第289話「ギリシャ戦術室に漂う残響」
ギリシャ神話圏の外縁では、薄明の光が砂漠 of 砂を灰色に染め上げていた。
アテナは戦術机の上に置かれた、小さな青いガラス瓶を見つめていた。
中には、日本圏の天照の光を、クレアスが特殊な術式で封じ込めたものが収められていた。
瓶の底で、小さな光の粒子が、まるで呼吸をするように微かに明滅している。
アテナはその光に触れることなく、ただその存在が放つ固有の概念圧を感じ取っていた。
異なる神話の力が、互いを排除することなく、この小さな瓶の中で共存している。
「北欧の主神も、同じ光を見ているはずです」
クレアスが静かに報告書をめくりながら言った。
「彼らは鳴る塔の暖炉の火を、これ以上大きくするつもりはないようです」
アテナは小さく頷き、ガラス瓶の蓋を静かに閉めた。
神々がそれぞれの世界で静かな圧を語りすぎず、ただそこに佇むこと。
その均衡が崩れた時、世界は一瞬にして均一な白紙へと還るだろう。
砂漠の向こうから、冷たい夜風が戦術室の窓をガタガタと揺らした。
しかし、大理石の部屋の中の空気は、一ミリの揺らぎも見せずに静止し続けていた。
観測層:第2層 記録単位:異神話概念受容 対象:ギリシャ圏外縁
備考:日本圏由来の光概念の安定的定着。他神話圏への波及の抑制。
記録主体:Archive 状態:稼働中




