護送
使い魔のヨゼフィンとアンフィーサに送り届けられて、エクリシア帝国の迎えに馬車ごと引き渡された。
ヨゼフィンとアンフィーサは人型で人間の言葉を理解するが、話すことはできない。帝国側の使者はひどくよそよそしく私に接した。
帝国の王子へ引き渡す前に私に魅了され、略奪したくなる者が出ても困るとダグラスが忠告したからだろう。
自分の前例があるからといって、ダグラスは心配しすぎる。
私を一目見たからといって、いきなりそこまでの状態に陥る人間はいない。初見ではなぜか気になる程度、それから二度三度と会うごとに魅了が効いてきて、だんだんエスカレートするというのが大体のパターンだ。
一撃必殺でメロメロにするのではなく、ジワジワと効いて気づけば取り返しのつかない毒のように、私の魅了は深く浸透し作用する。
なので引き返せる内に気を付けて遮断してくれれば大事には至らないのだが、心配性の元夫はあらゆる可能性を考慮して、私を最終兵器のごとく慎重に送り出した。
トランク一つ分の荷物と共に、人目につかないようにひっそりと。
私の住む楽園の場所は元々公表されていない。私と一度も面識のない、魅了に影響されていない者に仲介させ、用途を秘密にして選ばれた土地だ。周囲には何もなく、目的もなく辿り着ける場所ではない。
エクリシア帝国へ着くまでに寄った休憩所でも、エクリシア側の使者は私の顔を見ないようにと常に目を伏せていた。別に少し見るくらいは大丈夫なのに。
フード付きの灰色のローブをすっぽりと着ている私は、相手が目を逸らし続けてくれるおかげで気楽ではあった。会話も最小限、事務的だ。




