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第1話「異世界へ」

「さあ席について下さい、ホームルーム始めますよ」


気怠そうな声とともに教室に一人の男が現れる。

あれ担任とは声が違うぞ? 疑問に思いながら黒板の方を向くと40歳前後のくたびれたおっさんが教壇に立っていた。


(誰だ? こんな先生うちの学校にはいなかったぞ?)


みんな疑問の思っているようだが、それぞれの席に着く。

たぶん担任が休みでこの人は別の学校からきた代理なのだろう。

いや、それなら担任でない校内の別の先生が来るはずだ。

もしかして辞めたのか? いや、あるいは何かニュースになるような不祥事でも起こしたのかもしれないな。

そんな下らないことを考えながら喋るのを待っていたが、こんな言葉は予想していなかった。


「みなさんには今からちょっと殺し合いをしてもらいます。」


その言葉に半分は呆気にとられ、それ以外はくすくすと笑うか詰まんなさそうな顔をする。

これはあれか? バト○ロワ○ヤルの台詞じゃなかったか?

授業を聞いてもらうために面白い話をしたり変わったことをする先生はいままで何人かいたが、こんな過激なことを言う先生は初めてだ。

映画の台詞とはいえ問題にならなければいいんだが。


「ただし、場所は異世界です。そこで最後の一人になるまで殺しあってもらいます。」


心配をよそに今度は変な設定を付け加える。

一体どうやってこれを笑いにもっていくのか楽しみにしながら言葉を待つが、クラスメイトの一人が立ち上がり抗議する。


「先生、すべっているからいい加減ホームルーム始めて下さいよ。というか荒川先生はどうしたんですか?」


先生はやれやれといった感じで、抗議したクラスメイトに手をかざすとその席の周囲に青い半透明な壁が出来上がる。

突然のことにクラス中がざわつく。

壁に閉じ込められた生徒は壁に触れたり叩いたりしているがまったく壊れそうにない。

それだけでなく壁の中で何かを叫んでいるがその声は全く外に届いてこない。


「あー、皆さん誤解しているようですがこれは冗談ではないですよ。これから大事な話をするので静かに聞いて下さいね。」


教壇に立つ先生はさも当然のように話を進める。

いや、そもそもこのおっさんは先生なのか? 殺し合いをしてもらうという言動はどうやら本気のようだし、そもそもあんな壁を作り出すのは尋常の人間ができることではない。

俺は何かとんでもない事が起きていると考えはじめ不安になってきた。


「暴れたら面倒だし、先に全員閉じ込めておきましょう」


今度はクラス全員が謎の壁に閉じ込められる。

俺は恐る恐る壁を触ったり、叩いてみたがまったくびくともしない。

当然ながらクラスメイトは大騒ぎになるが、叫び声はまったく聞こえない。

しばらくの間おっさんはその様子を眺めていたが、クラスメイトが諦めて席に着き始めるとようやく話を再開する。


「静かになるまで2分かかりました。これでやっと話を続けられる。

さっきも言った通り、皆さんには異世界へいって殺し合いをしてもらいます。

その中で生き残った一人だけがこの世界へ帰ることができます。

しかし、それだけでは皆さんは不満でしょう。

何一つ得しないのになぜ殺しあわなければならないのか?

そう考える人のためにとっておきの報酬があります。

私達”神”が最後の生き残った一人の願いを何度でも何個でも叶えてあげます。

まあもちろん制限は尽きますけどね、私を殺したいとかは当然できません。

ですが大金持ちになりたいとか、不老不死になりとか、私達の不利益にならないことなら叶えてあげれます。」


どうやらおっさんの声だけは壁を通って聞こえるようである。

いやそれよりもなんて言った? おっさんが神だと!?

だが、こんな不思議なことをされれば神と名乗られても納得できる。

しかし、なぜ神が俺達に殺し合いなんてさせるんだ?


「どうして殺し合いなんてしなければならないんだ?

そう考えている人が多いみたいなので答えましょう。

一言でいえば私達”神”の暇つぶしです。この中の誰が生き残るか神同士で賭けているんです。

実は私が賭けている人間がこの中にいましてね、誰かは言えませんが頑張って下さいね。」


賭けの対象なのか俺達は。

突然の話でこれから殺し合いさせられるというのにまったく感情がついていかない。

そもそもクラスメイトに恨みや憎しみといった思いはないので殺意の浮かびようがない。


「さて話の後、皆さんには異世界へ行ってもらいますがその前にどんな世界なのかご紹介しましょう」


机の上に突然ノートパソコンが現れ、そこに映像が流れ始める。

初めは中世のヨーロッパのような村や石垣に囲まれた都市といったどう見ても近代化されていない光景が現れる。

次いで甲冑姿の戦士、火の魔法を操る魔術師、それと対峙するゴブリンやドラゴンといった魔物のようなものが映った。

どうやら異世界とはファンタジーのような世界のようであるが、ただの高校生がこの中で生き延びれるとは到底思えない。

クラスで殺し合いをする前にみんな死んでしまうんじゃないか?


