エルメリア
エクリシア帝国の首都、エルメリアへ到着した。ヴァレンシアの都よりも明るく、華やかで開けた印象のある都市だ。
ヴァレンシアは他国と隣接しているため、戦争にも備えた要塞都市だが、エルメリア城は人々が往来しやすい立地にあった。
「オシャレな街並みね。お店がズラッとあって、眺めてるだけでワクワクするわ」
馬車の中から見える範囲でもそう思うのだから、実際に外を歩けたらどんなに楽しいだろう。
昨夜ダグラスにお伺いを立てたところ、具体的な地名や、それと分かる風景や物を映さなければ、屋外での配信も良いとのことだった。
最も慎重にならなければいけないことは、特定の人間との交流を匂わせてはいけないということらしい。
「あくまでも君は、ファンタジーな存在でいてほしい。皆の愛する聖母様は、生々しい人付き合いなどせず、フワフワとした夢の国に生きていなくちゃいけない。今回の旅行に関しても『どこか遠くで一人バカンスを楽しんでいる』というふんわりした情報に留めてほしい。そこまでなら国民も許容できるんだよ」
それは常にダグラスが私に求めている聖母像だった。人々に熱狂的に愛され、国王までを狂わせた悪女というイメージ一変させ、新たな認識を根付かせるための。夢のように生きる、実害のないファンタジーな存在なのだと。
「城の用事が終わったら一緒に街歩きしよう。居場所が特定できないようになら、配信しても良いんだよな」
エリオス王子が言った。
「ありがとう。でも目立って大騒ぎにならない?」
「人が多い場所ではやめておいた方がいいだろう。目立つだろうな。通信鏡で個人のやり取りをする者はいても、国民向けに一斉配信する者は我が国ではいない。そもそも高価な通信鏡を持ち出そうと思わないしな。アイリーナの魅了に関しても心配だが、初めて会う人間がごく短時間見る程度は大丈夫だな。滞在中、エルメリアに来るのは今日が最初で最後にしよう」
「ご配慮感謝します。でも目立って心配なのはエリオスのことよ」
「行く前に着替えるよ。俺だと分かったところで、騒ぎ立てる馬鹿もいないだろう。昔、気安く絡んできた輩をその場で斬ったからな」
サラッと言ってのけたエリオスに目を丸くした。




