猫型使い魔
案内された部屋で待っていた使い魔は、獣人型だった。二本足で立つ、私と同じ大きさくらいの猫。特注と思わしきフリフリのフリルエプロンを着けている。
アルディアの黒魔法使いミコラーシュが使役させている楽園の使い魔、ヨゼフィンとアンフィーサは人型だが言葉を話せない。
驚くべきことに、エクリシアの猫型使い魔は饒舌だった。アルディア語も話せる。
「世話係のブルーナと申します。何なりとお申し付けください」
「お世話になります」
荷物を一緒に確認し、晩餐に呼ばれるまでに湯あみをして、身支度を整えるよう言い置いて、ラウリが出て行った。
ブルーナに手伝ってもらい湯あみを済ませ、髪を乾かし、湯上がりローブをまとって案内されたのは衣装部屋だった。
「デザインもサイズも豊富ですので、アイリーナ様にピッタリなものを選びましょう」
色とりどりのドレスがぎゅうぎゅうに保管されている。百着はありそうだ。まるで貸衣装屋。
「すごい! どうしてこんなに沢山ドレスがあるの? 王族のどなたかのため?」
興奮気味に尋ねた。お姫さまドレスはいつだって女性の憧れだ。
伯爵の養女だったときやダグラスの妻だったときにはこういうドレスも着ていたが、楽園に隔離されてからは楽チンなワンピースばかり着ている。配信用にそれなりに可愛い服は着ているが、お姫さまドレスを着る機会は久しぶりだ。
「はい、ええと……」
ブルーナが少し言い淀んだ。
「エリオス王子殿下の恋人候補の方のために取り揃えたドレスです。三十名いらっしゃったので、少し多くなってしまいました」
こ、恋人候補が三十名!?
「いらっしゃったってことは、もういないの?」
「はい。国内で選りすぐりの美女を集めていたのですが、誰一人エリオス王子殿下の心を射止めることができませんでしたので、解雇しました。時間もお金も無駄だったと、エリオス王子殿下は言っておられました。ですので、アイリーナ様には期待しております。わたくしは猫型使い魔ですので、人間の魅了に関してはピンと来ないのですが」
ブルーナの言葉にうろたえた。
エクリシア帝国の美女三十名が束になっても敵わなかったあの王子を、私の魅了ならメロメロにすることができると?
ここへ来るまでは当然できるものと思っていた。私を貸し出したダグラスも、のこのこやって来た私も揺るぎない自信があったのだ。なのに早くもグラグラに揺らいでいる。
「ど、どうかしらね……この国の生え抜きの美女ってことはさぞ美しいんでしょうね」
「アイリーナ様の足元にも及びませんよ。ささ、ドレスをお選びください。試着して決めましょう」




