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決定的

 広いお城の中で、エリオスと二人きりで過ごす日々。完璧に整えられた環境下で、息を呑むほど美しい王子と二人きりの空間は、少し息苦しい。


 ここへ来るまでの私は、楽園で一人きりなことをいいことに、配信外の時間はだらけきっていたのだ。


「あとニヶ月もすれば満開になる薔薇を、君に見せたかったな」


 お城の庭にある植物園を一緒に歩きながら、エリオスが言った。


「さぞ綺麗でしょうね。私の住む楽園にも薔薇は咲くけど、こんなに大規模じゃないの。あっ、そうだわ。今日の配信はこの植物園でしても良いかしら? ここの植物を紹介したいわ」


「いいよ。君は、いつでも配信のことを考えているな。俺といても、常に頭の中は毎日の配信のこと、鏡の向こうにいる君の信者と、アルディア国王のことばかりだ。一番近くにいる、俺のことを見ていない」


 薄く微笑したエリオスが、辛そうに言った。

 闇夜のような漆黒の瞳に、バツが悪そうな私の顔が映し出されている。

 毎日自然と、配信ネタを探しているのは確かだった。


「ごめんなさい、そんな風に思わせて。つい配信のことを考えてしまうのは、その通りね。配信は私のノルマで仕事だから。最低限それをこなして、楽園での生活ができているの」


 しょんぼりとしているエリオスの手を取って、しっかりと闇夜を見つめた。


「でも今一番考えているのは、あなたのことよ。あと七日しか一緒にいられないのに、左手の痣は消えていない」


 あれから全く痣が広がっていないことは確認できた。炭のように真っ黒だった色も少し薄まり、茶褐色程度になった。しかし消えた部分はない。


「いっそこのままでいい。綺麗さっぱりこの痣が消えた暁には、君は俺のことを考えなくなる。これがある限り、君がそばにいて気にかけてくれるというなら、その方がいい」


「そんな……駄目よ、ここにいられる期限は決まっているもの。私がいる間に、完治してほしいの。心配でたまらないわ。どうか安心させて」


 エリオスは何か言おうとして、キュッと苦しそうな表情でそれを飲み込んだ。代わりにギュッと私を抱きしめたあと、唇を重ねた。

 荒々しいキスだった。口内になだれこんでくる舌が、やるせなさを伝えてくる。


 順調だ。この調子で行けば、いずれエリオスの痣は消えるだろう。しかしもうあまり時間がない。決定打が必要なのだ。


「ねえ、エリオス。私をあなたのものにして。愛するって、欲しがると同義なのよ。もっと私を欲しがってちょうだい。誰に遠慮しているの?」


 挑発的に煽るように見据えると、エリオスは愕然とした瞳で見つめ返した。

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