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田舎のヒキニートおじさん、長寿になったので異世界に行く 〜新天地で同郷の女の子に目をつけられた〜   作者: イシクラゲ


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食事と街への道




魔物の解体が終わる。


血の匂いがまだ残る中、オルハは静かに地面へと手をかざした。

土が音もなく崩れ、穴が掘られていく。


不要な部位をそこへ落とし入れる。


一瞬、手が止まる。

だがすぐに、次の動作へ移る。


火魔法(仮)を発動する。


青い狐火がふわりと現れ、静かに、しかし確実にそれらを燃やしていく。

炎は揺らめくことなく、ただ淡々と対象を焼き尽くした。


その様子を見ていたユイが、一歩前に出る。


目を閉じ、小さく息を整えた。


「――鎮魂」


低く、落ち着いた声。


続けて。


「浄化」


空気がわずかに震え、場の重さが抜けていく。


血の匂いすら、どこか遠くへ流れていくようだった。


オルハはその変化を確認し、小さく頷く。


「これでアンデッドにはならないと思います」


一度周囲を見渡す。


「……移動しますか」


ユイは少しだけ肩を回しながら答えた。


「そうですね。お腹もすきましたし」


軽く息を吐く。


オルハは鞄に視線を落とす。


「魔物の肉は食べられますよ。焼きますか? この世界では、普通に食材として使われています」


ユイは一瞬だけ考え、すぐに首を横に振った。


「なるほど、そっち系ですか。でも……野外で焼肉より、普通に料理された食事がしたいです」


周囲を見渡す。


「こんな場所に食事するところがないのは分かってますけど……」


少しだけ顔を上げる。


「オルハさんの空間移動で、街の近くに行けませんか?」


オルハは静かに答える。


「千里眼で見えた場所なら行けます」


「ただ、この世界のお金がありません。街に行っても何も食べられませんよ」


ユイは一瞬固まり――


「あっ」


軽く額を押さえる。


「そうでした」


小さく笑う。


「ていうか、言葉どうしましょう」


オルハは少し考えながら答える。


「私が知識で話せる言語は、ドラゴン語、古代語、共通語です」


指を折るように続ける。


「この世界には他にも地域ごとの言語や種族ごとの言語、大陸別の言語があるみたいですが……共通語はどの大陸でも使えるようです」


ユイはうーんと唸る。


「うーん……共通語も覚えないといけないんですね」


オルハは肩をすくめる。


「どうします? 調味料や焼肉のタレならありますよ」


少しだけ軽く言う。


「魔物の肉を食べながら、共通語を覚えつつ歩くという手もあります」


ユイはすぐに問い返した。


「距離的に、街までと目的地ってどれくらいですか?」


オルハは空を見上げる。


「近い街まで……どうでしょう。結構遠いですね」


少し間を置く。


「百キロくらいでしょうか」


ユイの顔が引きつる。


「目的地は確認できませんが、街の近くだと思います」


ユイは即答した。


「空間移動で行きましょう」


間髪入れずに言い切る。


「百キロとか無理です」


腕をぶんぶん振る。


「オルハさんが話せるなら、街でお金を稼ぎましょう」


ふと何かを思い出す。


「ていうか、調味料あるなら砂糖とか塩、胡椒売れません? 私も台所の買い置き持ってきてますよ」


オルハは少し申し訳なさそうに言った。


「ユイさん、残念なお知らせです」


「この世界、錬金術があります」


ユイの動きが止まる。


「精製技術が発達しているみたいで、機械なしで白くて綺麗な塩や砂糖が作れるそうです」


淡々と続ける。


「それも安く。胡椒も似たものがあります」


少し視線を逸らす。


「今がどうかは分かりませんが……多分同じでしょう」


ユイは顔をしかめた。


「まじですか」


肩を落とす。


「定番じゃないですか、これ」


ため息をつく。


オルハは少し考えたあと、鞄に手を入れた。


「三日前のハンバーガーならありますが……食べますか?」


ユイは一瞬考えた。


「三日前ですか……」


少し間を置く。


「ギリいけますね。食べます」


オルハはハンバーガーとチーズバーガーを取り出し、差し出す。


「飲み物は、お茶、水、スポーツドリンク、酒がありますが……どれにしますか?」


ユイはすぐに答えた。


「スポーツドリンクでお願いします」


オルハはペットボトルを取り出し、手渡す。


ユイはそれを受け取り、軽く頭を下げる。


「ありがとうございます。いただきます」


包みを開き、食べ始める。


オルハもチーズバーガーを口にする。


静かな時間が流れる。


やがて食べ終え、オルハが口を開いた。


「これからの予定を話します」


ユイは顔を上げる。


「街に向かい、そこからドラゴンの根城を探します」


落ち着いた声。


「そこにドラゴンの宝があるので、それを元に資金を作るつもりです」


ユイの目が輝いた。


「まじですか。ドラゴンの宝ってすごいですね」


身を乗り出す。


「オルハさん、ドラゴンと知り合いなんですか?」


オルハは軽く頷いた。


「そうですね。色々と稽古をつけてもらいました」


少しだけ目を細める。


「こちらに来る話をしたら、知識や宝……他にも色々もらいました」


静かに言う。


「オルハヴェインさんには、感謝しかないですね」


ユイは少し考え込む。


「なるほど、その方の名を貰ったのですね」


「えっと……ドラゴンって日本にいたんですか?」


オルハは首を横に振る。


「いえ。地球に少しだけ滞在して、そのあと異界に移動しました」


「今は異界にいます」


ユイは目を輝かせた。


「オルハさん、異界に行けるんですね」


少し前のめりになる。


「私も行ってみたかったです」


オルハは苦笑する。


「知人に連れて行ってもらっただけです」


ユイは小さく頷いた。


「そうですか」


軽く手を叩く。


「食事も済みましたし、街に向かいましょう」


オルハは問いかける。


「どうします? 空間移動にしますか。それとも歩きますか?」


ユイは即答する。


「早い方で」


オルハは小さく頷く。


「では、行きます」


手を差し出す。


「離れないでください。一緒に移動します」


ユイはその手を取る。


「はい」


次の瞬間――景色が歪む。


森の中、街道に近い、人目につかない場所へと移動した。


風の音が変わる。


遠くに道が見える。


オルハは周囲を確認し、前を指した。


「街道に出て、街へ向かいましょう」


ユイは頷く。


二人は並び、歩き出した。


新しい世界の中へと。






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