「もちろんただの高校生がこの異世界で生きることは困難です。

そこで私達は”スキル”を一つ皆さんに与えます。

内容が様々ですがスキルがあれば剣を達人のように操ったり、練習することなく魔法を使えます。

もちろん戦闘スキル以外にも商売をしてお金を儲けやすくするためのスキルもあります。

しかし、選べるのは一つだけです。慎重に選んでください。」


ディプレイの表示が変わりスキルがずらっと並ぶ。

↓こんな感じだ。

------------------------------------------------------

【剣術Lv30 + 鋼の剣  P300】

【剣術Lv25 + 鋼の剣  P250】

【剣術Lv20 + 鋼の剣  P200】

【剣術Lv15 + 鋼の剣  P150】

------------------------------------------------------

最初の方は【剣術Lv30 + 鋼の剣  P300】というものが項目があった。

スキルだけでなくそれを使うための道具も付いてくるようだ。

しかし横のポイント? はなんだ?

選べるのが一つだけなのになぜポイントなんかがあるんだ?

しかもレベルが違うだけの項目が大量にある、どうしてこんなものが必要なのだろう?


「画面に表示されているものが皆さんが取れるスキルです。

表示されている以外にもスキルは大量にあるのでページを切り替えるか左上にある検索機能で探してください。

操作方法はパソコンと同じなので問題なく操作できるでしょう。

選ぶうえで注意が必要なのは選べるスキルにはポイントが必要なことです。

ポイントは皆さん平等に600ポイント与えます。

しかしこのポイントは1秒に1ポイント減っていくので、迷っているとスキルはとれなくなります。」


なるほど悠長にスキルを選ぶことはできないわけだ。

600ポイントあるので時間は10分間あるが、いいスキルを選びたければ早く決める必要があるな。


「それ以外にもう一つ注意があります。

それは他人が選んだスキルは別の人がとれなくなることです。

スキルは学校にいる328人が取り合うので気を付けて下さい。」


話の途中まで別の人にスキルをとられてもこんなにあるなら大丈夫と思っていたが、どうやらクラスだけでなく学校中の全員が参加するようだ。

高レベルのスキルは開始と同時になくなってしまうだろう。

というか328人の中から生き残れることなんてできるのか!?

あまりの多さに急に不安になってきた。

そもそも殺し合いは異世界に転移してすぐに始まるのか、それとも何カ月もかかるのかそのあたりを考える必要があるな。

そういえばさっきの説明で戦闘以外のスキルもあると言っていた。

ということは初めから殺しあう可能性はないんじゃないか?

少なくてもそうしないとわざわざ異世界に飛ばす必要性がない。

恐らく異世界で鍛えたり準備させたうえで戦わせたいのだろう。

よし、すぐに殺しあわない前提でスキルを選ぼう。

しかし、どういったスキルがいいのか思いつかない。

いや、こういう異世界に飛ばされる話は小説ではよくあるよな。それを参考にすればいいはずだ。

例えば銃を作ったり……、現代の農業や生産の技術でお金を儲けたり……。


「さて、他教室の説明も終わったようなのでスキル選択を始めますよ。

それでは……、始め!」


俺は開始と同時に検索機能を使って目当てのスキルを探す。

それはスキルを奪うスキルだ。

これがあれば他のスキルを選択する必要はなく、それどころか全てのスキルを手中にすることも可能になる。

もちろんなんらかの制約がある可能性もあるが、それは使ってみなければ分からない。

スキルで検索をかけると……1つだけあった! が想像していたのとは少し違う。


【スキルコピーLv1  P570】


どうやら奪うのではなくコピーするスキルのようである。

というかポイントがめちゃくちゃ高い、それだけ有能なスキルということだろう。

本当にこれでいいのか不安だが残り時間もわずかなので迷っている暇ない。

俺は「スキルコピー」を選択する。


【スキルコピーLv1を入手しました】


どうやら他人に奪われずに済んだようである。とりあえず一安心だ。

周囲を見渡すと俺と同じように何人かはすでにスキルを取得したようでほっとした表情をしている。

このまま時間が終わるまで待っているのは暇だと思い、パソコンを操作すると取得後もスキルを見ることができた。

取得されたスキルは表示から消えてしまうため全てのスキルを確認することはできないが、魔法の属性や戦闘以外のスキルを多く見ることができた。

意外と戦闘以外のスキルが残っている、やはり殺し合いという考えが強いんだろうか。

そうしているうちに時間は終わる。


「全員スキルを選び終わったようですね。それでは転移を始めます。」


こうして俺は神の暇つぶしのために異世界へ転移させられた。

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