覚悟
夜に案内された寝所の雰囲気に、私はたじろいだ。
何度寝返りを打っても大丈夫そうな広いベッドに、二つ並んだ羽根枕。甘く怪しげな香りが立ちこめている。
念入りに湯あみし、オイルで肌を整え、用意されたナイトドレスに着替えた私は、ソワソワしてその部屋でエリオス王子を待った。
共に寝る、と宣言されている。
それは単に添い寝のことなのか、抱き枕のようにして眠ることなのか、性的な行為を伴うことなのか。あえてこちらから確認しなかった。
ダグラスは、キスやハグやそれ以上の行為も許容している。本意ではないが人助けと思って我慢すると、明言したのだ。その言葉はエリオス王子も聞いていた。
人助けと言えば聞こえは良いが、要は後に引けないほどの莫大な契約金をもらっているのだろう。お金でないにしろ、アルディアの国益になる何かしらの交渉事が交わされているはずだ。
何もしなくても、私の魅了で王子を落とせると踏んでいたのは誤算だった。自国で無双していた能力に、私自身思い上がっていたのだろう。まさか他国では思うように魅了が発揮できないとは考えもしなかった。
こうなったからには私も腹を括った。
話が違う、そんなことは聞いていないと泣き喚いて任務を放り出して帰国することもできたかもしれないが、そんなみっともない真似はできない。
可能性があるなら、やれるだけやってみよう。何一つやってもみずに、早々に無理だと諦めて負けを認めるのは情けない。
魔女裁判にかけられ、死刑の寸前まで経験した身だ。修羅場は人より多く乗り越えてきた。生娘でもなく離婚歴もある。身体の一つや二つ差し出しても、今さら失うものはない。
そう自分に言い聞かせ、深呼吸した。
それに相手は、下卑た蛮人でも脂ぎった醜い男でもない。まるで絵画から抜け出てきたような見目麗しき王子様だ。甘さはなく、他を寄せ付けない清廉潔白な雰囲気がある。
だからか、エリオス王子とそういう行為はまるで結びつかない。想像しがたい。
しかしブルーナの話によると、私が来る前には三十人の女性を囲っていたというのだから驚きだ。魔女の呪いを解いて、生きるために王子も必死なのだ。
エリオス王子を救いたい。




