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パントミント

 ラウリに連れられて乗り込んだ馬車の中には、大きなモフモフがいた。


「ブルーナ!?」


「アイリーナ様! ご無事で良かったです!」


「聖母様を探すのにブルーナの協力が必要だったので」


 ラウリが言った。


「申し訳ありませんでした。私の過失です。あのパントミント屋を見張っていて、あのキャリーケース男も目に付いていたのに、見逃してしまいました。まさかあの中に聖母様が入っているとは思わず」


「普通は思わないわ。私もまさかキャリーケースで運ばれる日が来るとは思わなかったもの。油断していた私も悪いの」


 いつもの薄ら笑いが消えているラウリに言った。


「それより、パントミントってなに?」


 デクスター閣下も言っていた。行列のできるパントミント屋だと。


「ああ、これです。エリオス殿下が並んで買ったパントミントです」


 ラウリがそう言って、馬車の椅子に置かれていた食事トレーを手に取った。紙皿の上に、ミントグリーン色のコロコロした一口サイズのパンがいくつか乗っている。


「食べると、口の中でシュワシュワ弾けるそうです。清涼感のある夏らしいカラーと食感が話題を呼んで、いま若者に人気のようです」


「へえ〜!」


 緑色のいびつな形をしたパンはあまり美味しそうには見えないが、説明を聞いて心惹かれた。それにあのエリオスが行列に並んで買ってくれたという付加価値が尊い。


「一つ、いただいても?」


「是非召し上がってください。殿下が聖母様のために用意したものですから」


 一つ取って、パクリと食べた。噛むたびにシュワシュワと弾けて、甘酸っぱい味が口内に広がった。食感は面白いが、味はハッキリ言って微妙だ。


「美味しい。エリオスと一緒に食べたいわ。今日エリオスは帰って来るわよね?」


 ラウリがエルメリアまで乗ってきた馬を置いて、馬車に同乗しているということは、エリオスは別便で帰って来るのだろう。


「ええ。多分、今夜中には」


 デクスター閣下の処遇のことが気にかかったのだろう。ラウリはまた険しい顔つきに戻った。


「……デクスター閣下が、聖母様と出会ってからこの短時間で、あれほどの異常な行動に及ぶとは予測していませんでした。聖母様の魅了は私たちの想定を超えています。もっと警戒せねばいけませんね」


 ラウリの印象がいつもと違うのは、薄ら笑いをしていないからだけではないと気づいた。伏し目がちで私と目を合わせることを避けているのだ。


「あ、違うの。デクスター閣下は、エクリシア帝国内で一年間、私の配信を聴いていたの。取り締まった悪い商人から、受信鏡を押収したらしいの」


 ラウリが目をみはった。


「そうだったんですね……それなら合点がいきます。押収品の管理にも注意が必要ですね」


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