魅了効果
「エリオス。君の部下は融通が利かないな。客人に城内を案内すると申し出たら、頑なに断られたよ。俺はそんなに信用がないのかな?」
「そう気を悪くしないでくれ、デクスター。ラウリは任務に忠実に従ったまでだ。客人への気遣いに感謝するよ。アイリーナ、待たせて悪かった。さあ行こうか」
エリオスが私の手から日傘を奪い、頭上で広げた。
「待ってくれ、エリオス。アイリーナはいつまで我が国に滞在する予定なんだ? こっちにいる間に一度、ゆっくり話す機会を設けてくれないか」
「君と、アイリーナが話す機会を?」
エリオスが驚いた顔をした。
「何の目的で?」
「話をして、俺のことを知ってもらいたいし、仲良くなりたい。ねえアイリーナ、どうかな? 俺と少しお茶をするくらいいいよね?」
初対面でグイグイくるデクスター閣下に面食らった。エリオスとラウリが目配せをして、頷き合った。
「デクスター、悪い。アイリーナの予定は詰まっていて、明日にはもう帰国する」
「デクスター閣下。せっかくのお誘いをお受けできず心苦しいです。また機会があれば是非その時は。お会いできて、大変嬉しかったです」
エリオスの言葉に続けて丁寧に言い、別れの挨拶をした。
デクスター閣下は潤んだ瞳で私を見つめ続け、惚けたような表情で立ち尽くし、いつまでも私たちを見送っていた。
「ヤバいですね、あれは」
馬車の辺りまで来てラウリが言った。
「魅了だよな?」
エリオス王子が神妙な顔つきで応じた。
「まさか一目であそこまでになるとは。デクスターは魅了されやすい性質なんだろうか。アイリーナ、君の魅了にかかった人間は、いつもああいう感じなのか?」
「個人差はあるけど……初対面でいきなりあそこまでの人っていなかったから、私も戸惑っているの」
「そうか……まあ、デクスターとはこれ以上接触しないように気をつけよう。君の力を目の当たりにできたことは良かった」
それは私も同じだった。デクスター閣下の勢いに面食らったものの、エクリシアへ来て以降疑心暗鬼だった魅了の力を初めてハッキリと実感できたのだ。
アルディア国外では私の魅了が利かないのではないかと心配したが、効く相手もいた。個人差がかなり大きいようだが、肝心のエリオスに対してもこれから徐々に効いてくるかもしれない。




