楽園
私に与えられたのは、広大な土地付きの小さな館だ。
私好みの可愛らしい館の手入れは行き届き、庭には美しい風景が広がっている。生活に必要なものは配達で届けられ、町へ出なくても暮らしていける。生身の人間に会わなくて良いように配慮されている。
館の管理をし、掃除や調理や荷物の受け取りをしているのは、使い魔の二人だ。
王室お抱えの黒魔法使い、ミコラーシュが使役させている使い魔だ。私の魅了が効果を発揮するのは人間に対してだけなので、使い魔のヨゼフィンとアンフィーサが魅了されておかしくなることはない。使役させているミコラーシュがここに来ることはない。
使い魔に至れり尽くせりお世話されて、楽園のような場所で優雅に暮らす。幸せだ。籠の中の鳥には違いないが、塔の一室や地下牢に閉じ込められたときと比べると、まさに天国と地獄だ。
私を監禁や幽閉したのは、私をどうしても一人占めしたいと欲張った者や、このままでは身が滅ぶと危ぶんだ者たちだった。しかし結局は手放さざるを得なかった。
私を欲する者が黙ってはいなかったからだ。誰もが私に魅了され、夢中で私を助け、我がものにしたいと新たな争いが始まる。
やはり私の存在は厄災級であると認定され、王家に処刑されそうになったときには大暴動が起きた。アイリーナを失うくらいなら自分も死ぬと抗議の自殺を図った貴族がいて、その後追い自殺も続いた。
その事態に収拾をつけるため、私を無理に処刑するのではなく、楽園のような場所で幸せに隔離するという方向へ国は転換した。
専門家の研究によると、魅了のピークは三十歳頃で、四十半ばを過ぎると急速に下降するそうだ。年を取れば単純に若さが失われる。桁外れの魅了を持つ私も、今よりは大分生きやすくなるだろうと予測される。
それまではこの楽園のような場所で誰とも会わず、元気で幸せに暮らしている様子を鏡越しに配信し、国民に愛想を振りまくことが私の仕事だ。
そう諦観していたが、とんでもない仕事が舞い込んできた。




