表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/37

二人きりの晩餐

 しかし百着あるドレスの中で私に合うものは少なかった。

 ウエストがきつくて入らなかったり、入ったと思えば胸がブカブカだったり、丈が長すぎたりした。スレンダー美女、グラマー美女、長身美女たちには合うのだろう。それにどれも妙に妖艶なデザインのものが多い。


 なんとかマシなものを見つけ、ブルーナにドレスアップしてもらった。時間が押している。呼びに来たラウリに急かされて、エリオス王子の待つ食事室へ向かった。


 王子専用の食事室はきらびやかだった。壁には宗教画が描かれたステンドグラス、天井にはシャンデリア。細長いテーブルに着席している王子は、待ちくたびれたのか食前酒を飲んでいる。


「遅くなって申し訳ございません」


 シャンパングラスを置いてこちらを見た王子は、 


「大丈夫。大して待っていない」


 何だか訝しそうな表情で着席を促した。ラウリが椅子を引いてくれた。


 ラウリが去るとメイド二人がやって来て、目を伏せて黙々と配膳を始めた。

 やはり使用人は私を見ないように言われているらしく、グラスに飲み物を注いでくれるときも不自然な目配りだった。


 決して私を見ない給仕係を観察して思った。シンプルな髪形に薄化粧、なのにこんなに綺麗だなんて。このお城では使用人まで全員美形なのか。

 彼女たちが退室すると、王子と二人きりになった。気まずい。


「では改めて。ようこそエクリシア帝国へ。歓迎します、聖母様」


 シャンパングラスを掲げて王子が言った。向かい合っている距離は遠い。


「おもてなし、ありがとうございます。私のことは名前で、アイリーナとお呼びください」


 私に『聖母』の呼称を授けたのはダグラスだ。アルディア国民全てを同等に慈しみ、特別な対象を持たない存在として祀り上げるために。

 しかし実物の私は俗物で、子どもを産んだ経験はなく母性的でもなく、国民全てを我が子のように慈しむ心は持ち合わせていない。

 トンチンカンでしっくりしない呼称だと常々思っている。


「ではアイリーナ。私のこともエリオスと呼んでほしい。悠長なことはすっ飛ばして、距離を縮めよう。今からもう恋人のように接してくれて構わない」


 それはいくら何でも急すぎる。じゃあハイ、あ~んしてエリオス♡なんて出来たら面白いけど、そんな度胸も愛嬌もない。


「心から人を愛することが呪いを解く条件なんですよね。その呪いについて、詳しくお聞かせ願えますか。エリオス王子のご症状も、差し支えなければ。お見受けした限り、ご病気のようには見えませんが……」


「そうだな、まずはそこから話そう。食べながら聞いてくれ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