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配信ネタ

「あの、夜寝る前に部屋で通信しても良いですか? ダグラス国王陛下と。毎日連絡するように言われています。エリオス王子殿下にも許可をいただいていると」


「ああ、許可は出している。ただし私も同席するのが条件だ。国家機密保持の通念上、理解してほしい。空気のように片隅にいるので、気にせず話してくれ」


 おおっふ、と変な声が出そうになった。この王子に見られながら、ダグラスと話さなくてはいけないのか。

 それにダグラスとの個人通信以外にも、国民向けの配信もしなくては。アルディアを出てから移動中は配信をお休みしていたが、旅先に着いたら配信をすると予告している。

 ちなみに旅の行き先と目的は伏せている。少し遠くへバカンスに行ってくるとだけ告げている。


「あ、ではせっかく素敵なドレスをお借りしているので、この格好のまま配信させてもらいたいです。寝る前ではなくて、この後すぐでも宜しいですか?」


「ああ。その方が俺も落ち着く。食事が終わったらすぐに同行しよう」


 どうやら王子の素の一人称は「俺」で、公的な立場として発言を意識するときは「私」のようだ。

 食事が半分まで終わると給仕係のメイドがまたやって来て、飲み物を注ぎ足したり空いたお皿を下げて、また引っ込んだ。最後はデザートと食後の紅茶を運んできた。


 ゼリー状にした桃が四角くカットされ、カラフルな飴細工が飾りつけられたデザートプレートは見た目美しく、味も絶品で、ああこれを配信出来たら良かったのに、と脳裏によぎった。

 毎日毎日、変わり映えのしない楽園からノルマ的に配信をしていると、ネタに飢えてしまうのだ。少し変わったことがあると、これは配信ネタに使えるな、映えそうだな、とか考えてしまう。

 ふと思った。珍しくて美味しいスイーツよりももっと映えるものが、皆を驚かせるものがここに存在する。エリオス王子だ。


 この絵画から抜け出てきたような美麗王子と、私が一つ屋根の下にいると知ったら、通信鏡の向こう側は大騒ぎになるだろう。

 もちろんそんなことは望んでいないので、エリオス王子は絶対に映せない。



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