素直な非素直
アルディアの予言によりあれ程の緊張を生み出した次元の裂け目は天会議場にて離反し、鈴音達の元へ降り立ったユキによってあっさりと消滅した。
その翌日、ある意味で疲れ果てた鈴音達の元へある客が訪れる。
「まぁまぁ楽しんでたのにさぁ、あんな風にいとも簡単にかき消されちゃあこっちも参っちゃうよねぇ。」
揺り椅子に座り、愚痴る鈴音。
「でも鈴音様?予想してなかったとはいえ、楽できたからいいんじゃない?でもあの包帯女は鈴音様にあんな無礼な事を言ったんだから私は絶っっっ対に許さないけど…」
ジュースをズビズビ飲みながら若干の敵対心をチラつかせるシルヴィア。そんな彼女を鈴音は椅子から立ち上がり、小突く。
「良いんだよ別に。あの子は結果的に僕達に協力してくれたんだから。でもなんであの子はここに来たんだろう… あの子はドルテンの女神らしいからねぇ。良く分からないな。」
腕を組み、考え込む鈴音。その時シルヴィアは何を思ったのか、包丁を取り出した。
「そう… そうなんだ。あの包帯女の肩を持つんだ… それくらいなら!!!」
いきなり叫びながら鈴音に包丁を突き刺すシルヴィア。しかし鈴音は微動だにしていなかった。
「あ…あぁ…!うわぁぁあ!!私は…!なんて事を…!」
正気に戻り包丁を引き抜く。だがその刃先は鈴音の体を貫通すらしておらず、逆にへし折れていた。鈴音はゆっくりと振り返り、シルヴィアの首を掴み上げそのまま持ち上げた。
「僕はつくづく君のそんな所が嫌いだよ。僕を刺した理由も分からないし、刺す理由もない。何故君がそうなるのかは知らないけど。」
そんな時玄関の呼び鈴がなる。
「ん?誰だいこんな時に。…まぁいいや。今回は許してあげるよ。さ、待たせる前に出ないとね。」
玄関へ行き、ドアを開ける。するとそこにはネルヴァとアルディア、更にイリがいた。
「鈴お姉ちゃんこんにちは!ネルヴァ、遊びに来たよ!」
「昨日はありがと!鈴さん、なにかお礼したい!」
「すいませんです。昨日の事があったので止めたのですが、言う事聞かなくって…」
突然の3人の来客。そんな出来事に鈴音は笑いながら歓迎する。
「いやぁ、ははは!ようこそ!ささ、入って入って!」
3人を家に招き入れる鈴音。しかしその時、玄関先の広間に一筋の雷が落ちる。煙が移したのはある人物の影。
「お!またまた会ったね!ユキちゃん!」
現れたのはユキだった。何故か目を合わせずどこか他所を見ながら近付いてくる。
「き、昨日は済まなかったな。どうやら僕はお前等の仕事を邪魔したらしい。…で、だ。これはその… う、受け取れ!」
そう言うとユキは鈴音に1つの箱を押し付けた。その箱は可愛らしいお菓子の詰め合わせだった。鈴音は驚いた後、箱を置いてユキを撫でた。
「そうかそうか!ユキちゃんは可愛いなぁ!僕は嬉しいなぁ。口は悪くても心は優しいんだなぁ。またチョイスが可愛い!」
笑顔でユキを撫で回す鈴音。ユキは顔を赤くし、慌て出す。
「な、何をする!僕を撫でるな!言っておくがさっきのは昨日の… そう、あれだ。詫びだ!別に褒められて嬉しかったとかでは無いぞ!!それにあの菓子はその、適当に選んだからな!」
明らかに言い訳をしているユキ。その様子を鈴音は面白がってからかいだす。
「あれぇー?でも何だか顔赤いよ?あれが詫びで、適当に選んだならやましい事はないよねぇ?何でかなぁ〜?」
