美男美女
エルメリア城を出て、街道沿いで馬車を下りてエリオスと二人、街へと繰り出した。
二人ともお忍び用の服装をしているが、いくら地味にしていてもエリオスの美貌は際立っている。
これでは目立って仕方がないだろうと心配していたが、エルメリアの都で出会う人々は皆、個性的なファッションに身を包み、派手な髪型をしている。徒党を組んで歩いている若者が多く、地味な二人組は全く注目されなかった。
「エクリシアでは庶民も派手なのね。それに綺麗な人ばかりなのが本当にびっくり。どうしてなの?」
ヴァレンシア城で使用人までもが全員美しいのは、美を採用基準にしているためだと思っていた。しかしこの国では道行く人々が総じて美しい。
「エクリシアは世界一、美男美女が多い国と言われている。美しさは何よりも強みになると信じられ、美しく生まれること、美しくあることに重きを置いてきた国だ。故に、支配階級にある者は圧倒的に美しくなければ存在価値がない」
想像した以上に極端な答えが返ってきて驚いた。
美しくなければ存在価値がないと思うような社会では、美しくない者は結婚相手として選ばれず、美しい遺伝子ばかりが受け継がれていった結果、美男美女ばかりということか。
「だからなのかも」
「え?」
「私の魅了がエリオスやラウリに効かないのは。美しくない者は無価値だっていう価値観が、生まれる前から刷り込まれているのよね。私の容姿が圧倒的に良ければ、その壁を乗り越えて魅了できたかもしれないけど、ちんちくりんだから難しいのかも。そう考えると、デクスター閣下にはどうしてあんなに効いたのか、不思議ね」
決して卑屈になったわけではなく、冷静に分析して言ったのだが、エリオスは慌ててフォローした。
「何を言うんだ。ルトヘルの言葉は気にしないでくれ。俺はアイリーナをちんちくりんだなんて思わないし、むしろとても愛らしいと思っている。確かにエクリシアでの美の基準とは違っているが、その違いがいい。同じように美しいだけの女なら大勢いて、逆に平凡に思える。何より君が、他の女と違うのは……」
「違うのは?」
「何でもない」
「気になるわ。言って。今後の参考になるかもしれないし」
急に不機嫌そうになったエリオスは、「そういうところだ」と言って、それ以上教えてくれなかった。
その代わりにエルメリアの穴場スポットを次々と教えてくれた。




