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女神の『家出』

地上からはるか高い天空に、天界はある。

現代は宇宙へ衛星を飛ばすことのできる時代だが、地上の人間の世界と天界とは存在する次元が異なり、人間や人工物によって天空にある天界へアクセスすることはできない。


そのはるか高みにある天界の中でも最も高い白亜の塔のバルコニーに、女神ジブリールは立っていた。


豪奢(ごうしゃ)な金髪、透き通るような白い肌、筋の通った鼻梁、くっきりとして少し吊りあがった鋭い二重の目に透き通った紺碧の色の瞳、豊満な胸、くっきりとくびれた腰、女性のありとあらゆる美をぎゅっと凝縮したような美しさである。


天界も地球も宇宙も、世界のあらゆるものを初めに創ったのはこの女神である。

いわゆる創世神である。


他の男神3人が眠りから覚め初めて意識を持ったとき、ジブリールはすでに世界を一通り創りあげたあとで、優しくにっこりと微笑んでそこにいた。


男神3人はたちまち女神に恋に落ちた。

そして男神達によるジブリール争奪戦は、今に至るまで続くのである。


話を戻そう。


天界からはるか下界には地球が、地上があった。

地上には神々の身体から見たら指の先程もないほど小さなゴミのような黒い塊の醜悪な生き物がおり、女神ジブリールはその生き物を「悪魔(EVIL)」と呼んだ。


ジブリールは地球をとても青く美しい星にしたにも関わらず、なぜか地上の支配をその悪魔にまかせ、あまつさえ悪魔に自分の力の一部さえも与えた。


そして地上の土から人間を作り、悪魔にその人間達を支配させた。

悪魔は地上で神よろしくジブリールの力を使ったが、その地上がどんな歴史を紡ぎどんなに災難にあふれた状態かは誰もが知るところだ。


そして天界には神々以外に天使も創った。天使は1000人にも及び、ジブリールは男神とその天使達に美しい天界であらゆる遊びに興ずるも良し、地上の悪魔の世界に干渉するもよし、自由にさせた。


そして時にはジブリールも戯れに地上に干渉することがあった。


男神3人にも他の天使達にも、なぜジブリールがあの地上の薄汚い悪魔を消滅させ、悪魔の所業によってありとあらゆる苦しみを受けながら生きている人間達を救わないのか、不思議だった。


ただ静かに、地上で悪魔が好き放題に暴れているのを見守っているだけ、時には力を持て余す悪魔を導いてやることすらあった。


ジブリールがなぜこの世界をこのように創り上げ、運営しているのかは謎だったが、男神3人と天使1000人は悪魔というゴミが居ついているとはいえ美しい青い星である地球、そして天界、この世界全てを何もないところからたった一人で創り上げたジブリールに皆敬意の念を払っていたので、ジブリールに「なぜあの悪魔を消滅させないのか」と問い詰める者はいなかった。




「―――そろそろ頃合いのようね」


バルコニーからはるか下界の地上を見下ろしながら、ジブリールは呟いた。


「ごめんなさいね、ラファエル。しばらくお別れね・・・・」


先ほどまでしとねを共にしていた男神に、心底申し訳ないと思う。

あのままあの逞しい腕の中にいられたら、どれほど幸せだったろう。

この心地よい天界での生活に、いつまでも身を委ねていたい誘惑にすら駆られる。


―――しかしこの胸の痛みすら、自分の計算のうちだ、とジブリールは思う。


「全て、私のシナリオ通りよ。行くのよジブリール。皆も見守っていてくれてる。」


バルコニーの手すりに飛び乗ると、ふっ、と足元から下へと、天界から地上に落ちていった。

同時に、ジブリールの神の気が天界からも地上からも完全に消え、他の男神達と天使達には即座に異変に気付いた。

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