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三日目

 エリオス王子と枕を並べて寝た翌朝は、件のエルメリア城へ行く準備から始まった。

 お忍び用のドレスに着替え、腹ごしらえをしてから馬車に乗り込んだ。


 護衛として、馬車とは別に馬を走らせて付いてくるのはラウリだ。一つに束ねた長い銀髪が、馬の尻尾のように背中で跳ねている。

 美しすぎて目立つ護衛と、王家の紋章が施された馬車のため、一目でエリオス王子が乗っていると分かるようだ。


 城下町ではあらゆる方向から黄色い歓声が飛んできた。


「きゃあ素敵っ、ラウリ様よ」

「エリオス王子殿下ぁ〜! エクリシア帝国、万歳!」

「お気をつけて!」


 顔を出さないよう注意されているので、私はじっと身を潜めていたが、王子も微動だにしない。


「手を振り返したりしないの?」


「するわけないだろう。王族が従える民衆に媚を売るようになってはおしまいだ」


「そうなの?」


 文化の違いだろうか。ダグラスはこういうときには馬車を停めて顔を見せ、小さな子供に飴玉を配ったり、仕込んでいた鳩を飛ばすマジックを披露したりして、拍手喝采を浴びていた。


 気づくと、ダグラスと比べてしまう。

 夜の作法もそうだ。エリオス王子をド下手くそだと思ったが、比べる対象はダグラスしかいない。

 厄災級の魅了の弊害として、魅了された者に襲われたり、卑劣なやり口で手ごめにされそうになったことは何度もあったが、毎度寸でのところで助けが現れたり、相手が自滅して事なきを得ていた。それもまた魅了の力だった。


 ダグラスに求婚されて承諾したのは、それまでの全てのことに疲弊しきっていたからだ。

 どちみちこの魅了から逃れられないのならば、国で一番偉い王様に愛されるのが一番安全だと思った。


 出会った頃のダグラスは太陽のように明るく陽気で、眩しく輝いていて、強かったから。

 そのダグラスを変えてしまったのは私だ。


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