ユキをからかっていると家の中から鈴音を心配したのか、ネルヴァが出てきた。
「もー!遅いよ鈴お姉ちゃん!一体誰と… あ!ユキ!どうしたの?昨日買ったお菓子持ってきたの?」
まさかのネルヴァ参戦にたじろぐユキ。更に追い討ちをかけるようにネルヴァが鈴音に話し出す。
「鈴お姉ちゃん聞いて聞いて!あのね、昨日ユキは鈴お姉ちゃんの為にお菓子選んでたんだよ!ネルヴァも一緒に居たんだけど、すっごく悩んでた!あれは違うーとか、これは鈴は気に入らなそうとか言ってたの!」
ネルヴァの爆弾発言にユキはより一層慌てながら弁解しだす。
「ち、ちち違う!あれは… そう、ぼ、僕が詫びの為に菓子を選んでいたらネルヴァが来たんだ!あとぼ、ぼぼぼ僕はそんな事は一言も言った覚えはなな、無いぞ!」
今までの冷たい眼差しは何処へやら。その態度は誰がどう見ても恥ずかしい秘密をバラされた時の態度に等しい。そしてその眼には涙が浮かんでいた。しかしそんな事もお構いなしにネルヴァが止めを刺す。
「ユキ?嘘はダメだよ?ネルヴァはユキに呼ばれたから行ったんだよ?言ってたよね?僕は菓子とか解らないからお前に見てもらいたいーって。それにお菓子買ったあとちょっとルンルンだったでしょ!ネルヴァ、初めて見たもん。ユキの笑顔!すっごい嬉しそうだっ… ユキ!大丈夫!?頭爆発したよ!?」
もう言い訳出来ない程にボコボコにされたユキは思考回路がショートしたのか、気絶してその場に倒れ込んでしまった。
「ユキー??…駄目!起きない!初めて見たよユキのあんな姿!でもどうしよ… あ、そうそう!鈴お姉ちゃんはユキの事をまだ良く知らないでしょ?だから今の内にネルヴァが教えてあげる!でもまずユキをどうにかしないと…」
鈴音はユキを抱きかかえ、自宅の広間のソファに寝かす。しばらくは起きそうにないのを確認したネルヴァが話し出す。
「ユキはね、口は悪いけどすっごい純粋なの!嘘つかないし、自分が思った事を全部言うの!だからよく誰かと喧嘩してるんだ!あとね!ユキは何かに興味を持ったら一途なの!極稀だけどね!だから今は鈴お姉ちゃんに興味があるんじゃないかな?ユキが嘘ついたり、あんなに焦るの初めて見たもん!多分人に興味持った事が無いからなんじゃないかな?」
チラチラとユキの様子を伺いながら秘密をバラしていくネルヴァ。
「そっかぁ。やっぱり可愛いんだねユキちゃんは。僕に興味か… 嬉しいねぇ。…さぁて、どれどれ?」
自分に興味があると聞き、照れる鈴音。ふと立ち上がり、寝ているユキの顔を覗き込む。
「いやぁ、寝顔も可愛いねぇ。いいねぇ。何だかあの口の悪さも可愛く思えてきちゃったなぁ。ふふふ… あ。」
ニヤニヤしながらノロケる鈴音。その時ユキが目を覚まし、至近距離でガッツリ目が合う。一瞬の静寂の後ユキは飛び上がり、先程と同じように焦り出す。
「ま、まままままさか、ぼぼ僕の寝顔を見たのか…!?それにここに僕を寝かせていた… という事は気絶していたとはいえ、またぼ、僕に触れたのか…!?くぅぅ… 言っておくが、感謝などしてないんだからな!!!」
驚きのツンデレ発言をしたあと家を飛び出し、雷と共に姿を消したユキ。そんな彼女を鈴音は新たな友達として迎え入れる決意を固めていた。
「可愛くて強いなんて反則とは思うけど、是非とも友達にしたいね!いつになるかは分からないけど、必ず!」




