる。

[…ひでぇなこりゃ。誰だ考えたの?あ、失礼致しました!チャレンジャーサイド!全身真っ黒殺意の証!刀片手に座頭市!神出鬼没の通り魔美人!《時波 鈴音》!!!]

会場全体からブーイングが飛び交う中、ゲートから鈴音が現れる。

「いや~テンポは好きなんだけど内容酷いなぁ。他の人から見たらそう見えるのかなぁ。ま、頑張ろうかね。」

当の本人はあっけらかんとしていたが、シルヴィアは怒りに震えていた。

「鈴音様の何を知ってあんな事を…! 司会の人はそうは思ってないみたいだけど、考えた奴見つけたら殺してやるわ…!」

そんなシルヴィアを他所にステージに二人が立ち、話を始めた。ネルヴァは鈴音の胸下までしかなく、二人の身長差は凄まじい物があった。

「あ~君か。ネルヴァちゃんだっけ?何だい、あの時の件で僕を護衛隊にしたくなったのかい?っていうかよくよく見るとネルヴァちゃん小さくて凄く可愛いねぇ。」

「本当?ありがとう!でもねー!ネルヴァは貴方を護衛隊にしたくて決闘を申し込んだんじゃないんだよ。目障りだから潰したいだけなの!ってか、貴方とても美人で大っきいのねー!」

その発言に鈴音は戸惑う素振りで返す。

「おおー。可愛い子がそんな言葉を使っちゃいけないよ?そんな言葉を使っちゃう悪い子はお仕置きしないといけないねぇ。」

鈴音は黒椿姫を壁に掛け、首を鳴らし、構える。それに合わせてネルヴァも構える。

「あの時はまぐれ!貴方はネルヴァに勝てないんだから!」

一瞬の静寂の後、試合開始の鐘が鳴る。二人の火蓋が今切って落とされた。

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