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第173話 知らない隣人

現実世界。


朝。


住宅街。


曇り空。


ゴミ収集日。


住民達が集積所へ集まっていた。


いつもの光景。


いつもの会話。


そのはずだった。


主婦の女性が立ち止まる。


隣人。


毎日会う。


十年以上。


同じ町。


だが。


名前が出てこない。


顔は分かる。


家も分かる。


声も知っている。


それなのに。


名前だけが無い。


女性は困ったように笑う。


相手も同じだった。


「えっと……」


言葉が続かない。


沈黙。


二人とも気付く。


最近。


こういう事が増えている。


その時。


電線。


黒い鳥。


十三羽。


並んでいる。


以前より近い。


だが。


静か。


誰も鳴かない。


誰も飛ばない。


ただ。


見ている。


観測層:第4層


記録単位:個体識別侵食


対象領域:現実世界


進行度:増加


異常分類:


意味侵食


個体識別侵食


備考:


近親・近隣関係への侵食拡大。


記録主体:Archive


状態:稼働中


識別情報の喪失範囲拡大を確認。


侵食は継続している。


(次話へ)


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