運命の歪み 後
神々しい程光に包まれた一人の女性というよりか少女。彼女こそがデベロン星の女神の一柱、アルディアだ。その姿を見た者は天界の者かこの教会の人間だけで一般の人間に姿を見せるのは初の事例だ。
「よ、よよよく来た。えーっと… あっ! よ、呼んだのは他でもないです。あっ… …ここ、これから起きる事をおm」
「あー 分かったよ。どうせあれでしょ?何日か経ったらブラックホールが現れてモンスター達がこの星を狙いに来るーって話でしょ? …あと噛みすぎだね。無理な喋り方するからだよ。もしかしてこういうの慣れてない?」
仮にも女神であるアルディアの言葉を遮り話の結論を予想する鈴音。その場に居た護衛隊はただ呆然としていた。
「あー… そ、そうですね。貴方の言う通りです。私こういうの慣れてなくて…
どうすれば慣れるですか? 鈴音さん、お、教えてくださいです。」
なんということだろう。アルディアは必死に自分のキャラを隠し無理して振る舞っていたことが発覚。そして本来はすごく内気な性格のようだ。更には鈴音にたいして「さん」付けで頼むというどっちが立場が上なのかわからない事態になった。
「慣れてないなら無理しない方がいいよ。無理するとストレスが溜まるしね。君の事だから誰にも相談できずにいたんでしょ?一人で抱え込むのは良くないよ〜」
まさかの鈴音はアルディアに対してタメ口で話し、「君」呼ばわりするという普通ではありえない状況を作り出した。
「あ、アルディア様!本当でありますか!そうであるなら我々は貴方の苦労に気付かずのうのうと… 今までの御無礼、誠に申し訳ありませんでしたーーーーッッ!!!!」
話を聞いていた護衛隊達は泣きながら全員土下座した。
「あ、いえ、その、別にいいですよ。全部本当のことですし… 相談しなかった私が悪いです。だから、あの… 皆さん顔上げるですよ。貴方達は悪くないですから、気に病む必要ないです。」
鈴音の言った事は本当らしく、アルディアは頬を赤らめながら護衛隊を諭す。だがその顔はなんだか嬉しそうだった。
「うん!良かったね。ところで話はどうなの?聞いてなかったや。」
「あのですね、ほぼ鈴音さんの言う通りです。あと1ヶ月経つとアルマ高原の所に正体不明の次元の裂け目が現れてモンスター達が溢れ出すという予知をしましたです。このままだとこの星は壊滅するですよ。だから鈴音さん、貴方にそのモンスター達をやっつけて欲しいです。お願いしますです。」
鈴音の言った事は当たっているらしく、本人の堪を疑いたくなった一同。だが当の本人は顔を顰めていた。
「それはいいんだけどさ、もっとこう… その裂け目自体を抑えるとかさ、他に無いのかな?」
確かにそれが一番いい。と思いたくなる程の極端な正論だった。それを聞いたアルディアは俯きながら話す。
「確かにそれが手っ取り早いです。私は時を司る女神なのでどうにか頑張りましたが何故かその時だけは干渉不可ですよ。もう一人の女神であるネイゼルは学問の神ですからどうにも出来ないですし…」
眉間にしわを寄せ、ひたすら考える一同。そこである人物が案を出す。
「それだったら諦めた方がいいんじゃない?時を司る女神がどうにもできないんだったら他に方法がある筈無いもの。それならわざとその裂け目を出させてその場でアタシと鈴音様で片付けちゃえばいいんじゃない?」
この一話で初めて話すシルヴィアの口からはこれまた正論といえば正論の1つの案だった。鈴音はその手があったかと言わんばかりに手を叩く。しかしそれは最初に言われた事だった。
「じゃあもうその手で行くしかないね。この問題はこれで解決だ。もう心配しなくていいよ。」
堂々と胸を張りながら断言する鈴音。その姿に瞳を輝かせるシルヴィア。その光景を見たアルディアはホッとした様子である事を切り出す。
「鈴音さん、ありがとうです。鈴音さんのおかげで思い残すことはないです。私はこの予知を伝えたら星を守護する立場を降りようと思ってましたです。貴方達と出会えて良かったです。215年のこの仕事に終止符をうつですよ。皆さん… 咎めるなら一思いにやってくださいです。今の私にはそれがお似合いですから…」
突然の発言に鈴音以外の皆は驚きおののく。するとアルディアの体を光が包み込み、その光が消えた時アルディアは普通の私服姿になっていた。
「アルディア様!何を仰るかと思えばそんな事でしたか! …我々は長らく貴方様の傍にお使えしてきました。貴方様が守護する立場から降りるというのも何がお考えがあっての事と思います!誰も咎めはしません!…ネイゼル様はどう言うか分かりませんが… とにかく!その座を降りても我々にとって護るべき人物なのは変わりありません!今後ともお供させて頂きます!!敬礼!!!」
「ありがとうです… 私は幸せものですね。本当に充実した日々でした… 鈴音さん、後は頼みましたです。」
頬を濡らしながら立ち去ろうとするアルディアとその護衛隊。だが鈴音が呼び止める。
「あのさ、家… あるの?天界とこっちを行き来してたんじゃない?今となっては天界に行くのも気が重いでしょ?」
アルディアは首を縦に振り、家は無いと伝えた。それを聞いた鈴音は指を鳴らし、提案する。
「じゃあさ、家に来なよ。この前なんか可愛いティム族の子と妖精さんが家に来たしさ。君たちも一緒に来なよ。ああ、大丈夫。食事には困らないから。」
護衛隊とアルディアは顔を合わせ、それならとばかりに頷いた。
「よっし。それならそうと帰ろ… Oh.Shit! 何だ!?」
かなり大きな爆発音が響く。一行が急いで外に出ると空に一人の少女が浮かんでいた。
「あ、あれはドルテン星の女神の一柱、ネルヴァ=アンドロですよ!な、何をしに来たですか!?まさかさっきの爆発はあなたの仕業ですか!?」
なんと空に浮いていた少女はドルテン星の女神であるネルヴァ=アンドロだというのだ。
「えー?だって女神が一人居なくなったって聞いたから狙い時かな〜と思って。それにこれはデベロンとドルテンの戦争の宣戦布告よ。」
全く悪気ない態度で切り返すネルヴァ。それに対して鈴音はキレる。
「ねぇちょっとさ、あのー… 女の子に暴力振るうのは気が引けるけどとりあえず一発殴っていい?いいよね?よし!」
そう言った瞬間、鈴音はネルヴァの前にテレポートしたかのような速さで迫り、腹部に思いっきり殴った。
「は、速すぎる!こんなの聞いてないぃぃぃ!!」
そう言いながらネルヴァはかなりの速度で吹っ飛んでいった。
「ふぅ… 多分8km位飛ばしちゃったけどいいか。最近戦闘してないから鈍っちゃったか… まぁでもどうせそこら辺は海だからね… 大丈夫でしょ。じゃ、帰ろうか。」
そう言うと鈴音達は鈴音の家へと足を進めた。
一方でここから8km離れたミルゼ海には人だかりが出来ていた。
渦潮の中に一人の少女がいるらしい。
「あー… やっぱ水は最高… 生き返るなぁ。…それにしてもあの黒服の人…かなり手強そう。こうなったらドルテンに誘い出してあの場所で決闘してやるわ… フフフ…」