嫉妬
支度が済み、エリオス立ち会いのもと配信を行った。鏡に映るのは私一人だ。
「〜というわけで、弾けるキュートなパン、『パントミントを食べてみた』の報告は以上でーす♡ みんなもお出かけ先で見かけたら、ぜひ食べてみてね!」
スイッチをオフにして素に戻り、エリオスに向き直った。
「早くから待ってくれていたのに、寝坊してごめんなさい」
「いや。ゆっくり休んでもらえて安心した。朝昼兼用のブランチにしよう。ルトヘルを呼びに寄越す」
エリオスが出て行くとブルーナが戻り、しばらくしてルトヘルが来た。
ラウリとルトヘルは一日交代で私につくので、今日はルトヘルの番だ。と思っていたら、ルトヘルが言った。
「私がアイリーナ様にお会いするのは、これで最後です。昨日のデクスター閣下の一件で、アイリーナ様の魅了の恐ろしさを改めて思い知りました。私の魅了防御魔法など通用しない。今後この城でアイリーナ様と接するのは、エリオス殿下とブルーナのみ、となります」
「そうなのね。ルトヘルとラウリは大丈夫そうだと思ったけど」
「ラウリは大丈夫かもしれません。私より魔法力が上ですし。私はすでに危険です」
伏せていた目を上げて、ルトヘルは私をきっと睨みつけた。
「あなたが無事に戻って来られるまで、気が狂いそうでした。帰って来られたら来られたで、エリオス殿下と仲睦まじい様子に腹立たしい。殿下の命がかかっているというのに、自己中心的で下等な感情に胸を占拠されている。最低です」
その決別宣言以来、本当にルトヘルとラウリは顔を見せなくなった。私の相手をするのは、エリオスとブルーナのみ。
楽園を出て異国へ来て、周りに人がいる毎日に密かに高揚していた。夢を見てはいけないと神様に忠告された気分だ。
業を背負った聖母はどのような状況に置かれても、冷静に自分の能力と向き合わなくてはならない。危険な魔女に逆戻りしたくない。
速やかに安全に任務を果たして、再び楽園に戻るために、エリオスの愛を確実に得たい。




